ご本人登場
よくなかった。
「私はジュークだ。ここに、この手紙を書いた者はいるか?」
なんと熊さんが我が家に突撃してきた。
突然の高貴な騎士の出現に父と母は口から泡をブクブクと吹いている。
しかも話を聞く限り、この男はジュークらしい。なんてこった。パンナコッタ。
「もう一度問う…ここには文字を扱える女がいると聞く……その者が書いたのではないのか?」
「いや…その…」
父と母は言葉を濁しつつも私をチラっと見た。いや、見るなよ。
いや、そりゃ文字を使えるのはここら辺では私だけだし何気に問題行動の実行犯になるのが多いのは私だが…。
なんて思ってると熊さんがこっちを振り向いた。
「む、あの時の?…では、君が書いたのか?」
ほら、気付いてしまった。
仕方がないと溜め息をつきつつも頭をフル回転させて言葉を出す。
姉さんはもうすでに結婚してしまったし…そうでなくても私は姉さんを売ることが出来ない。
はぁ、仕方ない。
「はい、私でございます。ジューク隊長に恋慕を抱いてしまい…しかし私は農民の身、せめて思いの丈をと思って執筆しただけにございます」
嘘八百。
つーか、お前帰れよ。さっさと帰れよ。今すぐ帰れよ。
かーえれ!!かーえれ!!
心の中で帰れよコールをかましてみるが、一向に帰る気がしない熊…もといジューク様は顔を真っ赤にしていった。
「そ…その、文字を何故書ける」
「そ、それは…」
ヤバイ。これはヤバイぞ。
何人かは字を読めるが…ぶっちゃけコレは『学と知の盗み』として罪になる。
あまり農民や平民に知を学ばさせると余計な反乱を起こす可能性があるのでそこそこ重い罪として下手をすれば死刑になる。
処罰される人は少ないが、それは『バレてない』からである。
「…っ…」
しまった…コイツ、学を盗んだかどうかを確かめる為に来やがったのか!?
どうする…どうする!?どうしたらいい…あ!!
「恋故にございます」
「ブフゥ!?」
ジューク隊長が吹き出した!汚い!
しかし、私は彼が混乱しているうちにスラスラと頑張って嘘を吐いてやる。
「私はジューク様に恋を抱いたが故に学を盗みました。どうしても文字に現したかったのです…申し訳ございません」
キッチリ90度しっかりと頭を下げる。
「か、顔を上げれよ!!」
「はい」
さて、どうなるのだろうか?
出来れば形式的にでもいいからさっさとフッて欲しい。
「た、確かに知を盗むことは重罪では…あ、あるが…その…うむ。俺…いや、私の婚約者になるのならば罪にはならぬ」
何か言いやがった。
「はあ?」
思わず変な声を出してしまった。ヤバヤバ。ってか、は!?なに言ってんのコイツ。
とか思ってると、ジュークの隣にいたっぽい赤茶のチャラ男がヒョコっと顔を出して説明を補足した。
「いやね、君がウォルフ・ジュークの結婚相手になれば学の盗みは無罪になるんだよ。やったね」
何がやったなんだよバカか。
「いえ、私は嫁に行けません。身分違いにございます」
「うん。じゃあ君は死ぬけどいい?」
「いい訳ないねぇだろ」
思わず素が出てしまった。
しかし、チャラ男は気にした様子もなくバシバシと熊さんの肩を叩いた。
「じゃあ、婚約者だね。よかったじゃんジューク!!」
…は?なんでこんなことに?
こうやって息を吐くように嘘をつくから後々…。
次はもう一つの波乱です。




