治安維持局中央本部1
煌びやかな電飾が街を飾り、楽隊の演奏や大勢の人々の喧騒が、10年に一度の祭りを大いに盛り上げている。
幼い子供や、恋人と寄り添う大人までもが中央区を訪れ、至る所に架設されたステージとモニタに注目している。
この大イベントを運営しているのは都市大手ニュースクランが複数連合を組んだもので、それに組み込まれる形で、バトルマニアアリーナやその他芸能クランが祭りを盛り上げていた。
ここを去る者たちは悔いを残さぬよう、また見送るものたちは最後の花を手向けるために、様々な方法でそれを表現していた。
道路や歩道、パブリック施設、小中高等部の敷地も含めて人が溢れ、日付変更の合図を固唾を呑んで待っている状況だった。
時間はもうすぐ23時を迎えようとしている。
「ところでリズ。あれから色々考えたんだけど、あれってやっぱり本当なの?」
「あれとは?」
治安維持局中央本部正面入り口に設けられた植え込みの影に、腰を下ろしたリズとユリが作戦開始の時間を待つ。コウタもすぐそばに腰を下ろしていた。
「あなたの正体のことよ。いまいち信じられないんだけど」
「無理に信じてもらう必要はないが、私の気持ちは君たちと共にあることだけは信用してくれ」
「そこは信用してるけど、あんたと話せば話すほど現実感がなくなるのよ」
「そうなのか?」
「そうなの。どう見ても私達と変らないじゃない」
リズがマジマジとユリの顔や身体を見つめると少し考える素振りのあと口を開いた。
「ユリはどうして人類がOZEを使えるようになったと思う?」
突然の質問にユリが硬直する。しかし教科書どおりの答えだと次のようになる。
「3度目の世界大戦で人類は心身ともに疲弊し、種の存続の危機に瀕した結果、脳の前頭葉から下垂体に掛けて著しい変化が発生したからと習ったわ」
「なるほど、だけど私はそうは思ってない。当時80億人居た人間を2億人まで減らし、更にその中から厳選した人間を箱舟に詰めた。これは幸運にも生き残った人間なのではなく、綿密に計算されて選ばれた人間だったんだ」
「それってもしかして・・」
「OZEに適応があるものだけが生かされたんだ。病理的、肉体的、遺伝的検査をパスし、健康な人間およそ1000万人を箱舟に入れ、徹底的に栄養を与え、繁殖をさせたんだ。実験的に民族や人種単位で生殖範囲を限定させたりもしていたはずだ」
「でもそれなら、そもそも遺伝的にOZEを使える人たちはどこから来たの?それこそ人類が進化の過程として発現させたとしか」
「その可能性よりももっと現実的な答えがあるよユリ。私のような異星人が地球に飛来して現地人と交わった、という可能性さ」
「そんなことっ」
「ありえないと思うかい?でも私は幾つかの理由から事実と確信している。その最たるものが同じ遺伝情報の一部を共有しているという事実。これは遥か昔、異星人と交わった人類が確実にいるということだ」
ありえない話ではない。実際に目の前に自称異性人が居ることだし、同じ遺伝情報があるという時点で血が交じったのは間違いなかった。
「私達の人類は50兆もの人口を抱えていながら、OZEを操ることができる者は限られた血筋のみ、数も千人程度しか居ない。いろんな調査と研究を重ねた結果、原因はクローン技術にあることが分かった」
「クローン?」
「生殖行為で固体を増やすのではなく、細胞を培養して人間を遺伝子レベルでコピーする技術のことだ。私の祖先たちが外宇宙へ行動範囲を広げた時代、彼らはクローン技術を多用していたんだ。結果的に、そのクローン人間の血が少しでも入ると人はOZEを使うことが出来なくなってしまった」
「クローンの血が交じることでOZEが使えなくなる理由はわかったの?」
「残念ながら分らなかった。そもそもOZE自体よく分ってないのが現状だ。使えるから存在しているというあやふやなもんさ。まあ話を戻すと、ユリが私を見て親近感を得る理由があるとすれば、そこだと言いたかったんだ」
「つまり遠い親戚ってことを言いたかったわけね」
「そういうことだ。似てるも何も、私たちは種族を超えて交配すら可能な時点で、祖先が同じ可能性もある。シネマに出てくる化け物ってわけじゃないさ」
「なるほどね。納得したわ」
「そういうわけでカナメは私がもらってあげよう」
「ちょっと何いってんのよ」
「ユリはどうしてカナメの事を好きになったんだ?」
「ちょっっ、いきなり何言い出すのよ。私があんな奴のこと好きなわけ無いじゃない」
顔を真っ赤にしたユリがリズに顔を近づけて否定したが、説得力は皆無だった。
「隠すような内容じゃないと思うが」
「隠してない」
リズから大きなため息が漏れる。
「しかし嫌いでは無いのだろう?」
「おい、お前らそろそろ時間だぞ」
コウタが作戦開始の時間を告げる。あと30秒で23時ジャストだ。
「おしゃべりはここまでか……。ユリ、コウタ、準備はいいな」
「当然だぜ」
「もちろんよ」
「では未来を手に入れる戦いをはじめようか」
三人は立ち上がると、治安維持局中央本部へと足を進めた。
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