040 ソーンの手記
39話の続きです。
ソーン視点です。他者の視点でないとユキ様のお姿をご紹介できないのが残念です。
私の名前はソーン。
バーン帝国で官吏をしている。この国はもうダメだ。
皇帝や貴族は毎晩の様に晩餐会を開き誰も食べやしない豪華な料理を捨てるために作り、最高級のワインを次々に開けていく。王妃は他国のドレスや装飾品に夢中で、皇帝は妾やお気に入りメイドにしか興味は無い。大臣達は公共事業の資金をピンハネするので工事や治水が遅々として進まない。
国庫が傾くと国民に過度な税を取り立て、限界が来そうになると隣国のドワーフ王国に目を付けた。
元々ドワーフ王国とは可もなく不可もなしといった関係であった。が、帝国を通さない武器の売買を禁じ違反すれば戦争を仕掛けドワーフ王国の財産を奪おうとする法律を勝手に作り戦争を仕掛けた。
止められない我らが言うのもなんだが最早この国の未来は破滅である。戦争に勝ったところでこんな国と取引しようとする国はあるまい。
先日派兵した4軍は1週間も経たずに戻ってきた。なんでも1人の魔女にやられたと言う。信じられないがヌール山脈が無くなったらしい。まぁあの辺は特に村も無く高い山だけだったので直接被害は無いが…。
とはいえ兵士はほとんど無傷なので1月足らずで再編された。次は帝国のほぼ全軍がドワーフ王国に向かう。
その3日後全軍壊滅の報が皇帝に伝わると皇帝は激怒して世界管理者のハイエルフへ告訴状を送りつけた。相手は悪名高い天魔の魔女だと言う。
1人で帝国軍を壊滅させた相手に賠償金を求めるなど…。しかし最早我々官吏の言葉は届かない。
その日帝国は滅んだ。皇帝、大臣、貴族は皆城に拘束されて、兵士は今までにない愚直なまでの働きをしている。元々我が軍の兵士は粗暴なものが多く襲われた村は敵国自国で数知れず。兵士を見たら娘を隠せとまで言われていたくらいだ。なのにこの変わりようは信じられない。
天魔の魔女がこの国を支配してから法律は変えられ悪法はすぐに撤廃、新法は国民に喜ばれていた。それでも悪法の数が多く帝国制度から議会制度への変更もあり法改正はなかなか進まない。
有能な者は国政に取り上げられていた。私もその1人となっている。先日初めて天魔の魔女と面会したが、声を失った。恐ろしく美しかったのだ!腰まである黒髪は真っすぐでツヤがあり、整った小さな顔も服も上からでもわかる抜群のスタイルも帝国の晩餐会では見たことのない!身長も女性にしては高く165cmくらいだろう。が姿勢が良いので大きく見える。まるでモデル…いや、若き女帝‼︎毅然としつつも仄かに漂う色香がとても堪らない!
この方に仕えられるのは夢のようである!他の同僚も同じらしく仕事を頑張ってこなしてユキ様にお声をかけられるのを喜びとしていた。
ユキ様の支配下では恐ろしく平和になった。今まで国境沿いの村はいつも他国との小競り合いがあり村の情勢は良くなかったものの、ユキ様が行なった大使の派遣からこの1月、村に他国が攻めてくることは無くなった。国境沿いの村や辺境の村では村の入り口に『天魔の魔女直轄地』と旗を立てているらしい。効果はバツグンだ!ユキ様自身も統治者として巡回し各地の盗賊や秘密結社等を撲滅されたらしい。
変わったと言えば国名もアクアも変わり、国政も議会制に移行。私は少しでもユキ様の役に立つため議員に立候補した。
無事当選を果たし初の国会議である。今日は税を増税前に戻す議題もあるが、まずはユキ様のお言葉だ。
…、…、ユキ様は不老不死だと言う。私は一生ユキ様に仕える気だったのにあんまりである。皆もユキ様のお言葉に呆然としている…。が、ユキ様の最期のお言葉は…。
「元々私は旧バーン帝国の国民の多くを不幸にしている。私を見るのも辛い民もいるだろう。この国はすでに生まれ変わっている。私の役目はココまでだ。後は皆に任す。アクア共和国の発展を期待する!」
ユキ様はそう言って去っていった。アクアの国民でユキ様を疎う者などいようはずも無いならないのに…。
とはいえ永遠の別れではない!ユキ様の残した指標を胸にまたユキ様に出会える日を願い我々は動き出す!
モブ回でした。
手記なので読みづらいかもしれません。




