まだまだ! 秘められし真実!!
僕は讃岐さんに【AMT】本部に呼び出されていた。
何でも本部の中でとんでもない資料を見つけたらしい。
一体どんな資料なのだろうか。それに……僕だけが呼ばれたと言うのも少し気がかりではある。
入り口の丸太を思いっきり踏みつけ、【AMT】本部へと入ると微かにコーヒーの匂いが漂って来た。
「やぁ。来てくれたみたいだね」
ミーティングルームの卓上には【アスガルド】謹製缶 コーヒーが散乱しており、それを飲んでいたであろう讃岐さんの目の下には黒々としたクマが浮かんでいた。
「讃岐さん一体どうしたんですかそのクマ!?」
「ちょっと徹夜でここに置いてある資料を調べてたんだ。まだ若いと思ってたけども思った以上にキツかったよ」
そう言うと、何本目かの缶コーヒーを飲み干しながら目をこすった。
「早速だけど見て欲しい資料、と言うかこれはカルテって言えばいいかな。そんなものが見つかったんだ。これを見てみてくれないかな」
「何で僕だけ呼んだんですか? 重要な資料なら皆で見れば良いじゃないですか」
「いや、内容が内容なだけに他の人にはちょっと見せにくいんだ。何せこのカルテは――【楠樹】クンのもの だからね」
楠樹。その名前を耳にすると言いようの無い懐かしさ が湧き上がってくるのは一体何故なのだろうか。
そのカルテを受け取ると早速見覚えのある文字列が目に入った。
AO 型のRh+という、僕にとって馴染み深いその文字が。
『今日も血液型はAO型のRh+のまま。投薬後の異常は無し。健康そうで何よりです』
ふと、母の言葉が脳裏に蘇る。これはそう、毎日の採 血を終えた時の――
……あれ? その時は免疫の薬を服用していたし、僕自身の体が弱かったのだと思っていたのだけれど、今考えてみるとおかしい事だらけだ。
免疫の薬は【丸木症候群】を回避する為の薬だし、それに血液型が変わってしまうような状況なんてどうやったら起きると言うのだろうか。
と言うか、毎日採血とかよくよく考えなくても大分おかしい。
「僕はずっと気になっていたんだよね。君の特異性が」
「特異性?」
「そう、例えば君の持っている【ペンドラゴン】。これは 【マルタナティブ】を施した丸木杉の根そのものだ。僕達が幾ら【C501】を投薬していると言っても一度それを使ってしまえば真逆のベクトルでの【丸木症候群】の罹患は免れない。けど、君にはその様子は全く見られない。これは明らかに他者と異なっている点と言える」
……確かにそれもそうだ。今まで深く考えて来なかったけれど僕は明らかに何かがおかしい。
投薬の話にしろ、【ペンドラゴン】の話にしろ、不自然な点が多すぎる。
「もしかしたら【オペレーション・ラグナロク】成功の鍵は君にあるのかもしれない。僕にはそんな気がしているんだ」
「そう、ですか」
楠樹、僕の置かれていた環境。それに、僕の持つ【丸木症候群】への異様な耐性。本当に、分からないことだらけだ。
「っと、そろそろ薬を飲んでおかないとだね。樹クンも飲んでおいた方が良い」
「そうですね」
僕はバッグに手を突っ込むと茶色の瓶を取り出した。
「あれ、これは?」
讃岐さんの飲んでいる【C501】に良く似た瓶。
しかし そのラベルには【C501】ではなく【B120】と記載されていた。
「この薬は一体……」
【C501】を服用する讃岐さんの傍で僕は【B120】の瓶 を手に呆然と立ち尽くしていた。




