20日目「未来を明るく照らしたいのなら。」
少し闇深くありますが、ご愛顧願います。
また、同じことの繰り返しだ。
なるようにしかならないことを、
僕は誰よりも知っている。
経験から学べるものを、
僕自身が学ぼうとしていないから。
私に起こる不幸はみな、社会のせいなんかではなく
それに適応できなかった自分のせい
みんなができることを、僕はできない。
それ故に、人を傷つけてしまう。
周りはそれを軽率な行いとして、
その裏を知ろうともしない。
だが、それは仕方のないことなのだ。
そんな自分の認識は、まるで鏡を見るのと同じ。
鏡が映し出すありのままの僕を否定して
私はただ、誰かに合わせ理解者のように振る舞うことでしか、他人と関われない。
社会とは、集団の海である。
ふと、雨空を見上げた。先ほどまで曇りだった空は、やがて雲をより濃くして行く。
雨がポツリと、一つ一つの雨粒は量を増やし、地面へと降り注いで行く。
それぞれが赴くままに降り注ぐ雫の姿に、社会もこうあれたら。という願望を重ねる。
土砂降りの中、歩くのが好きだ。
雨は自分の姿を映すようで、それが真実だから。
自らの体に痛感を覚えさせることで、
心が軽くなる気がした。
カッターを手にし、腕を切る。
ドロドロに流れる血が、
お風呂のタイルを汚して行く。
それが日常茶飯事で、習慣と化した。
もう、いよいよ体が悲鳴をあげた。
痛いよ、痛いよと。初めはまだ動くだろうと鞭を打ち続けていたが、次第にそんな僕も
そうだよね。痛いよね。と向き合い始めるように
なった。
そんな傷ついた体を休める特別な日が
「今日」なんだ。
学校の校舎を上がり、扉を開けた。曇り続く広い空は変わらず自分を待っていた。
変わらず待っていてくれたんだ。と嬉しく思いながら
屋上のコンクリートで靴を脱ぎ、柵を乗り越える。このふちから一歩踏み出せば
もう楽になれる。そう体に言い聞かせ、息を整えた。
聞こえていた雨の音も、人々の喧騒も乗用車の音も、この耳にはもう届かない。
機能を閉ざし、生きる義務に解放されるように
私はその命を閉ざした。
――はずなのに。
心地の良い毛布の感触が一瞬、私を包み込んでいる。
その景色は、もう幾度と見慣れている。
朝を呼ぶ鳩の声 一階から二階へと呼びに来る
母親の声。
私は、この時に知る。
「僕、戻ってきたんだ」
これは私が遡る、たった20日の日常。
次回、第0話「未来を、明るく照らすには。」
読んでもらい、ありがとうございました。
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