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22/22

完結! それぞれの明日へ!!

これにて完結です!!

 ――大反抗から数ヶ月が経過し、僕はいつものようにヒノキを持ちながら通学路を歩いている。

 朝の空気はひんやりとしていて鼻頭が少し痛むけれど、新鮮な空気が肺を満たすと何処か満たされた 気分になる。


「あれから、随分経ったんだなぁ」


 あの後、僕は讃岐さんから【C120】についての詳細と、楠世界について教えてもらった。

 先ず、【C120】。これは確かに免疫の薬である事に間違いは無かった。但し、免疫を獲得させる薬だけれども。この薬には弱らせた丸木杉の花粉が含まれており、幼少期から少しずつ投与する事で免疫をつける、と行った代物であるらしい。要するにワクチンってやつだ。

 何でそんなものを投与されていたのかと言うと……それは【アスガルド】の御老公にして僕の父である楠世界の意向だったりする。

 【アスガルド】を設立した父さんは現村長、樹々茂の離反を受けて本格的に丸木杉対策をしなければならなくなった。

 そこで、白羽の矢が立ったのがこの僕という訳だ。父さんは僕に丸木杉への耐性を付けさせ、丸木村に投入。村長を打倒し、村民達と協力し丸木杉を徹底的に保護させるつもりだったようだ。その目論見は見事に成功し、今に至る。

 思えば急にお金を送らなくなったのもこの村に入れるためだったのだろう。生活費が完全無料だなんて場所はここ以外に無いのだし。

 それに、母さんと離れていたのも僕の存在を村長から隠匿するためだったのかも知れない。真相は不明だけども。

 とまぁ、大体はこんな感じか。ここに来るまでは自分が極めて一般的だと思い込んでいただけに若干ショックだった。

 とは言え――


「やっぱヒノキって……良いものだなぁ」


 ズッシリと重さを伝えて来る丸太に満足感を覚える。丸太至上主義は撤廃され、村長の悪事は村民全員の知るところになった。もうこの村に丸太の強制はない。

 無くなったのだが……ご覧の通り僕を含め丸木人たちの魂は熱く、未だに登校風景は丸太に溢れていたりする。そんな風景を、今僕は歩いている。



♪♪♪



 学校に到着すると親友の心葉が気さくに挨拶をしながらヒノキを掲げた。


「おっす、樹。今日も相変わらず良いヒノキ持ってるな。 温かみのある木目が堪らねえよ」


「そっちこそ、相変わらず良い芳香してるよ」


「だろう?」と心葉は得意げに笑う。つい数ヶ月前まで はこんな日が来るだなんて考えもしなかった。これは喜 ぶべきなのか悲しむべきなのか……。

 いや、きっとこれは歓迎すべき事なのだ。きっとそうに違いない。

 自分を納得させるようにウンウン頷いていると不意にドンと腹部に強烈なタックルを食らった。


「何するんだよ、枯葉」


「樹さぁん! 学校が終わったら朽木さんのお見舞いに行きませんか!? 行きますよね! 行きましょうっ!」


 何だろうかこのやたらハイテンションな三段活用は。


「……言われなくても僕は最初からそのつもりだよ。あと会話中にする悪質なタックルは止めてね」


「無理ですっ!」


「どうして枯葉はいつもこうなんだ……」


 そう言い合っている僕達に心葉は苦笑いを浮かべて いた。



♪♪♪



 学校が終わると、僕は枯葉を引き連れて朽木のお見舞いに向かった。

 朽木の病室に入るとそこには――柊梢委員長の姿があった。

 委員長は僕達に気付くと姿勢を正し小さく頭を下げた。


「今日は委員長に加えてお前達も来たのかよ」


「はいっ! 元気をお裾分けです!」


「お前の元気は受け取ったら腹下しそうだからパスだな」


 朽木はそう言うと肩を竦めた。

 【ラグナロク】で脳に大きなダメージを負った朽木だったが、奇跡的にも委員長の扱う神樹の花粉が作用し、どうにか死を免れていた。そして、段々と回復して行き、今ではこうして話し合えるまでになり――この分であればもうすぐ退院出来るらしい。


「元気そうで何よりだよ」


「まぁな、しぶといのが俺の取り柄だ。こんな程度でくたばってちゃアイデンティティ崩壊しちまうよ」


「とは言え、お前の無茶は眼に余る。これからは私が厳しく見張らせて貰う」


「勘弁してくれよ……」


 何だか、朽木が丸くなった気がして不覚にも笑ってしまった。


「良いペアですね、樹さん」


 上目遣いにそう言う枯葉に僕は一言「そうだね」と、そう答えるのだった。



♪♪♪



 病院を後にする頃には日はどっぷりと暮れていた。

 虫達の声は何処かもの哀しいけれど胸に染み入るようだ。

 まぁ、しみじみと感じ入っていても隣の枯葉は騒々しいのは変わらないのだけども。

 枯葉も僕も男子寮、女子寮の違いはあるけれど同じ寮暮らしであり帰りは一緒になることが多いのだ。


「それでですね、輪ゴム鉄砲を丸太を使って巨大化しようとしたら――」


 枯葉は帰宅中、ずっとその日起こった出来事や、考えた事、感じた事を終始ハイテンションで語る。僕はそれを適当に聞き流したり、突っ込んでみたりする。それは、酷く当たり前で、自然な事だった。


「――ところで、その、この村も変わりましたよね」


 だから、いきなり抽象的な話題に飛ばれると一拍反応が遅れる。


「村長は改心して、生物兵器も無くなって、それで……【丸太至上主義】も無くなった。最高のエンディングですね」


「いや、まだまだ、問題は沢山あるよ」


 そう、【丸木至上主義】はなくなったものの丸木杉への危険は去っていない。 また、村長のように改悪しようと言う輩が現れるかも知れないのだ。だから、僕が――僕達が守らなければならない。


「僕達がこの村の歴史と伝統、それに丸木杉を守らないとだからね」


「なら、その時は私にまた任せて下さい! 隠れるのに 加えて、狙撃とかタックルとか、色々と得意ですし必ずお役に立ちますよ!」


「それは……心強いかな」


「まぁ、その代わりと言ったら何ですが対価はしっかり 要求しますけども」


「がめついなぁ……」


「等価交換は世界の真理ですから」


 そう言うと枯葉は得意げに胸を反らした


「それで、僕 はその時一体何を要求されるの?」


 枯葉はうーん、と暫く考え込むとやがて、名案が思い浮かんだとでも言うようにパァっと表情を明るくした。


「それじゃあ、その時は……私専用の尻拭い役をやって貰います! 私が健やかな時も、やらかした時も、病める時も、悪戯したい気分の時も! どうです!? 良く 無いですかっ!?」


 病める時も、とか、健やかなる時も、とか。これじゃあまるで――


「……」


 あれ、おかしい。どうしてこんなにも頬が熱いのだろうか。


「どうですどうですぅ? 魅力的な提案でしょう?」


 ……成る程。可愛いのは認めよう。

 しかし、致命的にウザい。一瞬アリなのでは、なんて思ってしまったけれどそれはただの幻想だ。


 だからここは僕らしくこう言うべきなのだろう。

 僕は満面の笑みを浮かべ――


「はったおしてやろうか」


 いつものようにそう返すのだった。

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