番外編:夢のダンジョン(6)
「……ただいま。戻りました」
深夜。宿の扉を幽霊のような足取りで開けた僕は、そのまま床に
崩れ落ちた。頭には「ぷるぷるスライム・カチューシャ」が載り、
手には「限定・魔王城クッキー」の派手な袋が握られている。
部屋の椅子に踏んぞり返っていたレオンさんは、僕の無惨な
姿を見て、堪えきれないといった様子で吹き出した。
「……ぶふっ、はははは! なんだその格好は。随分と
楽しんできたようじゃないか、ハヤト」
「笑いすぎだよレオンさん! ひどい、ひどすぎるよ!
僕が想像してたのと全然違うじゃないか! あんなのダンジョン
じゃない、ただのあざとい観光地だよ!」
僕は立ち上がると、今日一日の不満を爆発させた。
魔物は仕事モード、宝箱はグッズ売り場、ボスは予約制。
僕が熱弁を振るうのを、レオンさんはニヤニヤしながら眺めている。
「ふん。この世界のダンジョンなんてのは、どこもあんなもんだ。
魔物をすべて倒して踏破してしまえば、そこはただの空き家だ。
放置しておけば浮浪者や犯罪者の根城になるだけだからな。
なら、整備して客を呼ぶのが一番効率的な跡地利用だろ」
「跡地利用……。ロマンもへったくれもないね……」
「他にも牙を抜いた魔物を集めた『魔物園』や、古戦場を改造した
キャンプ場なんてのもあるぞ。……で、どうだった。
ミナとのデートは、楽しめたか?」
「……。えっ?」
思考が停止した。今、レオンさんはなんて言った?
「……デート? え、ミナさんと二人きりで、一日パスポートで、
一緒にランチを食べて、パレードを見て……」
脳裏に、今日一日の光景が別の意味を持って駆け巡る。
「……あれって、ガチのデートだったのおぉぉッ!?」
僕の絶叫が夜の宿に響き渡る。
「ようやく気づいたか、このニブチンが」
爆笑するレオンさんと、真っ赤になって固まる僕。
僕の異世界ダンジョン初体験は、ロマンの崩壊と、
あまりに甘すぎる「落とし穴」で幕を閉じた。




