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炸裂! エクスマルタ―!!

「悪運尽きたようだな。その先は崖、お前の負けだ。大人しく俺の極太丸太を崇め奉れオラッ!!」


 ジリジリと後ろに後退する。そうすると当然のように崖のほうに近付いてしまう。

 前方を黒服達に囲まれてい るせいで正面からの突破はまず不可能。


「…… っ!」


 このまま僕は崖から転落するのか? 何も出来ないまま、丸太に追い詰められて終わるのか?

 ――嫌だ。そんなのは絶対に嫌だ。


『どうした、怯えているだけか』


 すると不意に頭の中に不思議な声が響いた。


『雑魚丸太程度に追い詰められて転落死か? このままでは本当に死ぬぞ。それとも丸太至上主義を破壊すると言ったあれは間違いだったのか?』


 ああ、そうだ。僕は丸太至上主義をブチ壊すんだ。

 こんな惨めな終わり方なんて絶対に認めない。


「……間違ってない」


 か細く、しかしはっきりと呟いた。


『よかろう……覚悟、聞き届けたり』


 その瞬間。懐に入れてあった樹木の根のような物が突如発光し始めた。


『契約だ。我は汝、汝は我……己が信じた正義の為にあまねく冒涜を顧みぬ者よ! その怒り、我が名と共に解き放て! 例え丸太に繋がれようと全てを己で見定める、強き樹々の王の名を!!』


 すると発光は収束し、目の前には再び絶体絶命の状況が映し出される。


「オラッ、丸太を叩き込んでやるぞッ!!」


 けれども、奇妙な事にその絶体絶命の状況になっても どうしてか少し昂っている自分がいた。


 だから、僕は右手を掲げてその名前を叫ぶ。


「来い……ペンドラゴンッ!!」


 僕を起点にして黄金の暴風が吹き荒ぶ。その金色の正体を僕は感覚的に理解出来た。


「な、何だアレは……いや、まさか、そんな。これは丸木杉の花粉……ッ!?」


 風に舞う黄金色の正体―― それは杉花粉

 それもただの杉花粉では無い。これは樹木の王、丸木杉の花粉だ。

 右手に収束した黄金色の丸太を一振りする。軽い。まるで綿を持っているかのような軽さだ。

 これ ならどれだけ疲弊し切っていても全力をもって振り回す事が出来そうな気がする。


「僕が丸太至上主義を、ブッ壊す」


 意識を逃走から闘争へと切り替え、眼前の黒服を睥睨する。


「何だその金ピカの丸太は! 認めないぞッ! 断じてな! 結局、標準的なカラーリングの丸太が最高なんだよォォォォッ!!」


 渾身の力でもって振りかぶられた標準的な色味の丸太を黄金の丸太がいとも容易く受け止める。


「な、何ィ!? 俺の丸太がこんな安ピカ如きに……!?」


 そのまま黒服の丸太に向かって左の拳を叩き付ける。


「ば、馬鹿めッ! 極太の丸太に拳をぶつけたら痛いだけに決まっているだろう! 常識すら忘れたかッ!!」


「……でもその丸太、砕けてるよ」


 パラパラと木屑が舞い散る。それは僕の拳が丸太を砕いた事の証左。


「お、鬼だ。……鬼がいる!」


 丸太を砕かれた男はその場にへたり込んでそう口にした。

 ああ、そう言えば讃岐さんは言っていた。かつてこの村は『鬼の棲む村』だったのだと。常識ではあり得ない 膂力を持つ人間達の集う村。ならば今の僕ハ一匹の鬼と変わらないのかもしれない。


「決めるぞ、ペンドラゴン。花粉放出……ッ!!」


 丸太を天高く掲げる。

 それは一撃必殺の為の予備動作。中世の騎士道物語になぞらえたその必殺技の名前は――


「エクス……ッ」


 辺りを黄金の暴風が包み込み、やがてそれは一条の丸太じみた光の柱へと変化を遂げる。

 そして、天高く伸びた一本の丸太を躊躇い無く振り下ろす。


「マルタァァァァッ !!」


 夕闇すら呑み込む黄金の花粉の奔流が黒服達を押し流す。

 エクスマルター。それが、このペンドラゴンの最高にして最強の必殺技。


「あ、あれ。当たっても何も起きてない?」


「ところで、俺って何で丸太持ってるんだ? 正直重いし、何なんだ一体」


 その効果は強力無比。どう言う訳か他人を傷付ける事 無く対象の丸太至上主義を破壊する事が出来る。


「はぁ、はぁ、や、やったぁ……」


 粗方の黒服を片付けひと心地ついているとペンドラゴンは元の樹木の根っこに戻ってしまった。

 どうやらこ ちらも精魂尽き果ててしまったらしい。


「おうおう、中々気持ちの良い戦いっぷりだったじゃねぇか」


 不意に頭上から声がして上を見上げると、そこには朽木の姿があった。


「枯葉は助かったの? それに、讃岐さんは……」


 そう尋ねると朽木は「戦闘が終わってまず他人の心配かよ」と苦笑した。


「安心しろ。あのちびっ子は『AMT 』が保護して安全な場所に避難させてある。傷一つ付いちゃいねぇだろうさ。 讃岐さんってのは知らないが、柊にボコられた男なら回収して今は医務室にブチ込まれてる。大事にはなってねぇ筈だ」


「そうか……良かった」


「さて、改めて問うぜ、木本樹。お前はこれから『AMT』の戦士として俺たちと一緒に丸太至上主義をブチ壊す。それで良いんだな」


 その問いに首肯で答えると朽木はニッと猛々しい笑みを浮かべた。


「じゃあお前は今日から俺たちの仲間だ。『AMT』はお前を歓迎する」


「よろしく頼むよ」


 僕と朽木はどちらからとなく固い握手を交わした。

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