三話~神に祈って時を戻して~
「かゆっ、かゆいかゆい!かゆいーっ!」
「極端に言えば身体の代謝をものすごい勢いで加速させてるようなもの、かゆいのは当たり前」
そのままどことも寝るところが見つからず、結局お宿に入ったわたしはベッドの上でメディちゃんにとりおさえられていた。
入るなりお洋服を脱いで、傷だらけの背中を見せるとメディちゃんはすぐわたしをベッドに押し倒して、あのりかばりー…りかばりー…そんなアレでわたしの背中を治しはじめたんだけど……かゆい、かゆい!すごーく治ってるって感じはするんだけどすごくかゆい!ついでにくすぐったい!
かきたいってなる手をおさえつけて、無数の角ばったアームがわたしの背中をピカピカ駆け抜ける。わるいことされてないのにすごいわるいことされてる気がする!
「まあ感じなくすることもできるんだケド」
「はやくいって…」
「麻酔かけますねー」
メディちゃんがなんか、ちょっと安心する声色で言うと同時、ぴりぴり身体がしびれはじめる。
ひーっひーっふーっ、ってかゆさに耐えてたのがウソみたいに消えていって、わたしはようやくまともに息ができるようになってきた気が……あれっ、動けない。かゆみも痛みもなくなったけど、今度は首から上以外動かせなくなっちゃった。
これがおじいちゃんの言ってたカナシバリ?
「電磁麻酔、神経や筋肉を一時的にマヒさせるものだから…動けなくなる」
「はやくいって?」
「今日はどちらにしても休息して……生兵法は大怪我のもと、一見見た目はなおっても内側の傷は完全じゃないから、しっかり休んで肉体の再生力で治す必要がある……例えば骨を魔法でつなげても、強度はもとに比べて不十分だからまた折れやすい」
「はえー…メディちゃんものしり」
そういえばまえ、罠にかかって骨が折れたときは治してもらったけど調子が悪かったなあ。
…魔法?
「このリカバリーバイザーも元のアタシの機能にあったものだけどかつての、テクノロジーをもとにしたものとは違う。より魔法的な要素で治療するようになってる…アタシの機能を、魔法で補助してるみたいっていうか……魔法、知らない?」
「わたしの脚をなおしてくれたヒトは、回復のまほーが仕えるヒトだったって聞いたよ」
「魔法は地脈から吹き出す大気中のマナを燃料に使う現象のこと…アタシの時代では、少なくともそうだった。ヒトもヒトでそれぞれ適正があって、それに応じた”方向性”の魔法を使える。回復とか、破壊とか、幻惑とか…そのなかからまた各種属性にちなんだものに分かれるから千差万別」
「はえー……わたしも何か、つかえないかな~火を噴いたり」
「レラは”光の爪”が使えるって聞いた、肉体強化みたいに思えるケド…アタシはちょっとわかんない、魔法工学は専門じゃない」
「でもでもわたしよりすっごく物知り、メディちゃん頭いい!」
「…病院施設ではヒマになったヒトたちがアタシ達に話しかけたりしてたり、あるいはヒト同士の話を聞いてたりしたから……元からインプットされてたデータもあるケド。独立思考型のユニットは性質上、辞書や各分野の専門知識が入ってる」
いっぱいヒトと接する機会があったんだなあ。
メディちゃんは、”回復”なのかな。
「そう、おそらくそう。でも本来アタシ達キカイにマナを行使する能力なんてなかったから……この姿になって使えるようになった、この身体の能力。だから今のアタシは元のアタシとはまったく別の存在に近い」
「そんざい、とかキカイ、とかむつかしくてふええ…ってなりそう。
でもメディちゃんはきっとメディちゃん!わたしもわたしなんだから!
おなかがすいたらご飯食べれば幸せになる!」
「ふふっ、レラは本当に前向き……いまは後ろ向いてるケド。でも考えてなんとなくわかった、とりあえずアタシが最優先すべきなのはこの時代のこの地における情報収集、常識も国家も技術も、おそらくあらゆるものが異なる、だから常識をすり合わせて順応する必要がある」
「じょーしき」
「アタシ達が常識外れの存在だから、せめて近づけるようにする必要がある。剣を持って歩いてる人間なんてアタシの時代にはいなかったから、技術は少なくともかなり退化してる、警備兵も銃を持ってなかったし……」
なるほどなるほど……わたしで言うならこの耳も、この尻尾も、ほかのヒトにはないものだからね。
メディちゃんは言うと、終わったよ、とわたしを仰向けにして枕に頭をのせてくれた。それから自分も寝転がるとわたしの隣に並んだんだ、だぶるべっどがひとつの古めかしいお部屋が二人で泊まるなら一番安かったから、寝る時はいっしょになるのだ。
「お宿はちょっと高いから、まいにち泊まるならお仕事探さないとねー…野宿でもわたしはいいんだけど、ああいうヒト達が夜に出てくるなら屋根の下でねたいって気がする、する」
「数字は10進数基準、通貨単位は電子クレジットではなく金本位制の貨幣制度をベースにされている。銅貨をかつての10クレジットとするなら大銅貨が100、以後銀、金、白金となるにしたがって桁がひとつずつ増えていく……わかりやすくていい切り分け、場合によって硬貨を半分に裁断して半分の価値にするっていうアイデアも歴史に則っている」
「計算はむつかしいからメディちゃんにまかせます、わぅわぅ」
わたしが持ってるのは金のお金、金貨が5枚、銀貨が8枚、あとは銅のおかねじゃらじゃら。
おかねもちだ、えっへん、でも一泊ここで泊まるだけで銀貨を4枚ももってかれちゃったから、このままじゃあお金がなくなっちゃう。ここにもしばらくいるんだから、明日になったら何かできることを探さないと。
わたし何かできるかなあ、畑仕事と狩りなら得意だけどここにはなにもないし。
「アタシを見つけてくれた恩もあるから、病院みたいなとこがあるならアタシが養ってあげてもいいケド……医療行為はヒトの営みの中では必須、文明レベルがどうであっても必ず需要が発生する、稼げる」
「そ、それはだめ、なんかだめ!」
そういうの”ヒモ”っていうんだって!セドラちゃんがいってた!
あれでも男のヒトが女の子に養われる時だよね?あれこっちはどうなるんだろ。
レラあたまこんらんですわうわう。
「うぎぎー」
「無理に動かないで、しっかり寝て。
…それで明日になったら、アタシ行きたいとこがある」
「メディちゃんが?」
「うん、えっとね…」
図書館、ってとこらしい。本がいっぱいあって好きに読めるんだって!
すごーい!一日そこで過ごしててもいいの!?ただ!?ただなの!?
「おおまかな情報の収集にはちょうどいい、これだけの街ならあっていいはず。
ないならないで、ヒトに聞ける場所があるといい……教会、とかどうだろう。
教会は昔から現金だから、少し寄付すれば付き合ってくれるはず」
「現金」
「お金が大好きってコト」
天使さまを信じているのに、お金が大好きなんだ……天使さまがお金好きなのかな。
でも遠目に見た、あんなおっきな建物をたてるにもお金はいっぱいいるよね。
お金っていうのがすごい便利なのはわかるけど、ヒトの世界ってなんでもお金が必要ですごくめんどくさそう、頭ぐるぐるしちゃう。
「ここは広いからできるだけ一緒に行動したほうがいい。
どっちを優先するかはレラに任せる…」
「わ、わう! …わぅ」
「…だいぶ眠そう、大丈夫?麻酔効きすぎたかな」
びりびりがちょっとずつ頭にもまわってきて、なんだか眠くなっちゃう。
まぶたが降りていく中、メディちゃんが自分の膝にかけてたおふとんをかけてくれた。
やわらかであったかい、メディちゃんあったかい、じんわりぽかぽかであたまぐるぐる。
寝ていいんですね、寝ろってことですね。
おやすみ、わぅわぅ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シルバーファングとして生きていたときの癖で、わたしは日光が射すとそれだけで起きちゃう。つまり夜明けがわたしのおはようで、いまはそこからヒトの人生、顔を洗って服を着て、髪をとかしておはようございます。ヒトは起きるとやることが多くて大変だなあって思いながら、毎朝ちゃんとこなしてた。
メディちゃんはしらないよね、じゃあわたしがおしえてあげる。
って寝てるメディちゃんをゆすってあげたら、くぐもった声で返事をされた。
「あと2時間54分…」
「えっ、あと5分とかじゃなくてそんなに長いの…?ちょっとよくばりじゃない?」
「病院の診療は朝8時から……今は業務時間外…」
「だめだめおきておきて、お日様出てるよおはようの時間だよわぅわぅ」
ゆすってゆすってそれでも起きないからお布団をひきはがして、メディちゃんを窓から射すおひさまに晒す。わぁ、やっぱりわたしと比べてすごいオトナな身体だぁ……わたしもおっきくなったらこうなるのかな?
わたし達ヒトになったモンスターは、寝ているときは服が解けて裸のままになる。なんでかはわからないけどたぶん、ヒトの姿になるのはわたしの力でできてるから維持できるけど、お洋服とかにはもっと別のものを感じるから…きっと、メディちゃんが言ってた”マナ”ってやつ、だから気が抜けて意識のない寝てるときは解けちゃうんだと思った。
疲れ過ぎたり、ケガしすぎたりしたまま寝るともとの姿に寝てるうちに変身しちゃうこともあるから、ヒトの姿を保っておくのも少し体力がいるみたい、うっかりしないよう気をつけないと。
そういえば、わたし達みたいなのをどう呼べばいいんだろう。
ヒトモンスター?モンスター人?
心はそのまま、身体だけヒトになったんだから……うーん。
「………アニマ」
「えっ?」
背を向けてお日さまを嫌がってたメディちゃんが、ぼそりとつぶやく。
そのままごろんとこっちを向くと、なにかに抵抗したような葛藤のあとのっそりのっそり布団から起きた。
うわっすごい目つき、寝起きのメディちゃんこわい。
「古い言葉で”魂”を意味する。肉体はヒトなのに魂はそのままの存在……ヒトに近づいた魂、アタシ達にいいと思う……昔どこかの物語でそんな名前を見た。響きが気に入らないならほかにも、アルマ、ソウル、ゼーレ、タマシイ、スピリット……いろいろある」
「アニマ……」
「……とりあえず、まあ」
「まあ?」
大きくあくびをして、目をこすりながらメディちゃんがお洋服をまとう、そうだわたしも着なきゃ、このままじゃお部屋出れないや。
「……おなかすいた」
「たべいこっか」
「…うん」
お宿を出るころには、横合いから射す光につい目を細めちゃうような、そんな天気になっていた。
わたしたちがいるのは北区の端、”すらむ”……からあのびょーいんの廃墟をはさんだ南側で、南のほうにあった中央通りと比べると少しさびれて人も少ないし通るヒトたちも身だしなみが汚れてるけど、十分にヒトの街の商店街って感じだった。
メディちゃんがいうには朝早すぎるってことだけど、そうでもないよほら、お店がもう開いてておいしそうな香りがただよってる。ダンシャクのスープかな?うふふ今日はこれで決まり、おじさんおふたつくださいな。
「ごめん準備中でねぇ、また一時間くらいしたら来てくれれば」
「あっ、は、はぁい……」
お客さん、閉店だよっ。
って感じに追い出されちゃって、どこもかしこもそんな感じ、通りもヒトが少ないしまだみんな準備中みたいわぅわぅ。わたしもおなかすいたなあ……緑のいもむしでもいないかな、隠れて食べればいいよねいいよね。
そうしてると、頭の”ばいざー”を下ろしてあたりをキョロキョロしてたメディちゃんに呼びかけられた。
「レラ、あそこなら」
「どこどこ!?ごはん!」
「……配給、だと思う。格好から推測するにおそらく教会の慈善事業」
「教会……あっ、傘の持ち主さんの」
商店街を少し歩いていると見つけたちょっと大きな建物、三角屋根で、てっぺんには羽根の生えた十字架みたいなシンボルが飾られてた。まっきんきんだ、きっとすごーく高いやつだ、じゃあやっぱり教会ってお金が好きなんだっていうのはほんとなんだ…。
でも見てみると、その入り口で腰の折れた人の良さそうなおばあさんが子供やお年寄りや、足のない人とか、そんなヒトたちにパンを配ってた。ごはんくれるの?
「いいヒトそう!」
「無償奉仕は昔から教会の役割……神に祈り、善行を積むことで将来は天国に行くことができると信じられている。事実であり天国や霊界が存在するかは幾度の検証がされたが特に結果は得られず、でもヒトは思い信じ込むことに救いを求めるものだと…これはプラシーボ効果に近く、重病患者の……」
「…”かみ”?天使さまとは違うの?ところでじぜんじぎょーってなぁに?」
「天使は神の遣いのはずだケド……今は事情が違うのかな。
慈善事業ってのは善意で行う事業のこと、まんまね…あれも、貧しいヒトたちに食事を配っているんだと思う。弱いヒトに施しをすることは好意的に見られるし、善意あるいは宣伝目的で富める者が教会に寄付することもある……Win-Win」
「うぃんうぃーん」
天使さまのその上にもっとすごーいのがいるんだ……あとでメディちゃんにきかせてもらおう、でもじゃあ、ここに並んでるのはあんまりいい暮らしをしてないヒトたちなんだ。それだとわたし達が並ぶのはだめなんじゃないかな、ってメディちゃんに言ったら、『好意的には見られない』って返ってきた。
でもでも困ってるヒトがこんなにいっぱいで、しかもおばあさん一人だと大変そう。
パンはもらえないかもだけど、でもそのまま後ろを向くのもなんだかイヤな気分だった。
……それなら、好きになってもらえることをすればいいよね?
「お手伝いしよっ!」
「あっ、ちょっと、朝ごはん…」
わたしは列の横をぎゅいーんと走り抜けると、パンを配っているおばあさんの横から声をかけた、すいませんおてすうかけます。
「おばあさんっ!」
「は、はいはい、ええっと、今施しの最中だからまたあとで…教会にご用なら他のシスターが中にいるからそちらに…」
「わたし手伝います!」
「あら、あら?」
「ひとりで大変ですよねっ!わたし達もパン配ります!」
おばあさんはおめめをぱちくりして、ちょっとだけ手が止まっちゃう。
すると次にパンを受け取る順番だったヒトがはやく欲しいのかこっちを見つめてきた。
はい、どーぞっごめんなさい!パンをカゴから手にとって渡す。
にっこりにっこり、おじいちゃんの教えひとつ、笑顔はヒトを幸せにする!
「ありがとう犬のお嬢ちゃん、大事に食べるよ」
「おおかみです、わぅわぅ!」
「……なんだとおもったけど、いい子ねえ、じゃあお手伝いお願いできるかしら?ひとりひとつ、ちゃんと顔を覚えて同じ人が受け取らないようにお願いね。最近の子はしっかりしてるのねえ、天使さまもお喜びになるわよ。…あとでお嬢ちゃんにもひとつあげるわね」
「わぅ!」
「ごはん…」
「はいっ!食べたらメディちゃんも手伝って!」
「もぐっふ」
メディちゃんのお口にパンを突っ込んで、わたしはそのままパンを配る。
ちょっと硬くて水がほしくなるパンだ、安っぽい、きのう屋台で買ったものより質は悪そうだった。
「はいっ、どうぞ!」
「今日はお手伝いさんがいるのかい?可愛いシスターだ、ありがとう」
「どういたしまして!」
「ところであなたどこの子?私はマザー・オーキス、この聖天使教会のシスターたちのまとめ役をしているわ。どこかで会ったことは……ないと思うけれど」
「レラ、レラです、ひとを探して旅してます!こっちはメディちゃん!」
「…どーも」
「あらこんな歳なのにずいぶんと苦労してるのねえ……ありがとうね」
オーキスさんはやわらかそうな笑顔でわたしに微笑みかける、その間もきちんと配給を止めてなくて、二度並んだらしいヒトもちゃんとぺしって手をはじいてた、すごいなあ、もうずっとずーっと並んでるのにみんなの顔おぼえてるんだ。
ちょっとペースはおそいけど、わたしもがんばって配って、そのたびにありがとうって言われる。ぶっきらぼうに受け取ってくヒトもいたけど、いろんなヒトがいるよね、そうしているとふと、パンをかじってたメディちゃんがわたしの番のヒトを呼び止めた。
っていうか手をつかんだ。
「あなた」
「は、はいっ!?」
「ケガしてる」
メディちゃん、ケガしたヒトを見ると放っておけないんだ。
その男のヒト、手のとこを切ってて、傷がのざらしになってて血がちょっとずつ流れてる。
これで死んじゃったりしないだろうけど、でもすっごく痛そうな傷だった。
「ちょっと診せて、こっちに来て……切り傷、新しい」
「さっきそこの壁に寄りかかった時にさ、飛び出してた釘で切ったんだ。でも大丈夫だよ、こんなもんツバでもつけて塞いどきゃそのうち」
「この周辺の衛生環境では破傷風等の病気の危険がある、いいから手を出して。
パンならあとでも食べられるから、ほら手、ほら逃げないほら…リペアバイザー起動」
もぐっ、あぶっ、メディちゃんが残ったパンのかけらを私の口に押し込んで、また回復の魔法を使おうとする…メディちゃんの味がする。でも今度はあのときのいくつものキカイの腕のやつとは違った、まるで時計みたいな文様が浮かび上がってその、ケガをしたところの上に当てられた。
今度は違う回復の魔法なのかな?
メディちゃん、ほんとにいろんなことができる。
パンを配給する手は完全にとまって、歩いてたヒトも、並んでたまわりのみんなも釘付けになる、もちろん、オーキスさんもあらあらあら、って目をまんまるにして。メディちゃんはもう、この場所の主役だった。
「…ケガをした時間は?」
「ほんの数分前だったと思う…ああ待て、回復魔法か?見たことが…」
「“直す”、リペアバイザー始動」
「ちょ、ちょっとちょっと!」
男のヒトが止めるのを制して、メディちゃんが魔法を使う。
すると――― まるで時間が”逆行”するみたいに、腕の傷がみるみる治っていった。
傷をふさぐとかじゃなくて、最初からそうだったみたいに。
男のヒトは手が離されると、自分の手を表にしたり裏にしたり、見て目を丸くする。だってそうだもん、横でみてたわたしだって目をまんまるにしてるから。
「か、回復魔法…?」
「時空技術の賜物、結局戻せて10分だケド……物質の情報を読み取って少しだけ戻せる」
「あんたすごい使い手なんだな!ありがとう! …これ少しだけど」
「別にお金なんて…」
いいから受け取れ、って言われてちょっとの小銭をメディちゃんの手元に男のヒトが渡す。それは昨日わたしが食べてた揚げバターも買えないようなお金だったけど、感謝の気持ちだってことは受け取ったのか、メディちゃんは軽く微笑んで『ありがとう』って応えた。
ありがとうの交換、すごーく好き。
野生で生きてたころは互いに群れは役目をはたして、それはあたりまえだったから。
ヒトとヒトのココロがつながってく、そんな気がする。
「メディちゃん、そんなこともできたんだ…すっごーい!」
「本来は航空宇宙産業で開発されたモノ、これがあるからアタシたちは防御機能が多い」
「こーくー」
「なんだ?回復の奉仕もやってるのか?」
「わ、私の顔の傷も治せる!?」
「さっき擦りむいたところが…」
「えっ」
だんだんあたりが騒がしくなってきて、みんなが列からこっちへ顔を出してきた。
そりゃそうだよね、わたしだって驚いたんだもん、メディちゃんすごい!
みていたヒトたちが列をなしてたから、前から後ろへ、次々に話が伝わっていく。見えないところにいたヒトたちまで前からどんどん話が伝わっていくから、耳をぴんと立てて声を聞けば、どんどん話に背びれ尾びれが加わっておっきくなってって、やれ折れた腕が治るとかどんどん話が膨らんで行ってた。
「無い足が生えるっては言い過ぎだよぉ」
「10分以内なら可能」
「えっ」
あわわ……メディちゃんのほうに並ぶ列ができてる。
でもメディちゃん、すごい乗り気、すごい仕事をするヒトの目だ。
「可能な限り処置する、ヒトの治療がメディカルユニットの役割。
エネルギー補給が必要だからレラ、アタシの口にパンと水入れて」
「まあまあメディさん、あなた回復魔法も使えるのね!若いのに才能があって…」
「マザー、列の整理を、アタシはこういうのに慣れてない」
「はいはい、こちらに一列に、一列ですよ一列に!」
あわわ、オーキスさんまで乗り気になってる!
わ、わたしそういえばごはんたべてない!言い出しっぺはわたしだけど!
おまけにパンの列がぜんぶわたしに来てる!長い!多い!わ、わん!
「た、たすけて…!」
笑顔、笑顔もおなかがすいてちからがでない。
結局噂が広がり続けて、お昼ごろメディちゃんがとうとうダウンするまで列は続いた。
(´・ω・`)アルマちゃんたちをあいして




