表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/113

73 両者再び…

「…ひひっ…やられましたねぇ…。あれが剣聖の本気とはねぇ…」


「…ふん!お前に倒せるような相手ではない。わかったか!」


「…ひひっ…!それはもう…」


 バルコス含め多くの看守が戦闘不能に陥ってから数十分後…。ヴォヴォル看守長の指示により全員を介抱することに…。


 何人かは意識もあり、大事には至らず問題はなかったものの…。


「…剣聖…レイヴォルト…。まさか囚人に手を貸すとは…」


「この国の最高戦力だ…。捕まえられるわけない…」


「…くそっ…!」


 レイヴォルトが敵に回った…という事実に苦悩することになった…。何人かは戦意まで削がれ、士気も低下…。これでは…脱獄囚を捕まえることも難しくなってくる…。


 それを感じ取ったヴォヴォルは…



 バァン…!!



「「…!」」


「お前たち…こちらを見ろ…」


 両の手のひらを打ち、周りを一喝…。全員が向いたのを合図に…よく響く声で語り出す。


「確かに…あのレイヴォルトが裏切ったのは予想外だろう…。怖じ気づくのも理解できる。だが!だからといってこのまま引き下がるのか!?お前たちは…そんな矮小な存在なのか!?」


「「…!」」


「問おう…。俺のあとに続き…再び戦う意思のあるものはいるか?己の犠牲を…友の犠牲を乗り越え…使命を全うするものはいるのか!?」


「「…我々は戦います!全ては己のために!」」


「戦え!勝利は我々の手にある!今こそ…あの者たちに知らしめる時だ!」


「「はい!!」」


 ヴォヴォルの叱咤激励に勢いづく看守たち…。そこには先程までの落胆…気落ちはない。皆が顔を紅潮させ、闘志を燃やしているのがわかる。


 そんな中でも冷めているのは…


「ひっ…まったく…下らないですねぇ…」


 バルコス一人…。他の者に聞こえない小さな声で独り言を呟く…。それでも…内心ではヴォヴォルの演説に感心しているようで…。


「…しかし…ここのトップはやっぱりあいつになりますねぇ…。まったく…恐ろしいことで…」


 そう口にしながらバルコスは考える…。果たして奴等は今ごろ何をしているのか…。脱出の算段をつけたのかどうか…。そして何より…再び戦うことができるかどうか…。


「…獲物は…渡したくないですねぇ…ヒッヒッ…!」


 バルコスのそんな企みには誰も気づいていない…。気づこうともしなかった…。





「…つーことで…再度脱出計画を立てとくか!」


「ふぅ…全く…参ったのね!」


「…今度は慎重にしなくてはいけないな…」


 あれから…それなりに休憩した俺達は再び行動に移すことになった…。んまぁ…ここまで誰も欠けることなくたどり着いたのは嬉しいが、ホホゥやバルコスに痛め付けられたからな…。作戦を見直す必要があるって訳よ!


「…んでよ…この暗黒の間からどーやって進む?」


「…そうだな…。ここからは複雑に道が別れている…。それに光もない。変に鉢合わせするのを避けるため、有効なスキルを使って移動するしかないな。これまでのように敵を倒して進むのは無しだ」


「有効なスキルかぁ…」


 確かにレイヴォルトの言う通りだ…。魔法も使えない暗闇の中…。どんなことが起きるかさっぱりだ。氷雪の間みたいに敵を倒しつつ罠を探る…ってのは通用しない。とにかく…隠れながら進むのが一番だな…。


「そーなると…『潜伏(スニーク)スキル』を使いながら進むのがいいわけだよな…」


「ただし…当然光が必要になる。光を発したまま進むと、敵と遭遇した時バレる恐れがある」


 なるほど…。確かに『潜伏スキル』を使った状態で光を発すると面倒だ…。


 俺たちの姿は感知されないが、光だけは誤魔化せない。敵から見たらなぜか何もないとこが光って見えるんだよなぁ…。


 おっと…念のため説明すると…。


 『潜伏スキル』を使用した場合…使用者やそいつに触れているやつには効果があるみたいなんだが…。残念なことに…触れていないものには効果がないらしい…。


 ここら辺の基準はやや曖昧なんだが、例えば足跡…体につけた香水の匂い…体臭…。そういったものは基本的に相手にも感知されるんだとよ。


「んじゃあ…どーする?」


「…私が目になろう。実は有効なスキルを持っていてね。君は『潜伏スキル』を使用…私が別のスキルで暗闇を攻略して案内…。それでどうだ?」


「おー…!それいいな!」


 確かに…光を出さずにスキルで暗闇を対策できるなら十分…。問題もないな!そうやって感心してると…



 ゴソゴソ



「ティーはどうするのね!?」


「おおっ!?ティナは…だな…」


 そういやティナのこと忘れてた…。俺とレイヴォルトだけで話してたら気がつかんわな…。


 んでも…正直ティナの活躍はちょっとムリだろ…。


 暗闇だから影人としての力は使えないし…魔法も制限されてるし…。せいぜい俺の背中に引っ付いているくらいしか…。


 ただ…


「…どっ…どうするのね!ティーは…何かできないのね!?」


「あ…うーんとだな…」


 これはマズイ…。なんか泣きそうになってるぞ…。


「なにもしなくていいぞ!」


 …なんて言ったら怒るだろうなぁ…。なんか役割与えないと…。うーんと…えーと…


「ティナさんはアイテムを使って敵の妨害…誘導をしてくれないかな?そうすればこちらの脱出もスムーズになる」


「ティーは…アイテムの管理なのね!」


「非常に重要な任務だから気をつけて…」


「わかったのね!」


 おぉ…!レイヴォルトのやつ…上手いことフォローしてくれたぜ!中途半端な仕事じゃないからティナも満足してる…。本人も嬉しそうだし…。


 いやぁ…ティナも精神年齢高そうで、実際は年相応な子供なわけだ…。


「…ありがとよ!レイヴォルト!」


「いや…彼女にしかできないことを伝えたまでだよ」


「それでも…まじでサンクス!」


 俺は小声でレイヴォルトに感謝の気持ちを伝えることに…。これで…張り合いのある大脱出ができるわけだ!


「よし!行こうぜ!これから正念場だ!」


 そうして…俺達は再度脱獄へと挑戦することになった…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ