拠点暮らし39
「こっちの下流にも粗方流し終わったな」
完成品は筏を組んで下流に放流した。筏自体も木材になるので無駄にはなるまい。伯父さんが先発の筏を回収している頃合いだろうか。しっかり稼いで、聖堂に寄進しておいてくれ。頼んだわ。だいぶ伯父さんにも助けられたし、その分しっかり稼いでいただきたい。本職と遜色ない出来栄えの物が出来たから、きっと満足いく結果になるはずよ。
コレで世界にまた一つ回転の妙技が広がってしまった訳だ。大河流域に回転に酔い痴れる文化をまた一つ植え付けてしまった。そしてまだ弾はあるんだ…
スマン、世界。スマン、人々…
まだ回転は止まらないんだ…
あぁ、俺はなんて罪深いんだ‼︎皆をこの回転の沼に沈めようとしている‼︎
「おい、村長のあの面を見ろよ。またどうでも良いくだらん事を考えてるぞ。俺は最近、アイツの表情で何考えてるか、大体分かる様になってきたわ」
「俺はもっと前から分かってましたよ。どうせ今頃、先生は神様歯車様とか唱えてんでしょ、アレ」
うるさい!今の俺はもっと深刻な悩みを抱えているんだ!
「次の弾は構想済みだが俺はどうしたら良いんだ⁉︎ガイ君!カイル‼︎また皆を回転の深淵に誘ってしまうんだぞ⁉︎あぁ俺はなんて罪深いんだ!でもコレも知ってしまったら皆はきっとこの沼にも嵌ってしまうんだ!そうしたらまた多忙な日々が待っているんだぞ?俺は家族とのささやかな一時も許されない、あの多忙な日々にしばらく耐えられそうにない。娘達の側に居たいんだ!それと研究もしたい‼︎」
「ほら、やっぱりアホな事考えてた」
「まぁ、知ってましたよ?」
仕方ないじゃん!この約2年ほど、資金繰りのためにあちこち飛び回る事になったのだから。主に、開拓領域の出張治療サービスとして、アッチで資金調達だの何だのしていたので、動物達との触れ合いもほとんど出来なかった。なので、クロちゃんの新しく産まれた仔犬達は俺をパパと認めてくれなかった…
その上、しばらく拠点を離れていた間に、メアちゃんはカイルのお家にお嫁に行って幸せな家庭を新たに築いてたし。姑さんは凄くメアちゃんを可愛がってくれてるから、そこだけが救いだ。カイルは赦さん。
ここ2年の忙しさは俺の心に癒えない傷を幾つも残しながら、それと引き換えに大金を得たのだ。別に大金が欲しい訳じゃないんだけどな。大勝ちするのが分かってるのに、日和ってるのを見たら口出ししたくなって、その結果家族に忘れられたパパになってしまった。あんなに頑張ったのに、俺は悲しいよ…
ここでまた新たな事業なんて起こそう物なら、あの二の舞だ。もうそろそろノアちゃんもチョコちゃんもママになるってのに…
娘達も俺の知らない間お婿さんを捕まえてたんだぞ⁉︎
孫が出来るんだぞ⁉︎
「孫に嫌われたらって考えたら耐えられない‼︎お前達、どう思う⁉︎」
「寝ろ」
「休んでください」
2人が辛辣すぎて辛いんですが…




