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メイちゃんはフロアボス

https://x.com/ExpiredGoblogna/status/2041113545513849047

のイラストを見てポンポン思いついたもの。

 薄暗い石造りのダンジョンに一つ、静かな吐息が響く。

 それは、牛の獣人たるミノタウロス。

 人より一回りは大きい体躯を持つそれの呼吸はとても深く、とても長い。

 要所を守るばかりの鎧。大して鍛えなくとも、人の身など軽く捻り潰せる恵まれた肉体。

 知性も人に劣らず、戦闘において言えば人が勝る事など早々に難しい。

 それは目を閉じ、得物である斧槍を抱えるようにして立ったまま、挑戦者が現れるのをただ待っている。

 そして……静かな呼吸と共に上下する胸には、胸当てに包まれて立派な一対の乳房がたわわと実っていた。


*


 ダンジョン。

 来たる災厄に備える為と建設された訓練施設。

 ここもその一つではあるが、今風の死んでも確実に蘇生出来るというような生温い保険処理は効いていない、かなり実戦に重きを置いている。

 その、21層まである塔の、14層目。

 そこに足を踏み入れた、人間を主とした一つの混成パーティは、今までの雰囲気とはまるで異なるその異質さに緊張を露わにした。


「……噂通りだな」

「ええ」


 盗賊に対し、魔術師が返す。どちらも周囲の気配を察知するのに長けている。

 生き物の気配は、たった一つ。どこかに潜んでいるミノタウロスが一匹。

 罠にせよ敵にせよ、数に重きを置いて襲ってきた今までの階層とは全く異なる。

 それなのに空間は迷路として入り組んでおり、死角がとにかく多かった。


「じっとしていても仕方がない。行くぞ」


 リーダーの戦士が言うと、一行はじりじりと進み始める。




 配置されていた宝箱を、罠を避けて開錠する。保険処理の効いていないダンジョンなだけあって、中にはかなり質の良さげな装備品が入っていた。

 持ち帰れなければ意味もないが。


 罠を察知して、試しにと一つ、遠くから起動させてみた。

 ずどん! と落ちてきた岩の塊は、噂された通りに、陰湿さなど微塵もない純粋な殺意で溢れていた。

 あれをまともに喰らえば、体は完全に潰れて蘇生も危うくなるだろう。


「やっぱり噂通りか」


 盗賊が改めて言った時。

 数瞬でも、その衝撃にパーティ全員の意識が罠の威力に向いた時。

 ミノタウロスは姿を現した。


 衝撃に合わせて走り、手斧を手に取り、投擲。

 罠から最も遠くに居た魔術師が、気配に気付いて口を開く。


「き」


 どずっ。


「た……」


 避ける事も許されず。

 体を貫通する勢いで突き刺さった手斧に、魔術師は何も出来る間もなく崩れ落ちた。


 ミノタウロスはそのまま斧槍を両手で構えて駆けてくる。

 不意を突いた唐突な襲撃に対しても、すかさず前に出た大楯持ち。

 それに向けて、そのミノタウロスは斧槍を高くに掲げた。


「……うおあ」


 すぅぅ、と静かながらも大量に鼻へと吸い込まれる空気の音。

 鎧がみしみしと音を立てるほどに膨れ上がった全身の筋肉、それから胸。

 次の瞬間には全力で振り下ろされている斧槍。

 今まで見てきた何よりも破壊的な……受け止められないと直感的に理解してしまう一撃。

 けれど、体に染み付いた動きは、もう耐えるしか出来そうになかった。


 ズンッ!!!!


 無言のままに振り下ろされたその斧槍は、重厚な金属で覆われているはずの大楯を、まるでバターのように断ち切り、そのまま床をも深く切り裂いた。


「い゛、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!??」


 腕も切り飛ばされた大楯持ち。


「おおああ゛あ゛!!」


 しかし振り下ろしの隙に目掛けて、自らを鼓舞しながら両手剣を振るう戦士の一撃は……ただ空振るだけに終わる。


「おいおい嘘だろっ!?」


 ミノタウロスは身軽だった。

 雄と異なりしなやかさを併せ持つその肢体は、叩きつけの反動で飛び上がり、両手剣の一撃をするりと避けると同時に、叫ぶばかりの大楯持ちを飛び越える。

 そして後ろで弓を構えていた盗賊と、前衛に加勢の祈りを唱えていた僧侶の目の前へと降り立った。


 矢が放たれるも、ミノタウロスは腕で受けつつ、斧槍を横に薙ぐ。

 人より長い手足。ミノタウロスの体躯ほどもある柄の長さ。

 僧侶は何も出来ずに、首を刎ねられた。

 盗賊は身を伏せ避けるも、間髪入れず飛んできたただの蹴りを避けきれず、壁にまで叩きつけられて動かなくなった。

 そして、振り返れば。


「う、嘘だ、嘘だ嘘だうそだうそだああああああああ」


 最早発狂するかのように、自棄になって大剣を掲げてきた戦士。

 ミノタウロスはそれにも冷徹な目で、振り下ろされるよりも先に斧槍の先端を、その首へと貫いた。


*


 最後に絶望する顔の大楯持ちも仕留めて、腕に刺さった矢を抜く。


「癒せ」


 端的に呟けば、腕の穴は簡単に塞がり、血も止まった。

 それから全員の死体を、秘密裏に存在する地上への転移陣へと投げ捨てる。運が良ければ蘇生されるだろう。どちらにせよ、代金はふんだくられるが。

 そして、その転移陣に向けて。


「今日は終わり?」

「うん。メイちゃんも戻ってきて良いよー」

「はーいっ!」


 転移陣の先から返ってきた声に対し、先程の虐殺と同じ個が発しているとは思えない、野を駆ける少女のような声でメイと呼ばれたミノタウロスが返事をすると。

 ひょいと転移陣に飛び乗って、その日の業務を終わりにするのであった。

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― 新着の感想 ―
参考にした、という画像をチラッと見てみたんですが⋯⋯ 恐ぇよぉ恐ぇよぉ、血だらけでメッッッッッッッッッッッッッッチャ恐ぇんスよぉ⋯orz
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