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82 それぞれの結末

「さってと…俺たちはこのまま上を目指していいのか?レイヴォルトが気になるけど…」


「…信じるのが一番なのね!きっと…すぐ追い付くだろうから…ティー達はこのまま進むのね!」


「そーするか!」


 無事にバルコスを撃破…。俺とティナは用のなくなった『陽光の間』とおさらばするため…上へと通じる大階段を目指すことに…。


 …つーか…こんなとこに大階段なんてあるかぁ?周りを見たとこ…特に気になるようなもんはないんだが…。


「うーむ…これは探すのに手間取るなぁ…。早く出たいってのに…」


 そんな風に俺が愚痴ってると…


「違うのね…!探す以前の話なのね!」


「おん?どういう意味だ?」


 なにやら…訳知り顔のティナが俺の言葉に反応した…。目を細くしながら…遠くの風景を凝視していようだが…


「大階段は…目の前なのね!」


「…?なにもないだろ?」


「違うのね!このエリアは…巧妙な罠が仕掛けられているのね!」


 うむ?巧妙な罠?ティナの言葉の意味がわからず…俺はそのまま悩み続けることに…。


 …もしかして…


「…『透明化』…か…?」


「…厳密には…背景と『同化』…してるのね!」


「はえぇぇ…大胆だな…」


 なーるほど…。確かにあるな…そういうの…。


 ワンスラでもダンジョン攻略するとき…よく見落とすギミックがあってだな…。それがさっき言ってた『透明化』とか『同化』だ…。


 上のエリアへ行くための階段や…下へ行くためのエレベーター…重要アイテムがある部屋への扉…。


 そういったものがあらかじめ、背景と同化したり…透明になったり…。それによってダンジョン攻略に手間取ることがよくあるのだ!


 しかし…こんなとこにそんなギミックがあるなんて…。『同化』された大階段…ねぇ…。よくそんなもんを造ったもんだよ…。


「…ってことは…ティナにはそれが見えてるんだな?」


「…そーいうことなのね。簡単な魔法を使えば…わかるのね!」


「ほほぅ…それは便利な…」


「お前にも…ユキにもわかるように魔法を共有するのね!」


「おぅ!頼むぜ!」


 …というわけで…


 俺はティナの助けを受けて、大階段を視認できるようにしてもらうわけだ…。


「さて…動かないでなのね!」



 スッ…パァァァァァァ…!



 ティナは右手を俺の前に掲げると、光輝く魔方陣が浮かび上がり…そして…



 スゥゥゥゥゥ…



「おおぅ!?俺の体に入り込んだぞ!?」


「動かないでなのね!別に呪いをかけるとかじゃないのね!」


「そっ…そうか…なんか焦った…」


 ふぅ…魔方陣が俺に迫ったときはビビったぜ…。まぁ…これで大階段が見えるようになる…はず…


 …って…


「うぉぉぉぉ!?デケェ!」


「ユキにも見えたようなのね…!一緒に上るのね!」


「マジか!今までのよりデカイぞ!」


 俺たちのいるとこからそれなりに離れたとこに…それはあった…。


 確かに…これまで上った階段もデカかった…。しかし…今度のやつはさらに倍以上のサイズだ…。


 …これ…なんのために大きくしてんだ?


 …そんな風に呆けている俺に対して…ティナはため息をひとつ…。


「ふぅ…突っ立ってないで早く行くのね!」



 グイッ…!



「おい!ちょい!俺の腕を引っ張るなって!」


 いつつ…ティナのやつ…妙にイラついてんなぁ…。まぁ…早く脱獄したい気持ちはわからんでもないな…。



 タッタッタッタッ…



 …つーことで…俺達は『陽光の間』をあとにして上へと上がることになった…。多分…これ以上の危険はないかもだが…油断はしないようにしねぇとな…。


 あとは剣聖…レイヴォルトの戦いがどうなるかだ…。なんせ…脱獄の鍵になってるんだから、こんなとこで脱落されるとマジで詰む…。


 頼むぜ…!必ず…俺たちのとこに来てくれよ!



 …



 ゴォォォォォォ…パチパチ…



 猛烈な業炎…辺りを焼き尽くし、猛烈な熱波が吹き荒れるエリア…。


 そこでは…二人の男が激闘を行い…決着がついていた…。


「…流石だ…レイヴォルト…。女にうつつを抜かしたかと思ったが…その実力…今だ衰えずだな…」


 床にあお向けで倒れる大男…ヴォヴォル…。身体中に派手な傷を受けていながら意識を保つ…その実力は確かだろう…。


 そして…その大男を打ち破った剣聖は…


「…すまない…ヴォヴォル…」


 謝罪の言葉を口にしながら…二本の足で立っている。衣服は所々破れているが、本人は息を切らすことなく落ち着いているようだ…。


 そんなレイヴォルトの姿に…ヴォヴォルは呆れたような目線を向ける…。


「ふん…全力を出さずに俺を打ち破るとは…どこまでも舐めているな…」


「…ヴォヴォル…」


「敗者に情けは無用だ…。さっさとあいつらを追いかけることだな…」


「…わかった…」



 ザッザッ…



 かつての友に背を向け…その場を後にしようとする剣聖…。いくらか足を進めたところで…後ろにいるヴォヴォルに再び言葉をかける。


「…私は…いや…俺は…立ち止まる気はない…。ヴォヴォルも…ここで諦めるなよ…!」


「…さっさといけ…剣聖…」


 友からの憎まれ口を背に…今度こそその場から立ち去るレイヴォルト…。


 それを察したヴォヴォルは…小さく呟いた…。


「お前に憧れるのは止めよう…。今度は…俺がお前を越えてやる…!それまで…死ぬなよ…レイヴォルト…!」

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