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第2層「牛と豚の恐怖」

少し残酷描写です

アベさんという仲間を得た俺は今、俺の部屋の左隣に亜空間レイアウトソフトでコピペした俺の部屋と同じ空間を作って、そこにアベさん用の部屋を作った。


玄関も、横に広げて扉ををもう一つ設置して共有スペースを作り、アベさんと俺の部屋を行き来できるようにしたりもした。


 俺の部屋とアベさんの部屋の行き来以外は遭難の可能性があるので、出歩かないようにさせたり、色々な家電の使い方も説明した。

 アベさんは相当賢いようでそれらをまるで、水を吸収する真綿のように覚えてくれた。


 それに個人的に見てみたかった。

 アベさんがシャワーで銀毛を潤すというシュールさを。


 それが済むと、できたばかりの迷宮の探検のためにでかけた。

 ルールは数に限りがあったため一応多めに魔力を流しておき、灯りがなくても見える夜目特化と万が一の場合の不死化、その不死でも何か危険なことがあり俺やアベさんで対処できないことが発生した場合は、出入り口に戻るようにした。

 

 落とし穴的な何かがあって抜け出せなくなった場合に備えないといけないし。


 しかし、結果的にはすぐに行き止まりに当たることになる。

 最奥には、なにやらねぐらのような柔らかい草が敷いてあっただけだったからだ。


「あれは、アベさんの寝床?」


「ガウ」


 俺の問いにそうだとアベさんが頷く。

 なるほどと納得した俺は、アベさんの了解を得た上で一度その藁っぽい柔らかい草をアベさんの部屋のベッドまで運び、行き止まりの壁の岩を砂に変えてそこに再生のオーブサイズの穴を開けてから珠を配置した。また、侵入者に取られないように不視化もさせておく。

 

 準備万端となった俺は早速用意しておいた魔物をイメージができるものと詳細な大きさを書いた紙を取り出す。

 

 まずは素うどん以外の食料を得るために考えたのは、牛と豚の魔物だ。

 

 うちにある本棚の中から、牛や豚の写真を切抜きして特徴やらを書いたノートの切れ端を入り口からは出られないように追記して、全長100mほどしかない通路にのみ出現させるようにする。


 どれくらいで出てくるのか分からないし、食料優先としてひとまず迷宮創造(ダンジョンメイカー)適用の範囲に関しては後回しにするつもりだ。


「魔力はとりあえず魔物が出てくるまで、放置しておくとして…………。アラーム設定30分くらいしておいて部屋で地図作りでもやっておこうかな。アベさんはどうする?」


「ガウ」


 言ってることは分からないが、とにかくすごい自信で右手で空を切り裂くようなジェスチャーをしたので、どうやら狩りをするようだった。


「わかった。日が沈む前には迎えにくるよ」


「ガウ」


 そういうと、アベさんは早速外へと狩りにでかけた。

 俺も入り口まで戻ると、その横壁に鍵を使って自分の部屋に戻った。

 ちなみにこうしておけば次の出入り口がここになるし使って偶然気づいたが、鍵を使ったところを選択できるように頭にどこから出るのか浮かぶようになっている。

 

 これはまぁ、ドアノブ握りながら考えようとしたときに頭にこの世界に降り立った最初の場所、それから今設置しているはずの場所の風景が出てきたのだ。

 

 試してみたら、どっちにも行けた為に一種のどこでもゲートみたいな使い方ができると知り、さらにレティーナ様に感謝したのはいうまでもない。


 部屋へと戻った俺は、早速ノートに迷宮内の想定地図を書いていく。

 ノートいっぱいを正方形で囲んだ後に定規で順番に縦線を入れて際の目になるようにしたらそのマス目に適当なL型や、Tの字にした記号を埋めていく。

 

 今のところは流れを追う形になるので、これくらいの適当さでいい。


 30分ほどでできたそれを眺めていると、ピピピっと丁度アラームが鳴ったこともあるので、確認のために一旦外に出ることにした。


「さてさて、魔物は出てきてるかなっと」


 一応、俺にでも一撃入れれば勝てるレベルの牛と豚の魔物が生み出されているかわくわくしながら最奥へと足を進めた。

 

 しかし、そこは凄惨な光景となっていた。


 牛の魔物や豚の魔物だったのだろう死骸があって、角で突き破られ内臓を垂れ流した豚の魔物だったり、壁に衝突した跡で再度豚の魔物の突進で殺されて動かなくなったりと現実では目にすることもない異様な光景とその臭いにたまらず胃の中の物を吐き出した。


 そんな中で、自分の失敗に気付く。

 そういえば互いに敵対しないようにという設定をしなかった、と。


 気持ち悪い光景だけどこういう場が当たり前になると覚悟を決めて、未だ生き残っていて争い合っている魔物たちを駆逐していく。

 迷宮主だからなのか、わからないがこちらには一瞥もしてこない魔物たちを包丁で刺していく。トン○リーの気持ちとはこういうものか。

 処理を終えた俺は、未だ慣れない光景にひとまず目を合わせないようにして奥にある再生のオーブへと駆け寄って、魔物同士が争わない設定に変えることにした。


 一旦落ち着いた俺だったが、再生のオーブが光を放ちすぐ目の前に牛の魔物が現れた。

 俺に気付くも、やはりこちらを気にせずそこらへんに転がっている死骸を食べ始めた。ほっとしたと同時に力が抜けた俺は、腰を抜かしてその光景を見つめたまま呟いた。


「魔物同士の共食いもするのか。それもしない設定にしとかないとな~。しかし、この光景はエグいな。まぁ、こればっかりは慣れていかないといけないよな」


 コレが人間だった場合にどうなるかも含めて考えると、いくら人殺しを経験した俺であってもさすがに萎えてくる感じだった。


 いや、人殺しとこの光景は関係ないか。


 まずは慣れなければならない光景だが、しばらくは食せまいと思っていると、入り口から誰かがやってきた。


 牛の魔物もそれに気付いたのか、入り口に向けて足を進める。

 しかしそれもつかの間で牛の魔物の悲鳴とともにその体が真っ二つに割れながらこちらに飛んできた。


 焦る俺だが、その姿に安心する。

 狩りを終えたらしいアベさんだったからだ。


「アベさんおかえり」


 ガウ!っと右手をシュタっとあげたアベさんに説明をして食用になりうるものだけを一緒に運ぶことにした。


 入り口にはアベさんが狩ってきたらしい2mほどの大きさの猪がいたのだが、

 これがこちらの世界の魔物かな?


 まだ慣れたわけじゃないが、先ほどの凄惨さな現場でマシなものを早速自分の部屋へ戻っていき、風呂場のカーテン棒にタフロープで足をくくって血抜きして、シャワーのお湯で流しながら手持ちの包丁で皮や内臓を取り出すことにした。

 最初は初めてだったのでだいぶ梃子摺ったが、アベさんのフォローもありやがて終える。


 全ての処理が終わって時計を見ると、夕暮れを迎える時間になったので、一旦解体済みのそれらを押入れへと入れていった。生臭くなるかもという懸念もあったが、一先ずはということにしておいた。


 内臓などは、迷宮内に放置して新たに生まれてくるだろう牛や豚の魔物の餌にするべく、置いてきた。肉などを運び終えて冷蔵庫の中も牛や豚やアベさんの狩ってきた獲物の肉でいっぱいになり、しばらくは肉には困らない状態となったが、果たして俺はいつ食べられるようになるのか。


 すっかり日が暮れたので、アベさんとアベさんの部屋に行き、アベさんにシャワーの使い方を教えるために一緒に風呂に入った。


 一足先に出て、俺はアベさんに振舞うためにコンロで今日とれたての肉を塩コショウで軽く調理した。俺はさすがにあの光景に食欲が沸かなかったので飯抜きだ。


 ちなみにアベさんにとって味付きのこんがり焼いた肉はよほど美味しかったらしく何度も感謝のジェスチャーでありがたがられたのは別のお話。


 そんな一日を終えて、ベッドで今日の出来事を思い浮かべる。


「あの凄惨極まりない現場は、現代で生きてた俺には想像できないくらいの衝撃だった」


 もうあの世界に帰ることもないが、毎日そういう場にいる養豚場などで働いている人にも光景違いはあるが、脱帽と尊敬に値するなと思った。

 

 そう口にして、もう収まったはずの吐き気が胃にくる。

 ……しばらくは素うどんの生活が続きそうだな。


「慣れだよな、あれは……」


 ひとまず、迷宮の布石となる地図と再生のオーブについては理解できた。

 明日からは具体的に迷宮創造(ダンジョンメイカー)を使って、迷宮を広げることにしようと考えて俺は目を閉じて寝ることにした。


 そして翌日、再生のオーブの存在が齎す恩恵を甘く見ていた俺は、生み出される数の制限をすることを忘れたがために遭遇した――幅が2人分で100mの迷宮空間――そこに牛と豚の魔物による押し合いへし合いによる阿鼻叫喚の光景に絶句することをこの時は考えもしなかった。



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