1話 心汚ノ無キ桜
20XX年
桜が、やけに静かに散っていた。
風に流される花びらの中を、俺──五条零は歩いていた。
見慣れない街。見慣れない校門。見慣れない人の群れ。
浅倉学園
偏差値60を超える、全国的にも有名な進学校。
自由な校風を売りにしているらしいが、こうして実際に立ってみると「自由」という言葉の意味がよく分からない。
ただ一つ確かなのは、ここにいる全員が“選ばれてきた側”だということだ。
(……ま、俺もその一人ってわけだが)
京都から東京へ。
一人暮らし。親元を離れるのは初めてだ。
とはいえ、別に悲壮感みたいなものはない。
追い出されたわけでもないし、家庭環境が荒れているわけでもない。
単純に、親が言ったのだ。
「面白い学園らしいぞ」
その一言で、ここまで来た。
我ながら、だいぶ軽い動機だと思う。
偏差値60超えの学園なので勉強は大変だった
偏差値が高いから結構勉強しないと合格しない為必死にやったのはいい思い出だ
俺は一般受験で合格した組だ
必死にやってきていたとはいえ、これ以上に勉強しないと東大に受からないとか凄いな大学に向けて頑張っている受験生の皆さん
応援していますって今言う時期かな?まあ、話は戻し、桜が綺麗に咲いている時期に俺は入学する
校舎は思っていたよりも“普通”だった。
いや、正確には普通ではないのかもしれない。
ただ、あまりにも整いすぎていて、逆に違和感がない。
白い校舎。広すぎる中庭。無駄に長い廊下。
(これ、大学かよ……)
教室番号は1年4組。
校舎案内板を見ながら歩く。
隣は5組、その隣が6組。
どうやら一年生のクラスは6つまであるらしい。
6組の隣は理科室だ
関係ない情報だが念のため教えておく
教室に入ると、すでに何人かが席についていた。
視線が一瞬だけ、こちらに集まる。
その圧は、妙に現実的だった。
“試されている”ような、そんな感じ。
出席番号は8番。
席は前から2列目、窓側。
(悪くない)
椅子に座ると、すぐに前の席の女子が振り向いた。
「ねえ、君どこ出身?」
「京都」
即答すると、彼女は少し目を丸くした。
「京都!?いいなー。私は神奈川!霧山優菜!」
やけに明るい声だった。
距離感が近い。初対面なのに、妙に壁がない。
出身まで教える必要あるか?全国各地から来ているのか…この学園
「よろしく」
軽く返すと、彼女は満足そうに笑った。
「おっ、イケメンじゃねえか」
横から、やけに馴れ馴れしい声。
視線を向けると、そこにいたのは長身の男だった。
180はある。たぶんそれ以上。
無駄に存在感があるタイプだ。
「誰お前」
「悪い悪い。顔が良すぎるから」
「誰君?」
「紹介するか。俺は田村颯太、よろしく」
黒髪の背が高い男。180はあるだろう身長だ
物理的に上から目線
「俺は五条零。今日から同じクラスだな」
「おう!そうだなっでそちらは?」
「私は霧山優菜!よろしくね田村!」
「あ!よろしくな五条、霧山」
時間になるまで3人で話して、連絡先を交換した
そして、8時半になった頃に先生が入ってきた。背の高い女性だ
「さて全員集まったかな?今日から君達ー」
「遅れました!すみません!」
と先生の自己紹介を吹っ飛ばして入ってきた男性
「来たか!東堂!!まだ着席時刻になってないから大丈夫だぞ」
8時40分が教室にいないといけない時間だったな
「そうですか…ってみんな早くない?まだ外で入学生いっぱいいたのに…俺が遅刻者みたいな雰囲気じゃん!」
「あはは!それは私も同感だ東堂」
東堂は着席する。田村の後ろだった。
「ではもう一度言うか。今日から君達の担任になる加藤奈美だよろしくな!」
元気な先生だな
自己紹介は終わった
自己紹介が終わってすぐに入学式が始まって学園長の挨拶が
「改めて、担任の加藤奈美だ。よろしく」
軽い。
やけに軽い自己紹介だった。
そして、入学式もまた──軽かった。
学園長の話は短く、簡潔だった。
「自由な学園だ。以上」
(え、それだけ?)
拍子抜けするほど短い挨拶。
だが、その“短さ”が逆に気味が悪かった。
普通、こういう式はもっと長いはずだ。
理念だの、努力だの、未来だの。
それが一切ない。
ただ「自由」とだけ言って終わる。
式が終わり、教室に戻る途中。
担任が言った。
「明日はテストだ。入学早々だが、しっかりやれ」
「そして明後日から部活見学期間だ。二週間ある。よく考えろ」
(初日から詰め込むなよ……)
そう思いながらも、誰も文句は言わない。
この学園ではそれが“普通”なのかもしれなかった。
その日の夜。
寮は想像以上だった。
個室。広い部屋。キッチン。風呂。
(ホテルじゃんこれ)
さらに廊下には掲示がある。
『大浴場 or 個室風呂 選択制』
(何その選択)
あまりにも整いすぎている環境に、逆に現実感が薄れていく。
窓の外を見ると、校舎が静かに立っていた。
夜の中で、やけに黒く見える。
(……まあ、いいか)
俺は荷物を置き、ベッドに座る。
明日はテスト。
入学初日としては、あまりに普通すぎる締めくくりだった。
だが──
このときの俺はまだ知らなかった。
この“普通すぎる学園”が、
普通でいられる場所ではないということを。
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