健康第一。
さてみんな。
健康を維持する上で不可欠なのが運動だ。
ゴブリンやらなんやら居るこの世界で生き残る為には、強く、逞しく、尚且つ健康的な生活。
これ理想。…に留めておくには勿体ない!
これを実現出来れば!
貧弱わんこなこの俺も!いつかマッマの様に家族の為にと獲物を持ち帰る日が来るはずなのです。
という事でとりあえず足腰を鍛えましょう。
幾ら健康になったと言っても逃げる為にも足腰大事。機動力も上がって疲れにくくもなる。
素晴らしい。
と意気込んでいた10分前。
ひたすら洞穴の入口から100メートル程進んで往復。これ既に…数えてない。
生後四日目にして体力作りと健康を目指す。
アレこれ俺頭良いんじゃねとか思ってました。
周り犬なのに。俺人の頭で考えてるんだからな、そりゃぁな、「比較的」頭良いわな?
…馬鹿じゃねぇの。と自分で掘った墓穴にダイブしましたとさ。
予想外の事件が!?
俺の真似をし始めた兄弟達!くそう才能dog達が努力したら俺が社会的に死ぬ!無能は無いまでも貧弱犬的な目で見られてる!!!
ぜ、絶対に負けられない戦いが…!!!
はい負けました。ええ負けましたとも。
予想通り?賭けてた?何その嬉しくない信頼。
未だにわんわんボディを上手く動かせない。
たまにもつれて転んだり。
その分動きが滑らかになってるのが実感出来る。
けど怪我汚れるんだよな。真っ白ボディが。
一匹だけ毛並み違う〜みたいな感じになってる。
そんな事を二週間。
それなりに動ける様になった。
マッマから狩りの時の動き方、ゴブリン狩りを遠くから見せてもらったり。食べれる木の実とか草とか。余程の事がない限り草植物なんて食べないけどね。けど知ってると知らないじゃだいぶ違う。
マッマから教わる事は全部頭に詰め込んだ。
コレは食べちゃダメだとか。コレは甘いけど痺れるとか。
狩りをするにしても集団で固まってる時は気をつけろとか、たとえ一匹でも仲間を呼ばれる可能性があるなら避けるか、極力一撃で仕留めろだとか。
二週間で色々教わった。
けどコレで最後って訳じゃ無いみたい。
「最後に獲物を一匹狩って来なさい」
最後にそう言われた。
言葉は交わせないけど、言わんとしている事は分かる。
多分これが「卒業の儀式」みたいな物だと思う。
これが終わったらマッマが出ていくって事も。
何となく兄弟達も察したらしい。
甘える声を出す奴もいれば任せろ!と言わんばかりの自信で駆け出す奴もいた。
少なくともマッマに不安を残させたまま去らせるのは嫌だった。
正直前世の記憶のせいでマッマが母親、というのは何となく違う、と感じていたし、もしかしたら向こうもそうだったかもしれない。
それでもご飯も、母乳も、知識も、技術も。
みんなと分け隔てなく平等に扱い、接してくれた。
だからせめてもの手向けとして…と。
俺はその場を走って離れる。
初めての狩り。
だけどそのプレッシャーは初めてだから、ってだけじゃない。
母を安心させる為、何より喜んで欲しいから。
大切な相手に自分の気持ちを伝える為に。
「絶対に負けられない戦い」のLvが。
それでいいのか主人公。