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9 閑話 ゴードンside

本日、二話目です。


 マクシミリアン公爵が先日購入したドレスやジュエリーはさすが公爵家お抱えの専門店の物。値段なんてあってなかろうってやつだ。大きな水色の箱に白のレースで縁取られたリボンがかけられたそれを知っているのは俺くらいか。

 ドレスのサイズも靴のサイズも俺が調べて報告したんだから、誰宛の物かってのは俺が一番よーく知っている。

 それをあいつ、マリーはその箱を抱えて何と言った?


「騎士団からのお礼の品」


 だと言いやがった。なんで騎士団が一メイドなんかに高級なドレスを贈ると勘違いできるんだ? 

 宝石はなかったのか?

 宝石だけで俺の年棒何年分――いかん、哀しくなるからこれはやめよう。


 とにかく! ドレスを贈ったのは公爵だよ! マクシミリアン公爵!

 今回はどっちが悪いんだ?

 くっそう! 誰にも言えないというのは、辛すぎるっ!


 待てよ。舞踏会があってそのドレスを着て参加するならその時を公爵は狙っているとも言えるのか。

 ま、数日後に答えは出るかもな。 

 最近フローラの結婚話で盛り上がっている公爵家。その公爵自身に春が訪れることを期待しつつそんなことを思っていた。




 護衛と称してマリーを舞踏会に連れて行った公爵。

 にしては、マリーを自分色に着飾らせて。


 大叔母様の開催する内輪向けの舞踏会だったこともあり、俺も貴族として参加しつつ護衛していた。

 あまり警戒することもないのは助かる。助かるんだが、他に気を使わなくていい分、見えるものもある。

 公爵に一生懸命話しかけるマリーの姿。

 いちメイドがそうそう話をする機会もないからな。


 ところが、公爵は上の空。他のことに関心があるのか、マリーの話に気もそぞろなのが、立食している俺にも伝わる。

 奇麗な女性にも目線が行ってる。これはマリーが荒れるかな、そう思ったが、 マリーは少し悲しそうな感じではありつつも、護衛としての務めを果たしている風だった。

 後は、首飾りなどについて話をしているのは、分かった。そういえば、宝石は公爵の工場で作られていたな。

 宝石の宣伝でもしているのか?


 二階回廊で見張りをしているトビアスと食事交代して、衝撃の事実を知った。

 マリーが公爵から視線を外した時だけは、公爵はマリーを見てた。

 おい、そんな優しそうな顔してんじゃねーよっ!

 『冷徹、鉄仮面のマクシミリアン公爵』はどこ行ったーっ!!!

 思わず口に出しそうになった程。あー、俺死ねる、今なら死ねる。こっちが赤面するわっ。

 確かに、今日のマリーは前回よりも可愛さが少しプラスされてるもんな。でも、あれはメイクのおかげだ。公爵よ、現実も直視しろ。

 そして、そこまで本当は美少女じゃないし、身分もただの男爵令嬢だと思い出して、早く気持ちを伝えろよ。ヘタレめっ。

 年齢も、十七のマリーは普通に二五歳くらいに見えるから、三十二のあんたと全然お似合いだぜ? 


 ふぅ、旦那様からあんたになっちまった。

 俺は心の中で一人熱弁していた。


 だが、やはり公爵はそんな初心な野郎じゃなかった。



 公爵の挨拶が一通り終わったころ、階下へ行く。

 いつになく、公爵の周りに集まっている数名のご令嬢たち。そのせいでマリーは取り残されていた。

 マリーが隣にいることで公爵の表情が柔らかくなったために起こったことだ、と俺は思う。マリーがいると公爵に表情が出る。呆れたりといったものも含めてだが。

 マリーは護衛だから、傍を離れることができなかったようだ。俺と交代し、ほっとした表情で化粧室へ向かう。

 公爵は令嬢たちに別れの挨拶を述べると、俺たちに合図をして外へと向かう。いつもよりは滞在時間は長いくらいだろうか。


 途中、公爵の大叔母さまから呼び止められた。


「ブルータス、どういうこと? なぜあの子にブルーダイヤモンドを? 自分の瞳の色と同じドレスまで着せて私が主催する舞踏会に参加するなんて、意味を分かってやっているのでしょうね?」

「当たり前ですよ」


 平然と当たり前と口にする公爵に、大叔母さまは慌てたように付け加える。


「それにしては気がなさそうだったけれど、素敵な令嬢をたくさん今夜はお呼びしてますから、もっと遊んでいきなさい」

「自分の気持ちはすでに示したつもりですが? 今日はブルーダイヤモンドの宣伝も兼ねていたので、わざと彼女を主人公として扱わなかっただけですよ。他の女性に気があるふりをしたほうが、ダイヤに関心を持ってもらいやすいですからね。では、失礼」


 踵を返すとさっさと馬車に乗り込んでしまう公爵。


――ヘタレじゃなくて、計算してのことだった。


 大叔母様は唇を噛んでいたが、すぐに連れて来ていた令嬢に耳打ちすると馬車に乗せてしまい、俺たちにも口止めすると公爵邸へ向かわせた。

 その令嬢はなぜか俺のことをじぃっと見ていたのが気になったが、俺たちは護衛して公爵家に帰り、途中マリーが「公爵はご無事かー」と叫びながら飛び込んでくることになった。


 半身を乗り出す公爵の車中でキスをしていたことが明白な姿に、マリーはショックを受けていた。

 公爵は何をしてるんだ? 俺は妙にイラついた。

 だが、護衛しながら車中から漏れてくる会話で、香水の香りで勘違いしたらしいことを知る。

 俺はマリーを部屋まで送りながら、ドレスも公爵からのだと伝えると驚いていた。気づけよ。


 マリーの部屋まで行くと、待機していた執事から令嬢のところへ行くようにとマリーは伝言をもらい、そのまま向かった。

 その後、なぜか俺も呼んでいると伝えられる。

 大叔母様が後押ししている令嬢が俺に何の話があるのだろう、と思いながら令嬢の元へ行った。


 お酒を頂きとりとめもない話をしていたのに、気づいたら朝で――


 二人ベッドの中だった。


 妊娠までしていたのはさすがに後で焦ることにはなったけれど、伯爵家三男の何もない俺にたくさんの持参金と爵位まで持参してきてくれた令嬢――ローズマリーには感謝している。

 名前に同じマリーがついても、こちらは薔薇付きなだけあって、可愛いと俺は思うが、年齢は俺よりも四つ年上だった。

 公爵にとって三歳年下の幼馴染なのだとか。別荘が隣で、シーズン中には一緒に遊んだ仲だそうだ。お転

婆すぎて嫁の貰い手がなかったらしく、彼女の親には泣いて喜ばれた。


 公爵に話を戻そう。

 ローズマリーが「ブルータスたちは上手くいったはずよ」と言っていたが、舞踏会翌日もぎくしゃくしているマリーと、普段通りのやや不機嫌な公爵。


 その理由は、トビアスが「公爵はマリーに手を出しているのか?」と聞いてきたことで判明した。キスをしようとしているところをどうやら邪魔したらしい。


 おまえかっ!

 俺は黙ってやつの頭を叩いた。

 トビアスはまた一カ月残業の毎日――

 とはならなかったようだ。今回は二日で終わった。


 

 少しは進展があったのか。

 公爵は一階のマリー専用キッチンへ毎日のように訪れているから。

 マリーが嬉しそうに頬をそめている姿は、公爵の前だと少しは可愛く見えるし、歳らしく見えなくもない。

 恋をすると奇麗になるというのは、あながち嘘でもないのかもしれない。

 左手に新しい指輪をはめ、虹色魔石はネックレスになっているのは、まぁ、皆気づいているけど、な。


 ただ、当のマリーだけはあまり分かっていない風なのが、痛ましい。

 何でも「スミレの指輪は貰っても勘違いしたらダメなの!」だとか。何だ、それは??

 マリーが片思いだと未だに思っているらしい、ってことは分かった。

 

 ローズマリーが聞きだしたところ、マリーは昔男の子からスミレの指輪を貰い、「私も好き」と告白して速攻で「断る」と振られたことがあったらしく、それが先の思い込みに繋がっているらしいとのこと……。

 マリーもマリーだが、スミレの指輪だなんて凝った指輪を贈った公爵も公爵だな。

 

 公爵が大叔母を説得させるために、どこぞの家の養子にマリーをと、画策している間にフローラに続き、俺のほうが先に結婚し、公爵のヘタレが俺たちの間では確定した。

 公爵、ざまぁ。


~おわり~

ルーカス君に貰ったのがスミレの花の指輪で、その時に好きと言って、断ると言われたことがあるマリー。同じ黒髪の男の子に速攻で振られたことがトラウマになっている模様です。

一作目に描いた中にちらっと出てきてました。

これで第二弾は完結です。

読んでいただき、ありがとうございましたm(__)m

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