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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
皇女編
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お祖父様と嫁入り道具作り

 嫁入りに必要な準備は、ルシアが忙しく動いてくれている。


 私のする事といえば、ドレスの採寸と、シンダルシア王国の外交官と一度会ったぐらいだ。それもお祖父様とルシアが、私に必要以上接触しないように注意していて、私は微笑んで挨拶するくらいしかしていない。


 そんなわけで、ほとんどの時間、お祖父様の住まいでの2人きりでの授業が続く。

 現在はお祖父様に教わった魔法紋もほとんどが問題なく作れるようにになったので、普段着る服や持ち歩くハンカチなどに、使いえそうな紋を刻んでいる。


 威力の強い治癒魔法が発動するものや、助けを求める音を遠くまで届けるもの、強い光で目をくらませるものなどだ。


 あまり攻撃的なものを付けると、効果がバレた時に敵意を疑われる為、防御に徹する。


「火がブォー!と出るものが作りたいですわ」

 といった時に、お祖父様にそう教わった。


「第一、シンダルシア王国の騎士クラスならば紋など使わずとも其の方程度は焼き払われて終わりだ」


 怖っ。


「では、宮殿の私室にあったような防御結界魔法は持ち歩けない物でしょうか?」

「…難しいな。あれは部屋の床全面に刻んだ非常に大きな紋だ。その為条件設定を多く書き込むことができ、あらゆる魔法攻撃物理攻撃を反射させることが可能なのだ」


 確かに、キングサイズのベッドより大きかったものな。


「そもそも紋は、発動させる条件を設定する範囲が、紋とその素材そのものに限られる。紋から離れている場所で行われた動作を感知する事はできない。故にドレスに刻んだとしてもドレスに攻撃が届いてから反射させることしかできない」

「…それでは遅いですわね…。」


 槍にぶち当たり吹っ飛ぶ私を想像してしまい、うっとなる。


「後宮の私室が与えられ、使用人の目が厳しくないようであれば、その時に窓や床に刻んでみると良い」


 …使用人の目がない時か…あるといいな…

 紋が刻まれた素材に触れていれば範囲になるのなら、部屋の絨毯とかの一部に小さく刻めばこっそり出来るし安全圏も広がるかな?


 そう考えて、ふと尋ねる。


「…あら?魔法紋が素材を通して起動条件を感知できるという事は、物質は魔力を伝達できるということですか?」

「…ああ、そうなるな」


 お祖父様が少し驚いたような様子で頷く。

 ならば、と私は引き出しから針を取り出しペンのように持って見せる。


「魔力が物質を通すというのならば、このようにして道具を使って紋を刻むことも可能なのではないですか?」


 指先を使って描こうとすると、どうしても太くなりがちなので、ペンのように細い線がかければ、複雑な紋をもっと小さくできると考えたのだ。


 実験作業を始める手元を興味深そうにお祖父様も覗き込む。

 魔力を込めて針先から出すイメージで描くと、文字通り針のように細い線がかけた。


 やった!と思い、描いた紙をよく見ると、通常は魔力ぼんやりした魔力のオーラしか見えないはずの線が、薄く汚れたように可視化できた。


「ふむ…土魔法の量が多くなってしまったか?」

「え…いつも通りのバランスでやったはずです」


 最近は属性のバランスで失敗することはめったになかった。


「いや、この針は私が土魔法から鉄分を精製して作ったものだ。その魔力が影響したのではないか?」


 え、お祖父様お手製だったの?すげえ。


 私は土から鉄を精製することがまだできない。

『鉄』という意味の記号がないため、『砕く』『重い』『抽出』の組み合わせで近いものが出来る。但し不純物はかなり多く鉄と比べると脆い。通常は本職のものが直接魔法で精製するのだが、魔法でやる場合は、『重い鉄分』を『抽出』するという部分を具体的なイメージをもたなければならない。

 私にとって土から鉄を取り出すイメージは、小さな頃砂場で磁石を使って砂鉄を採ったあれしかない。磁石が魔法でイメージ出来ないからね!馬鹿でごめんね!


 まあそれは置いておいて。


「うーん、では物質を介するやり方はうまく行かないですわね…」


 属性に少しでも偏りがあると、正常に作動しないということは、嫌というほど経験した。


「魔法を使わず造ったペン状のものならばできるでしょうか…?」

「いや、ほとんどの物質はそれ固有の魔力を持っている。支持した現象を発動させる場合は紋によってそれを変質させているため、素材の魔力は問題にはならなかったのだが…」


 そうだったのか…。確かに布にしても紙にしても、どこかしらで魔法を使って加工されているのがこの世界だ。魔力紋が魔力を変質させることができるものとは、驚いた。ものすごく可能性に溢れた技術な気がす。


「其の方にはとにかく使える様にと先を急いだため、教えそびれた部分が幾つかあったな…」


お祖父様が少し反省するように呟いてから針を私の手から取り上げる。


「だが工夫すれば、其の方の望むものはできるやもしれぬ。一晩待て」


 そう言って自習を言い残して出て行ってしまった。なんと作ってくれるらしい。


 残った私は、魔法紋の工夫を考える。お祖父様が専用のペンを作ってくださるならば、色々試せるようにしたい。携帯型の防御結界魔法を是非実現させたい。


 ふむ…複雑な要素が多い点は記号を小さく描くことができればある程度解決できるだろう。攻撃に応じて複数の紋で対応することもできる。問題は紋から離れ、かつ物質でも繋がっていない場所の攻撃が感知できないということ。ある程度自分からの距離がある場所で攻撃を反射、もしくは消失させなければならない。ドレスごと吹っ飛んだり、顔や手などの露出部分に当たれば駄目だろう。


 …自動起動ではなく、結界の作動のみ手動でやれば良いか?

 私が紋に触れるなどの行動を条件にして、紋から5ルータ程度に何らかの攻撃を阻む結界を造る。という指示にすれば可能だ。


 …指示の要素が多すぎるな。

 結界をもっと簡易にしてしまうか。周りに強固な土の壁を出現させるのはどうか?比較的単純で安全そうだ。


 色々考えてお祖父様に見てもらうことにした。



1ルータ≒1.3m 魔法紋の記号専用用語です。


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