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鳥獣戯詩  作者: 妻戸裕次


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第10話ナマケモノ、徘徊す。

――鬼は外、福は昼寝中――


学生のころ 読んだ一冊 安岡章太郎『なまけものの思想』


それ以来 ぼくは すっかり堂々たる ナマケモノになった


「ああなって こうなって こうなるよ」と 誰かが言う


ならない ならない 全然ならない


人生は 説明書どおりに 組み立たれない


ナマケモノは そのたび 小さな違和感を ポケットに入れる


鬼は内へ 福は 日常の外へ 逃げていくような そんな感じ


「決して 怪しい者じゃ有りません 二十面相でも 有りません ちょっと 徘徊しているのです」


そう言い訳しながら ある日 ナマケモノは 歩いた


目的? ない 予定? ない ただ 足が前に出ただけ


あっ 在った 在った

<お地蔵さん!>


丸々坊主 やさしさ過剰気味の顔 真っ赤な前掛け


ナマケモノは 思わず うれしくなる


ああ 幼い頃のままだ 時間に勝っている


今も アガペーの眼差しで そっと 在る


ナマケモノは 幼い頃のようにお地蔵さんの頭を なでた


すると どうだ 鬼は外 福は内


あの 感覚が ふわっと 戻ってきた


「決して 怪しい者じゃ有りません 二十面相でも 有りません ちょっと 徘徊しているのです」


そう呟いて ナマケモノは また 歩き始めた


人生は ままならない


だから今日も ナマケモノは

ままならないまま 歩いている


徘徊という名の 思想を 引きずりながら

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