拠点暮らし32
「おい村長、もうちょっとコレは漬けとかないと曲げ切る前に割れちまいそうだぞ」
「はいよ、火ちゃん、水ちゃん、またここに熱湯お願いします」
石爺特製の細長いお風呂に、製材した板をドボン。
しばらくした後、大小2段の円形に掘り抜いた地面に板を下ろす。下りてきた板を厚手の革手袋をしたパワー達が、両端を持って、たわめながら円形に沿って収めていく。大円、小円、各2枚。合わせて4枚の板をパワー部隊にお願いして、円に収めてもらう。
「駄目だ村長!小さい方はコレは折れちまう!これ以上たわめられないぞ!」
「分かった!今回は実験だから、無理そうなら全部大きい方の円に収めちゃって!」
小さい方は欲張り過ぎか。まぁ今回はコレで良しとしましょうか。
それやってる間にこっちはプロペラ部分を作りますか。軸には角棒を採用して、先程の大円よりもやや小さくなる旋回半径で板を釘留めして『十』字状にする。
はい、コレが唐箕の送風装置の大まかな回転機構部分。あとは生まれた風が逃げない様に囲って、穀物の投入箇所も風の恩恵を最大限受けられる様に囲ってと。
回転部に物が入らない様に傘や傾斜を付けるなどの工夫を施す。
試しに麦藁と製粉前の麦をごちゃ混ぜにして、投入口に…あ、漏斗もパーツで必要か。今回はこのまま実験するとして。
「じゃぁ、軸を回して!」
「いや、棒がただ伸びてるだけだから、無理だが?」
「ハンドルつけ忘れてたわ」
失敬失敬。
取り敢えず軸にセイルの散策で見つけたハンドルっぽい棒をそのまま釘留めしちゃう。あんまり良くないと思うけど、今回は実験だから。
やっぱり少し釘を打った分、軸が歪んだけどまあええか。改めまして、回転スタート!
「先生、中のここら辺に仕切りを付ければ、もっと良くならないか?」
ガイ君の着目点、素晴らしい!そういえばなんかそんなのもあった様な気がするわ。
ゴミと軽い実の境界少し手前に壁を手で作ってみてどの辺が最適解か探ってみる。
「だいぶ良くなったんじゃないか?」
俺と同じことを、良い実と悪い実の境でやってたカイルが笑ってる。
「ガキの頃、この実の選別が嫌いだったんだよな。あんまり退屈だったから、どれだけ高く実を投げて上手く取れるかってばっかりしてた。その度にお袋から食いモンを粗末にするなってしこたま怒られたわ」
こりゃ良いなって感心してる。他のメンツも頷いてる。俺だってそう。ここに居るのは大体が農家の倅達だ。自分の農地の開墾ができなくて、口減しされた奴に、若い夢に怪我が元で敗れた農家の倅ばかりだ。
だから、あの苦行を知ってるんだ。収穫の喜びとか言うけど、楽出来るんなら楽したい作業の上位に君臨する苦行だって。
「コレなら水車無しの農村だって使えるだろ。てなわけで、ガイ君とカイルは大店のとこ行って、盛大に吹聴してきてよ。面白いものが出来たってさ。それまではこっちでも改善点洗っておくから、コレを高く売り付けて、色々足りない物を揃えようじゃないか。特に本職が作ったしっかりした水車とかさ」
水車っぽい物作って、本物を手に入れようじゃないか!




