第45話 「おかえりなさい」――母との再会
海の世界へ戻ったユニたち。
目の前には、懐かしい海の景色が広がっていた。
「……帰ってきた」
ユニはゆっくりと周囲を見渡す。
色鮮やかな珊瑚。
光る海草。
遠くを泳ぐ魚たち。
「懐かしい……」
アオも嬉しそうに泳ぎ回る。
「お姉ちゃん! ここ、変わってないよ!」
「本当だ……」
ユニは笑った。
けれど、その笑顔はすぐに曇った。
海の奥。
人魚たちが暮らす町には、どこか緊張した空気が漂っている。
「……みんな、どうしたの?」
ロッタが周囲を見る。
「誰も笑ってない」
レオンも魔力を感じ取る。
「結界が張られてる」
カイルが剣を握る。
「何かから、この国を守っているようです」
海の国に起きていること
一人の人魚がユニたちに気づいた。
「……ユニ様?」
「え?」
「ユニ様が帰ってきた!」
その声を聞いた人魚たちが集まってくる。
「本当にユニ様だ!」
「帰ってきたのね!」
ユニは驚いた。
「私のこと、知ってるの?」
「もちろんです」
年配の人魚が答える。
「あなたは、この海の国の大切な人ですから」
ユニは少し照れた。
「でも私……ずっと海の外にいたから」
「それでも、あなたの帰りを待っている者はいます」
その言葉に、ユニの胸がざわついた。
「……待っている?」
年配の人魚は城を見る。
「はい」
「あなたのお母様も」
ユニが息を止めた。
「……お母さん」
第35話から続く、母の存在
ユニは思い出していた。
以前、海の世界から聞こえてきた声。
自分を心配していた誰か。
そして――
ずっと心の奥に残っている、お母さんの存在。
「お母さん……ここにいるの?」
人魚は静かに頷いた。
「はい」
「今も城にいらっしゃいます」
ユニの心臓が大きく鳴った。
「会える?」
「もちろんです」
その瞬間だった。
海の国全体に――
低い鐘の音が響いた。
ゴォォォン……
人魚たちの顔が一斉に強張る。
「まただ……」
「黒い霧が来る!」
遠くを見る。
城の向こうから、黒い霧が海底を這うように近づいてきていた。
賢者とマリ、即座に戦闘態勢
マリが杖を構える。
「ユニ様に近づく敵……」
賢者も杖を握る。
「海の国まで狙うとは、いい度胸じゃ」
二人の目が完全に戦闘モードになる。
「師匠」
「なんじゃ」
「少しだけ派手にやっても?」
「少しだけなら」
ユニが振り返る。
「ダメ!」
「……はい」
二人はしょんぼり杖を下ろした。
カイルが小声で言う。
「ユニさんがいなければ、この海の国は今頃半壊していたでしょうね」
黒い霧の中から
黒い霧が城門へ迫る。
その中から、低い声が響いた。
「ユニ……」
ユニが顔を上げる。
「誰?」
「帰ってきたのか」
ロッタがユニの前へ出る。
「誰だ!」
しかし黒い霧の中から姿を現したのは、敵ではなかった。
一人の人魚。
傷ついた兵士だった。
「王城へ……急いでください……」
「何があったの?」
「黒い霧は……まだ本体ではありません」
レオンが驚く。
「本体じゃない?」
兵士は頷く。
「本当の敵は……」
その時――
城の奥から、声が聞こえた。
「もういいのです」
全員が振り返る。
ユニの目が大きく開く。
聞き覚えのある声。
ずっと忘れたことのない声。
「……お母さん?」
「おかえりなさい、ユニ」
城の大扉がゆっくり開く。
その奥から、一人の女性人魚が現れた。
長い髪。
優しい瞳。
そして、ユニを見つめるその表情。
ユニの目から涙がこぼれる。
「……お母さん」
女性は微笑んだ。
「ユニ」
一歩。
また一歩。
ユニが母のもとへ泳いでいく。
「お母さん!」
二人が抱きしめ合う。
「おかえりなさい」
「……ただいま」
ユニは母の胸の中で泣いた。
ロッタもレオンも、静かに見守る。
アオは嬉しそうに笑う。
「お姉ちゃん、よかったね」
マリはすでに号泣していた。
「うぅ……ユニ様とお母様の再会……尊い……!」
賢者も目元を拭う。
「……うむ」
カイルは呆れながらも、少し笑った。
しかし、母の表情が変わる
母はユニの腕を見る。
そこには――
賢者からもらったブレスレット。
「……そのブレスレット」
「これ?」
母の表情が変わった。
「なぜ、それを持っているの?」
賢者が答える。
「ワシが渡した」
母は賢者を見る。
そして――
驚いた顔をした。
「……あなたが?」
「うむ」
母はしばらく黙っていた。
そしてユニを見る。
「あなたには、まだ話していないことがあります」
「え?」
母はブレスレットにそっと触れる。
青い光が広がる。
「そのブレスレットは――」
「あなたが異世界へ行った理由にも関係しています」
ユニが息を呑む。
「私が……異世界へ行った理由?」
母は静かに頷く。
「そして――」
城の奥を見つめる。
ユニは母を見つめる。
「……お母さん、知ってるの?」
母は悲しそうに微笑んだ。
「ええ」
「全部ではないけれど――」
「あなたが生まれる前から、ずっと調べていたの」
その瞬間。
ブレスレットが強く光った。
海の奥から――
巨大な扉が現れる。
母が呟く。
「そして、あの扉を開ける時が来たのです」




