星の降る夜
「ここでまた星が見れるなんて、思ってもみなかったな」
僕は満点の星空を見上げて呟く。
暗闇とまでは行かなくても、結構な高層マンションの屋上に居るため、学校で見る夜空よりも綺麗に星が見えるような気がする。
キラキラと煌めく星ぼしを見ていると、まるで自分もその星になったんじゃないかという錯覚さえ起こしてしまうようだ。
「綺麗だろ? 」
加藤は静かにそう言うと、僕の横に座る。
「夜はちょっと冷えるから、これでも羽織っておけ」
そう言うと僕にパーカーを掛けてくれた。
確かに夏とは言え、多少の肌寒さを感じていた僕は素直にそれを受け取った。
「ありがとう、先生」
そう僕が言うと、加藤は『どういたしまして』と言わんばかりに僕の首に唇を寄せる。
加藤の吐息が僕の首筋に触れた。
え……と。
――なんだかドキドキする。
でも、これって、ケンタが甘えるときにする仕草……。
いつもなら「やめてください」と言うところなんだけど、なぜだか僕は拒む気にはなれなかった。
加藤はやっぱり……ケンタなんだ。
僕は自分でも驚くくらい、素直にそう思った。
「コウ?」
ケンタが僕の顔を覗き込んで首をかしげる。
「なに? 」
ケンタは僕の涙をぺろりと舐めると、悲しそうな顔をした。
「俺、なんか悪いことしたかな……」
アレ? いつの間に涙なんか出てたんだろう?
最近の僕はどうも涙腺が緩くてどうしようもないな……。
僕は涙をごしごしとこすると、目の前に居るケンタをぎゅっと抱きしめた。
「コウ?? 」
「ケンタが悪いんじゃなくて……。
本当に先生がケンタだったんだって思ったら、なんか勝手に涙が出ちゃって……」
そこまで言うと、ケンタは僕のことをギュッと抱きしめかえした。
そして――やっぱり僕の首筋に唇を寄せる。
……ケンタの吐息が掛かる度、何故か僕の心臓はドキドキと鼓動を早めたけど
でも、それは全然嫌じゃなくて……。
――星の降る晩。
僕たちは、『秘密』を共有することになった。