第23話:絶体絶命と、黄金の防壁?
森の最深部、開けた広場。
そこには、全身を岩石のような鱗で覆った
巨大な岩トカゲ(ロックリザード)が待ち構えていた。
「……。よし、行け。
まずはその『メロンパン・シールド』を試せ」
「……。
う、うす! ……いくぞッ!!」
ハヤトは不格好なパンの棍棒を振り回し、
果敢にトカゲの懐へと飛び込んだ。
だが、エリアボスの実力は想定外だった。
「ギシャアアアッ!!」
トカゲが巨体に似合わぬ速度で尾を振り抜く。
ハヤトは盾を構えたが、衝撃で十メートル以上も
吹き飛ばされ、背後の大木に激突した。
「ガハッ……! ……。
つ、強い……。盾が、砕けちゃった……」
「……ッ。しまった、威力を読み違えたか!」
俺は即座に召喚の印を組もうとした。
だが、トカゲは止まらない。
倒れ込んだハヤト目がけ、
その巨大な顎を全開にして、死のダイブを敢行した。
「ハヤト、逃げろッ!!」
ベルが影から飛び出し、火球を放つが間に合わない。
逃げ場のないハヤトは、迫り来る巨大な影に
無我夢中で両手を突き出した。
「(……。来ないで! 僕を守ってくれえええッ!!)」
――ドォォォォンッ!!!
激しい衝突音と共に、土煙が舞う。
俺は最悪の結果を覚悟したが……。
「……。
…………は?」
煙が晴れた先で、トカゲが仰向けに転がっていた。
ハヤトの目の前には、
高さ三メートルを超える『巨大なメロンパンの壁』が、
地面を陥没させるほどの質量でそびえ立っていた。
「……。
メロンパン・バリケード……?」
ハヤトが呆然と呟く。
表面はダイヤモンド並みの硬度。
内側は衝撃を完全に殺す、超弾力のふかふか。
トカゲは自慢の突進を完全に跳ね返され、目を回している。
「……。
(……。あいつ。死の間際の『執着』で、
ついにパンで魔法障壁に匹敵する防壁を造りやがった)」
俺は冷や汗を拭い、
トカゲの隙を逃さず影の刃でトドメを刺した。
「……はぁ。……死ぬかと思った……」
「……。
ハヤト、お前な。……褒めるべきか呆れるべきか。
……。
さあ、立て。レベルアップの音、聞こえただろ?」
俺は巨大な『防壁パン』を背に腰を抜かしている
史上最高にシュールな勇者を、
なんとも言えない表情で見下ろすのだった。




