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76 激闘…その2

「…なっ!レイヴォルトのやつ…あそこであえて戦うために…俺たちを先に行かせたってのかよ!?」


「ふぅ…全然気がついてなかったのね…!あのまま三人一緒に進んでたら突然襲われてたのね!」


「バッカ!そんなこと言ってられるかよ!今すぐ戻るぞ!」


 なんてこった…!ティナから説明を聞いて俺は内心焦っちまった…。まさか…『業炎の間』に敵がいたなんて…!確かに最悪の事態は避けれたが、レイヴォルト一人を危険な目に遭わせられるかよ!


 俺はそのままくるりと後ろを振り向いて…来た道を再び駆けようとする…が…


「落ち着くのね!」



 ポコッ…!ポコポコッ…!



 ティナのやつが俺の頭を叩いてきた…。叩いたっていうか…側にある小石を浮かせて飛ばしただけなんだが…。


「…!なにしやがる!全然痛くねえけど!」


 俺は妙な苛立ちを抱いて、ティナに怒ろうとする…と…


「…しっかりするのね!そんな風に焦っても…向こうの思う壺なのね!」


「…!?」


 真剣な眼差しを向けてきた…。ちっこい幼女に下から見上げられても特に怖くねぇが…その視線はしっかりしてる…。こっちも口出しできねぇほど…。


 そんな俺に…ティナは再びの叱責…。


「レイヴォルトを信じるのね!この世界では誰もが称賛するほどの男…そんな人間があっさりやられるわけないのね!」


「そりゃ…まぁ…」


「まずは…ティーたちの脱出が優先なのね!この先の『陽光の間』にも敵がいるはず…。そんな調子じゃこっちがやられるのね!」


「…!」


 …そうだ…。俺達は危険な脱出劇をしてるんだ…。レイヴォルト一人欠けたからって…俺達におどおどする暇なんてねぇ!


「…そう…だよな!ぜってぇ脱出しねぇと!クリスにも顔向けできねぇぜ!」


「ふぅ…なら…さっさと行くのね!」


「おぅ!」


 ここはまだ地下2階…。まだ(うえ)がある!なら…今の俺達はレイヴォルトを信じて…進むしかねぇ!


 

 タッタッタッタッ…!



 俺とティナはまだ見ぬ次のエリア…『陽光の間』に向けて駆け出した…。どんな敵がいるか…警戒心を抱きながら…。




 …



「…うぉっ…!階段抜けたら…妙に眩しいな!」


「…ここが…『陽光の間』…なのね!」


 あれから数分後…。次の大階段を見つけた俺達は、一気にダッシュ!息が切れるのも気にせず、ようやく上りきった…。


 そこにあったのは…


「…レイヴォルトの言った通りだな…。妙に太陽が眩しいが…偽物なんだっけ?」


「…どういう理屈かはわからないのね…。でも…本物と変わらないほどなのね!」


 強烈な光を放つ太陽が空高く存在する空間だった…。海底のはずなのにまるで屋外にいる気分…。空も青く…周りには…


「…なんつーか…スゴいな…。どこ○もドアとか使われてんじゃないの?」


「…転移魔法の類いじゃないのね…。たぶん…このエリアは造られたものなのね…」


「はぇ!?この古代都市みてぇなとこが!?」


 そう…。そこには古くから存在するような建築物がところ狭しと建てられていたのだ…。


 古代ギリシアを象徴するパルテノン神殿のようなもの…。ローマ時代に存在したコロッセオのような闘技場…。


 そんな大規模な都市国家が…眩しい太陽の光に照らされて、俺達の前に広がっている…。


「…なんつー趣味だよ…。これ造らせたやつバカだろ…。ここは監獄だろ?」


「…ティーも理解不能なのね…」


 そんな風に感想を漏らし…俺達はエセ古代都市を歩いてみる…。ここまで造り込まれていると、大勢の国民でもいそうな気になるが、一人も存在しねぇ…。静かな…それでいて奇妙な空間があるだけだ…。



 タッタッタッタッ…



 んでも…やっぱりすげぇな…。


 これまでのエリアとは違って妙な罠もギミックも無し。大規模な都市国家を形成してるし…。驚かない方が珍しいだろ…。



 カリッ…ザラザラ…



「ふーむ…この建てモン…マジに本物っぽいな…」


 俺はふと…側の大きな建築物を触ってみる…。ハリボテの偽物じゃない…。大理石で造られた…本物がある…。


 爪で軽く掻いてみれば、細かい石屑が剥がれ落ちて…それでいてそこそこ頑丈…。叩いただけで崩れるようなこともなさそうだ…。


 そんな風に思っていると…




「ヒッヒッ…珍しいですかねぇ?」




「…!!」


 突然の声…。間違いなく…副看守長バルコスのもんだ!俺はすぐに周りを見回してその姿を見つけようとした。


 その隙をついて…



 シュバッ…!



「うぉっ!ティナッ!アブねぇ!」



 ヒョイッ…!ダッ…!



「…ちょっ!勝手に抱き締めないで…なのね!」


 間髪いれず…斬擊の気配を感じた俺はティナを両手で抱き締め、回避行動に…!女の子を触るのもあれだが…そんなこと言ってられねぇ!



 ザッ…ズザザッ…!



「ふぅ…ヒヤッとしたぜ…」


「…もうちょっと…女の子の扱いに気を付けてほしかったのね…。でも…助かったのね…!」


「はいよ!」


 なんとか…攻撃を避けれたな…。転んじまったが…怪我がないだけオッケーだろ!




 …そんな俺たちを嘲笑うかのように…


「ヒッヒッ…さぁ…今度はどんな風に楽しませてくれるんですかねぇ?」


 やや離れたところに…そいつは立っていた…!これから行われる…死闘を楽しむかのように笑みを浮かべている…!


「ティナ!やるぞ!もう…戦うしかねぇ!」


「わかってるのね!」


 レイヴォルトも今頃戦ってるんだ…。俺たちも…決着つけてやるぜ!


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