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幸運とスキルで転生先でも生き残る  作者: なお
旅立ち

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旅空8

父危篤、帰られたし


弟のマテオから手紙が届いた。日付が書いてあるが、約半月前だ。たぶん向こうも間に合うとは思っていないだろうな。

手紙の配達がついでだと言わんばかりに満載された荷馬車が、俺に手紙を届けに来た。

拠点には碌な交易品が無いので、その足でセイルの街で交易をして帰るらしい。彼らが交易を終えたら、俺も一緒に一度帰郷する事にした。ガイ君やカイルに拠点を託し、ゴルやハルを伴って帰る事にした。


少しこの帰省が長くなる予感がした。

「村に帰るぞ、ゴル」

首筋を優しく撫でてそう言えば、いつもの素っ気ない態度の中に歓びを感じた。そうだよな、お前にとっては、もうあそこが第二の故郷だもんな…



「アルス、おかえりなさい」

「兄さん、おかえり」

「ただいま、母さん、マテオ。親父は?」

あまりに変わらない俺の容姿に、2人が驚きの表情で俺を迎える。今じゃ俺の方がマテオの弟と言っても通用する程になってしまった。20前後で時の止まってしまった様に見える今の俺は、2人にどう映るんだろうか?


2人に連れられて、教会の裏手にある墓地へ案内された。マテオの嫁や子供には少し遠慮してもらい、親父に別れを告げに来た。

昔お世話になった神父様は今も健在らしいので、墓参りが終わったら挨拶をして行こう。そう思いながら、親父の墓の前に到着する。


「来てやったぞ、親父」

墓に好きだった蜂蜜酒(ミード)を供えてやる。俺からこの死んだ男に言う事は特に無い。全く好かれていなかった。それでも10年くらいは共に暮らしたけど、この男に関する家族としての記憶がほぼ無い。俺の努力を掠め取られた記憶ばかりが残っている。そんな男だ。

ただ、母さんやマテオにとっては良い夫、良い父親だったのだろう。今も2人は深い悲しみの中にある。この場で死者を悪く言うほど、人として終わってないつもりなので、黙祷しておく。親父に今生の別を告げて墓地を後にし、神父様に挨拶をしに行く。

こちらもあまりの変わらなさに非常に驚かれながらも、旧交を温めて帰路に着く。


「何か不便とか無い?」

母さんのケアをしながら聞いてみるが、昔よりも便利な物が増えて、楽になったと言った。俺が色々やってくれたお陰だと。カミラ経由で色々と手厚い支援があるそうで、問題は無さそうだった。


「最近じゃ薪も豊富に手に入る様になったし、だいぶ楽になったよ」

「あぁ、そういえば値崩れする勢いで、一時期伐採した木材を流したっけな」


資金調達でこっちの下流に大量の木材を流したけど、それが実家にも影響を与えていたとは。

母さんが楽になったなら良いかと、値崩れを起こさせた張本人は思考を放棄した。


その夜はマテオの子供達に開拓した村の話や、今の拠点の開拓話をせがまれて、話しているうちに夜が更けていった。マテオの次男三男辺りは、もしかしたらどちらかの開拓民になるかも知れないなと、ぼんやり考えながら、開拓の苦労話をしてやった。


「それじゃ、皆んな元気でね」

実家に別れを告げて、久しぶりに開拓村に向かう。約5年前、街道も何もない、道なき道を探索する様に出ていった俺の作った村は、今はどんな姿になっているのか。

でも、今はそれよりも…


ゴルとハルを優しく撫で摩りながら、向かう。足取りもだいぶ辛そう。あと少しだぞ。

さあ、帰ろうか。



開拓村、いつも惰眠をむさぼっていた水場、懐かしいな。お疲れ、無理させてごめんな、ありがとな。ここがもう故郷だったんだな。


おやすみ、ゴル。

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