第六話 精霊の遺跡
恐怖の一分を乗り越えた開拓者の村ドン。村長はクラリスの元に訪れて、魔石の援助と村人の危機を救ってくれたことを感謝した。
ドン「…………それにしても、いったいこの村で何が起きているというのだろう。間違いなく言えるのは、この村が何者かによって護られているということだ。何者か、この地の精霊だろうか?」
クラリス「そうだとして、何故我々を護ってくださるのか検討もつきません」
ドン「ふう、まだ手が震えるよ。仕事に身が入らん」
クラリス「私もです。それにあの日以来、村の人たちの動きが緩慢というか、集中力が無くなっている気がします。みんなときどきぼーっとして…………」
ドン「いかんな。どうやってその気分を晴らしてやれるか。支援物資も来たからドンと酒でも振舞えばよかろうが、それだけではダメだ。もっと明るいニュースがなければ。農作物は全滅してしまったし…………」
悩む村長の元に吉報が届いたのはその時だった。
村人「ドン! 大変だ! 崩れた石垣から古い遺跡が見つかった!!」
ドンがその中を少しばかり確認したあと、遺跡の発掘調査は開始された。村長ドンの指令で必須以外の仕事を一時中断させ、村人にはこぞって遺跡調査をさせていった。冒険は人生のスパイスだ。
ただ、そこがダンジョンで無いことは知っていた上での処置だった。もしもダンジョンならその周辺は魔物で溢れるものだし、自分がこの地を選ぶのにそういった失敗はあるはずがない。
それに、中があまり深くないことも予想していたことだった。装飾から言って王の墓ではない。恐らくは古代の勇者か、賢者か、土地の神を祭った物といったところだろう。
実はこの村の長であるドンはその昔冒険者だったのだ。ダンジョン攻略だけでなく考古学にも造詣があり、この国の土地を隅々まで歩いて回った経歴を持つ。
ドン「もしかしてこの遺跡に眠っていた精霊が我々を護って下さったのかもしれん。皆、遺跡内は荒らさず綺麗にしてやってくれ」
村人たちがそこを気に入るのに時間はかからなかった。内装はシンプルながら、厳かで堂々としている。なにより中がとてつもなく広い空間になっていた。聖堂のような広間があって、みんなで集まるにはちょうどいい場所だ。ドンもそれを聞いてすぐさま酒盛りの準備をさせた。
ドン「集会所を建てる必要が無くなったな、ここを村の集会所として利用しよう」
テーブルと椅子だけ運んで並べ、『恐怖の一分』を乗り切れたことを感謝する宴は催された。
大人たちが酒びたりになってぐでんぐでんになり始めた頃、子供たちは嫌になって抜け出していった。遺跡にあったいくつかの光の杖を盗んできて、夜の森の探索に出たのだ。
アーチー「遺跡って言ったってあの広間くらいしか無いんだものな。探検のし甲斐が無いよ」
エイサ「それよりみんな、観たろ? ゴーレムの夢」
ポリー「観た。ゴーレムと、あの白いドラゴンが出てくるやつ」
アーチー「そうだ、満月の夜だった。今日がそうだ」
イートン「みて! ごーれむ!」
いつもは昼間しか動かないはずのゴーレムたちが次々に集まっていく。いつもより一回り大きい。イートンが真っ先に掴まって乗っかった。慣れたものだ。
アーチー「ようし、ほら皆も掴まれ。リサ! 何してるんだ、行っちまうぞ!」
リサ「…………うん」
リサは夜空に何かを見た気がした。しかし、星がいっぱいの夜空はすぐに森の木が隠してしまう。リサは光らない杖を持ったままゴーレムに飛び乗る。いつものゴーレムより倍以上大きい。隣のゴーレムに乗る友達たちを見やりながら頂上を目指していく。
子供たちがいないことに気付いた幾人かの村人たちも宴会から抜け出してあとを追いかけてきた。夜中だというのにゴーレムが山頂を目指して歩いている。子供たちがそれを追いかけないわけがないと見て、自分たちも山頂を目指した。
ドン「まっらく、またリサのやつらな! 見つけ出して今度こそ説教しれらる。行くろ!」
セシル「どうしたっていうんだろう? いつも夜中はゴーレムは出ないのに」
山の頂上へと続く道の先、光の杖が何本か光っているのが見てとれた。光る棒を持った人間がゴーレムに乗っかってるのがわかる。
コナン「見えた! あいつらどうやら全員ゴーレムに乗っかってる! 頂上に行く気だ」
セシル「村長! おれたちは先に行くからな!」
ドン「このやらう! 俺を年より扱いすんじゃあねぇ。ちょっと、ちょっとっと酔っただけら」
何事かとついてきた酔っぱらいたちは、夜風に当たるついでにゴーレムの流れを追いかけていった。一人が倒れそうになってゴーレムに掴まると、崩れもせずに力強く引っ張っていった。
村人「へへっ、こりゃあ楽でいいや。何処まで行くか知らんけど。お前、イイ感じに冷たくて気持ちいいなァ」
クラリス「あら、てっぺんでお月見? 私もお願い」
それを真似する人々は、どんどん山頂へと運ばれていった。
ゴリゴリ ズリズリ ゴロゴロ
岩の擦れる音が、夜の山に響いている。




