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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第三章

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95話 復活ノ時

 翌朝――


(むぅ、どういうことだ。剣聖アリーシャ……我が輩の正体に気づいていながら、それをご主人たちに伝えないとは……)


 朝食の席で、タマは不思議に思っていた。

 モンスターが猫と間違われて人間と一緒に暮らしているなどとわかれば一大事だ。


 しかし、アリーシャはそれを知りながらアリアたちに伝えることはしない。それどころか、タマにバレないように忠告する始末だ。


 タマはその理由が気になって仕方ないのだが……アリーシャの思惑を確かめる手段がないのでどうしようもない。


 そんなことを考えているうちに、皆食事を終えて稽古を始めるために屋敷の庭へと移動を始める……その途中だった――


「これは……幻想的な絵画ですね」


 アリアは歩みを止め、廊下に飾られた絵画を見上げながら言葉を漏らす。


「アリアちゃん、それは〝初代勇者〟様と〝聖獣〟様を描いたものです」

「すごいです! これが初代勇者様と聖獣様なのですね!」


 アリーシャの言葉に、アリアは興奮した様子で言葉を漏らす。


 飾られた絵画――そこには一人の紅い瞳を持った青年と、その隣に寄り添うように、天使のような翼を持った、獅子が描かれていた。


 初代勇者と聖獣……魔神の黄昏が起こるよりも前に、魔神を一時的に封印することに成功した者たちのことだ。


(世間一般にはあまり容姿などは知られていない彼らだったが、まさかこのような場所に絵画が存在するとは、驚きだ)


 絵画を見上げながら、タマはそんな感想を抱く。

 そしてタマを見つめながら、アリーシャは静かに「ふふっ……」と微笑むのだが……それに気づいた者は誰もいない。


 数週間後――


「お待たせにゃん! 無事にみんなのアーティファクトが〝起動〟したにゃん!」


 アリアたちが稽古をしていると、庭にヴァルカンの声が響き渡る。


 アーティファクトの起動――それ即ち、アーティファクトが完成したことを意味する。

 アーティファクトは普通の武具とは違い、その性能が効果を発揮するまでに〝目覚め〟を待つ必要がある。それを通称〝起動〟と呼んでいるのだ。


「待っていたのだ! さっそく性能を試してみるのだ!」

「――残念だけど、その時間はないみたいね」


 ステラが喜びの声を上げたその直後だった――


 ベルゼビュートの声が割って入る。

 その表情にはいつもの不敵な笑みはなく、真剣な雰囲気を感じさせる。そして彼女の額には、薄っすらと汗が浮かんでいる。


「ということは……四魔族の復活場所がわかったのですね、ベルゼビュートちゃん?」

「その通りよ、アリーシャ。しかも最悪なことに、別々の場所に一体ずつ復活するみたいね……」

「「「……ッ!」」」


 ベルゼビュートの言葉に、アリアを含めたその場の誰もが息を漏らす。


 四魔族は強力だ。それゆえに、アリアのチームとジュリウスで立ち向かおうと計画していた。

 だというのに、それが別々の場所に一体ずつ復活することになろうとは……。


「復活場所はアルフス王国の首都近くの遺跡、それと……この帝国にある迷宮都市の迷宮内よ」

「そ、そんな!」

「よりによって迷宮都市にゃん!?」


 ベルゼビュートの更なる言葉に、驚愕するアリアとヴァルカン。

 二体のうちの一体が迷宮都市に……。何ということだろうか。


「アリーシャ、貴女に頼みがある」


 アリアたちが騒然とする中、ジュリウス皇子がアリーシャをまっすぐ見つめ、静かに言葉を紡ぐ。


「はぁ……何を頼まれるのか予想はつきました。……仕方ありません。アルフス王国にはわたしが行くとしましょう……故郷でもありますし、距離的にもわたしが一人で行った方が早いでしょう」

「戦いをやめた貴女に頼むのは申し訳ないが、すまない。頼む……」


 心苦しそうにアリーシャに頭を下げるジュリウス皇子。

 戦うことをやめた彼女にこんなことを頼む……それも親友の妻にともなれば――


「ち、ちょっと待ってください! アリーシャ様一人で行くなんて……!」


 悲痛な面持ちでアリアが割って入る。

 いくら伝説の剣聖とはいえ、四魔族に彼女一人で……なんて無謀なことをさせるのだ。

 ――そう言いたいのだろう。


「問題ありませんよ、アリアちゃん」

「あぁ、アリーシャは全盛期の俺より強いし、何ならこの世界で三番目くらいの実力がある」

「な……!?」


 問題ないと言うアリーシャに、それに頷くジュリウス皇子の言葉、アリアは驚きの声を漏らす。


 魔族の軍勢を相手にしても圧勝することができるアリーシャの実力は知っている。

 しかし、それがまさか勇者として全盛期のジュリウス皇子をも超えるものだったとは、驚かずにいられないだろう。


「そういうわけなので、アルフス王国にはわたしが向かいます。アリアちゃん、みんな、迷宮都市は任せましたよ?」


 そう言って、アリーシャは皆に向かって微笑むと、出立の準備を始める。


「アリアちゃん……。アリーシャちゃんが心配なのはわかるけど、まずは自分たちのことを考えるにゃん」

「その通りよ、アリア。皇子様がいるとはいえ、あなたたち全員を合わせてもアリーシャよりも戦力は下なのよ? それにアリア、あなたはまだ派生スキルを習得できていないのだから」


 アリーシャに続いてヴァルカン、そしてベルゼビュートがアリアに声をかける。

 そうなのだ。これまでの修行のおかげで、アリアたちはかなり強くなった。当初の目的通り、ステラは使い勝手の良い派生スキルを習得することにも成功した。


 ……しかし、アリアは派生スキルを未だに習得していない。もう少し時間があれば……というところではあるのだが、猶予がなければこのまま行くしかあるまい。


「ヴァルカンさん、ベルゼビュート様……わかりました。今はこれから始まる自分たちの戦いに集中します」


 ヴァルカンとベルゼビュートの言葉に、アリアは頷くと、自分も出立の準備を始めるのだった。


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