025 トリトン族
暑いので海の話を…。
幻獣…有名なところだと、フェニックス、ユニコーン、カーバンクル等滅多にエンカウントしない獣、魔獣である。
それ故にその素材は高値で売買される。生け捕りにできればひと財産を稼げる。滅多にエンカウントしないのはコレも理由のひとつだろう。
で、今回わざわざこんな僻地まで来てるのだが…
「最近ザーラント国の海域で船の難破事故が相次いでいるんだ。もしかしたら未確認のモンスターか幻獣あたりが縄張りを広げた可能性があるので調査してもらえないだろうか?」
いつものムスターファの依頼である。モンスターはともかく、幻獣の可能性はちょっと心が動いた。
ということでザーラント国の離島を起点に海中調査である。
「今回は機動力重視なので『飛行』と『風結界』で行く。通話はミクと私の念話になる」
「わかりました。ミクちゃんよろしくね!」
「オマカセナノ!」
風結界は身体も周りに風を纏うので海中に入っても空気の層ができるのである。
「さて、行くぞ!」
「「ハイ!」」
島から300m離れたところで海中へ。
この辺りだと大陸棚を抜け一気に深くなる。視界が暗くなるので『光球』を放つ。
魚の群れ、タコに海ガメ…、うーむ、お腹が空いてきた。今日は魚料理だな!
あっ、サメだ。向かってくるので『重力波』放つと海底に沈んでいく…。まぁサメはあんまし美味しく無いし、いいか。
っと、私達の右斜め下を黒い陰影が通過する。
結構デカイ!
(マール見たか?追うぞ!)
(リョウカイデス!)
私達は加速して影を追う。
しかし、影の主は私達には興味がないようで一心不乱に泳いでいる。いや、何か獲物を追っているのか?
(マール、様子がおかしい。私は先行するので必要ならアイツを攻撃すること。水中でも教えたモノで攻撃できるはず!)
(ワカリマシタ!ヤッテミマス)
さらに加速して確認すると巨大な影の正体はクラーケン。
うみゅ、ゲソ焼きか塩辛か…。清酒を飲みたくなってきた。
っと!クラーケンの前を猛烈な勢いで泳ぐ海竜…いやアレは、リバイアサンか?それにしては小さいが…。
(状況がわからないが、とりあえずっ)
クラーケンもリバイアサンも会話はできないのでとりあえず一方を倒してみる。ダメなら両方倒しちゃえばいいか。
(マール、目の前の影、クラーケンを攻撃!できるね?)
(リョウカイシマシタ!)
ボスッン!!
マールの攻撃は爆発系。クラーケンの体内を爆破したようだ。うむ、優秀優秀!水の中では火系はほとんど威力が無い。が、爆発系なら効果がある。今回のように体内から爆発したら避けようが無い!
(うむ、マールよくやった!)
(アリガトウゴザイマス!)
クラーケンが海底に沈んで行くのをリバイアサンも気付いたようで停止している。
ん?リバイアサンの背中に人が乗っている?
リバイアサンは警戒しながら私達へ近づいてくる。背中に乗った者が、何か喋っているようだが風結界の所為で聞こえない。
とりあえず私は海上を指差してみるとこちらの意図を汲んでくれたようでリバイアサンは上に向かって行く。私達も追い抜くかたちで海上へ向かう。
「さて、こちらの言葉はわかるかな?」
海上へ出て風結界を解き飛空のみで海上1mに浮く。
「助けていただきありがとうございます」
「人語は通じるようだね。お礼はいいので状況を教えてもらいたいがいいかね?私はユキ。こちらはマールとミク」
「私はココ。この子はギルです」
「ふむ、海中で呼吸をしていたようだが…?」
「あっ、私は『トリトン族』で、この子はリバイアサンの幼生体です」
「「トリトン族⁈」」
トリトン族…、深海に住む海の一族である。もともと人魚と人の末裔であるが、魚人、人魚とは別に深海に住処を作ったとされている。
が…。
「生き残っていたのか!」
「ハイ、数は少ないですがまだ仲間はいます」
トリトン族は人からも魚人族からも差別されて絶滅したと思われていた。
また、生まれてくるトリトン族は例外なく見目麗しいので『そういう』需要もあったのも理由の一つであろう。
「で?クラーケンはあの1杯だけなのか?」
「いいえ!あと2匹…2杯はいます!」
「追われているという事かな?」
「おそらくギルを狙っているのかと…」
そういうことか。難破が最近多いのもクラーケンが原因であろう。ならば…。
「よし、クラーケンは倒してやる!その代わり囮として協力して欲しい。もちろん安全は保障しよう!」
「…、そうですね。このままでは村に帰るのも難しいです。ならば多少危険でも…!」
「大丈夫ですよ!先生ならクラーケン如き余裕です!大船に乗ったつもりでいいですよ!」
その大船がクラーケンに沈められたんだけどね…。おっと、マールがこちらをジト目で見ている!
「ではギル、一声鳴いてもらっていいかな?」
ココは頷くとギルに指示を出す。
「KEEEEEー」
甲高い声が辺りに響く。
さて、そろそろか?
ズズズズっ、海が持ち上がる!
私は飛空でココとギルを空中へ逃がし海面に向けて『氷柱』を放つ。うっしゃ、ドンピシャ!
クラーケンの目と目の間に氷柱が刺さってクラーケンは2杯とも海に浮かぶ。流石にデカイのでウチに入らないので、私は転移で影の村に送る。
「スゴイ!」
ココは感嘆の眼差しで見ている。
いや、イカが食いたくなっただけなんだが…。
まあいい。
「うみゅ、トリトン族のコトを考えるとあまり詳細は聞かない方がいいだろう。何か困ったことが起きたらコレで連絡するといい」
と私はポケットから水色の水晶を取り出す。
トリトン族と誼を結んでおくのは、今後の為である。
「私は天魔の魔女と呼ばれることもある。多少は力になれるだろう」
「貴女が、あの…!」
「では、失礼する」
「またお会いしましょう!」
「マッタネー」
私達は転移で影の村へ向かう。
村はいきなり現れたクラーケンに驚いていたが、私が現れると納得していた。
失礼なっ!
イカの塩辛をじゃがバターに乗せるのは最高です!




