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メイちゃんは護衛になる

「メイちゃん、今日の挑戦者はどうだったんだ?」

「雑魚ばっかりだったー」


 斧槍と手斧の手入れをしながら、事実を述べるように淡々と答えたメイは、鈍色の輝きを取り戻した刃先を見て「よし!」と壁に掛けた。


「次の私達の出番はいつになるのやら」


 そう言うのはヴァンパイアの男。分身を使って、時には下層のフロアボスとして、時には上層の一般エネミーとして座している。

 直接戦わないのは、どうにも他者の生き血を吸うとか、太陽が苦手だとかいう特性は、蘇生を司るような神様とは頗る相性が悪いからだった。

 それに対し。


「……それ、私に死ねって言ってる?」

「いやいやいやいやっ!」


 殺意すらあるような声で聞いてきたのに、慌てて弁明する。


「たっ、退屈なだけさ。それにメイちゃんは死んでも死なないだろう。もう何回生き返ってる?」

「7回だけど、才能があるって言っても死にたくないのは変わらないんだからね?」

「……私達からしたら、余程死にたがりだよ」


 7回も死んでいるのに、さも当然のように次の日もばっさばっさと挑戦者を切り飛ばしていくメイの事は、ヴァンパイアからしたら余程に異常だった。

 自分の方が種族としての位が高いとしても、一人で戦ったら3割はまず負けるであろう魂の質(レベル)の高さを感じている。

 ついでに言えば、生き返りやすい僧侶の素質まで兼ね備えていて、簡単な傷なら治せてしまうどころか、自分のような実体を自由に変えられる相手にも通じる攻撃手段まで兼ね備えている。

 とりわけ今居る、得意な搦手を活かせる事もないような狭い空間で、メイに襲い掛かられたら……きっとほぼ何も出来ずに殺される事だろう。


 ぱちんぱちん、と音を立てて鎧を脱ぐメイ。

 ほぼ裸になって簡単な布ばかりを身に纏う。


「ん〜〜っ」


 側頭に生える太い角を避け、腕を高くに伸ばして背伸びをするメイは、言ってしまえば色んなところが丸見えである。

 首筋から腋から、布切れでは到底隠しきれない乳房から、脇腹から太腿からふくらはぎまで。強い雌の恵まれた肉体、飛び跳ねる柔軟性を兼ね備えながら、その斧槍であらゆるものを断ち切ってしまう強靭な肉体がとにかく露わだ。

 ミノタウロスは種族全体として相当な恵体であるからか、里では雄雌共に裸で居るのも珍しくないというが……高貴さを誇りとまでするヴァンパイアからすれば、どうしても破廉恥で目を隠してしまう。けれど覗いてしまう。


「それで、明日からまた休み?」


 メイが唐突に聞くと。


「あ、ああ。それを伝えに来たんだ。

 この頃挑戦者も少ないし、20日くらいマスターが在庫補充の為に色々出回ってくるってさ」


 在庫とは、ゴーレムの素材や精霊の依代となる宝石、宝箱の中身等々……。


「20日かぁ……どうしようかなあ。

 里帰りには短いし、かといって職場でのんびりしていても飽きそう。

 マスターに着いていっても足手纏いだろうしなあ」

「マスターは喜ぶと思うけどな。

 なら、街に行ったらどうだい? 徒歩でもここから5日くらいで行けるだろう。

 同じミノタウロスも居るはずだ」

「私、田舎育ちだからそういうのに縁がなくて……誰か一緒に行ってくれないかな?」

「そうだな……あっ」

「?」


 良い事を思いついたと言うようなヴァンパイアの男のことを、メイは訝しげに見ていた。


*


「……弔わなきゃな」


 夕暮れ。

 陰鬱な気持ちで、素寒貧な状態のパーティ。大楯持ちの手にあるのは唯一残った戦士の耳飾り。

 リーダーの戦士だけ、生き返る事が出来なかった。

 脱出用のスクロールも持っていた。だから、誰かが死ぬとしても全滅するだなんて思ってもいなかった。

 財産も装備も大半を失ってでも蘇生代に充てて、そして戦士だけ蘇生に失敗して、体は塵になって消えていった。

 帰るにせよ、武器も防具も大したものはない。最寄りの街までには何日も掛かるし、その間にはこのダンジョンに挑む為の素質を試すような厳しい自然が待ち構えている。

 そんな、ダンジョンの外で呆然としている一行に対して声を掛けたのは。


「お客さん方ー、帰路にお困りですかー?」

「んなっ……!?」


 ヴァンパイアの男と、パーティを全滅させたミノタウロス。


「警戒しないでくださいよ。私達も他のダンジョンと変わらない、ただの従業員なんですから。

 ダンジョンの外じゃあ、敵じゃないですよ」

「……」

「それで貴方達、ここから帰るのに困っていますよね? そんな貴方達に提案です。

 彼女を護衛として連れて行きませんか? いやまあ、ウチのダンジョンはちょっと訳あって明日から暫く閉鎖するんですが、その休暇中に彼女は街に行きたがっていて。案内役として連れていくなら双方無料で良いですよ」


 困惑するパーティの、盗賊が絞り出すように返す。


「…………信用、出来ない」


 それに対し、ヴァンパイアの男は、じゃらりと首輪を人数分。


「言われると思ってましたので、こんなものも。

 契約道具です。契約内容を反故にしたら首が千切れ飛ぶ」

「……本物か?」


 疑念を抱く盗賊に。


「本物よ」


 魔術師が返す。そして、大楯持ちが苦々しい顔を隠さないで言った。


「……………………契約する。どのみち、帰れないと、俺達全員にも未来がないんだ」


 ヴァンパイアの男は、明るい顔をして。


「なら、契約成立ですね!

 このミノタウロスのメイちゃんと、街に行きたい方が他に居ましたらそれも護衛として同行します。

 貴方達は街に無事に辿り着ける。

 メイちゃん達は、街まで迷わず向かう事が出来る。

 それぞれを対価に契約し、この首輪を各々嵌めて貰えれば契約です!

 では、明日の早朝まではそこでお待ち頂ければと思います」


 矢継ぎ早にそんな事を言って、ミノタウロスと共にダンジョンの中へと去っていった。





「……………………メイちゃん?」

毎週金曜17時になろうで投稿されている500話超えの小説のメイちゃんに似ているって言われたら否定出来ないんですよね

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― 新着の感想 ―
半月とちょっとの期間の間掛けて在庫確保の為に各地を行脚せねばならぬたぁ、ダンマスの迷宮運営は中々に大変そうナンダナァ⋯(白目&涙目) > 毎週金曜17時になろうで投稿されている500話超えの小説の…
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