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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第三章

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90話 見透かす瞳

「あなた……もしかして、アリアちゃん……ですか?」

「……っ!? ア、アリーシャ様、わたしのことを覚えて……?」


 自分の名前を呼ばれたことで、アリアは驚いた表情で尋ねる。


 命を救ってくれた憧れの剣聖様――

 そんな彼女が、自分のことを覚えてくれていたのかと……。


「ええ、覚えてますよ。確か、〝いつか貴女のような強き正義の味方になってみせます〟――でしたっけ……。あの時のアリアちゃんの真剣な瞳は、高潔な決意を胸にした者の瞳でしたから……」


 剣聖――アリーシャがエルフの里ルミルスを発つ時、アリアは一方的に彼女に向かってそんな誓いを立てていた。

 幼い少女のそんな言葉と覚悟を決めた瞳が印象的で、アリーシャはアリアのことを覚えていたようだ。


「そのタグ、Aランク冒険者のタグですね。あの時の約束どおり、立派になったのですね……」

「アリーシャ様……ふぇぇ〜……!」


 普段は泣き言や弱音を見せないアリア。

 だがこの時ばかりは……自分が憧れ目標としていた剣聖アリーシャに覚えてもらえていた、そして認められた時ばかりは……声を上げて涙を流す。


 そんなアリアを「あらあら、困りましたね……」と苦笑しながら、昔、彼女を助け出した時のようにアリーシャは抱きしめてやるのだった。



「なるほど、ジュリウス殿下からのお願いというのは、アリアちゃんにわたしが稽古をつけることだったのですね」

「ああ、聞けばアリアはスピードタイプの二刀流ナイフ使いだという。貴女なら稽古役としてピッタリだと思ってな」


 アリアが落ち着いたタイミングでジュリウス皇子とアリーシャが会話を始める。


 憧れの剣聖様に会えただけではなく、まさか彼女に稽古をつけてもらえるかもしれない……。

 アリアはドキドキを隠せない様子だ。


「ちなみに、そこの彼女……ステラには俺が稽古を、妖精二人にはベルゼビュートが稽古をつける予定だ」

「まぁ、ベルゼビュートちゃんが稽古ですか……。いいでしょう、わたしもアリアちゃんに稽古をつけましょう。四魔族に対抗できる戦力になってくれるならそれに越したことはありません。それに、ご主人様の親友であるジュリウス殿下の頼みであれば無下にはできませんからね……」

「感謝する」


 アリーシャがアリアの稽古係に同意すると、ジュリウス皇子が礼を言う。


(しかし……この三人はいったいどんな関係なのだろうか……)


 タマは思う。


 今、三人は豪奢な部屋の一室で机を囲んでそれぞれソファーに腰掛けている。

 ジュリウス皇子と向かい合う形で座っているアリーシャ。

 ベルゼビュートはというと、アリーシャの膝の上で、小さな寝息を立てて眠ってしまっているのだ。


 アリアもそれが気になったのだろう。

 稽古をつけてくれるというアリーシャに礼を言いつつ、三人の関係性について質問をする。


「あぁ、アリーシャは俺の親友――舞夜の第一夫人なんだ」

「な……っ!? アリーシャ様が大魔導士様の奥様!?」

「にゃ(何だと)!?」


 ジュリウス皇子の返答に、アリアとタマは驚いた声を上げる。

 大魔導士とジュリウス皇子が固い絆で結ばれた戦友ということは世間でよく知られていた。

 しかし、まさか大魔導士と剣聖が夫婦だったとは……。


「ふふっ、実はベルゼビュートちゃんもご主人様――舞夜様のお嫁さんなんですよ?」

「な……っ!?」


 今度はアリーシャの言葉にアリアは驚く。

 アリーシャが大魔導士の花嫁というだけでも驚愕だというのに、まさか聖魔王たるベルゼビュートまでもが……。


(大魔導士殿……強さだけでなく、男としても凄い御仁なのだな……)


 衝撃の事実に、タマはそんな感想を抱くのだった。


「普段はとある場所で一緒に暮らしているのですが、今回、ベルゼビュートちゃんが四魔族の復活を感じ取ったというので、ジュリウス殿下に報告するために帝都を訪れていたのです」


 驚くアリアに小さく笑いながら、アリーシャはそんな説明をする。

 どうやらこの屋敷で普段から暮らしているわけではないようだ。


 そしてアリーシャのここまでの口ぶりから察するに、彼女は本当にベルゼビュートの付き添いでこの都市に訪れただけで、四魔族との件には関わりあいになるつもりはなく、アリアたちが招集されていたのも知らなかったことがわかる。


(最近、アリーシャ様の活躍を噂で聞かないと思っていたら、家庭を手に入れていたのですね……)


 アリーシャが自分の夫、大魔導士の名を口にした時、彼女の瞳が優しげに細められたのを見て、アリアは嬉しく思った。

 憧れの女性が幸せな家庭を築いたとわかれば、それは当然だ。


 そしてさらに思う。

 恐らく彼女は戦うことを既にやめているのだろう。

 ならば今度は自分が世のために頑張らねばと――


「そういえばアリーシャ、まだ貴女には伝えてなかったが、城にヴァルカンが来ている。あとで挨拶をしておくと良い」

「まぁ、ヴァルカンさんが?」

「ああ、今はアリアたちと冒険者パーティを組んでいるんだ」

「昔助けた女の子と、一緒に魔神の黄昏を戦い抜いたヴァルカンさんが一緒にパーティを組んでいるなんて……。ふふっ、世の中どんなことが起こるかわかりませんね」


 小さく笑うアリーシャ。


 やはりと言うべきか、彼女はヴァルカンとも知り合いだったらしい。

 まぁ、大魔導士――舞夜は以前からヴァルカンの店の常連だったという話もあったことだし当然かもしれない。


「それよりもアリアちゃん、面白い子を抱っこしてますね?」


 ジュリウス皇子との会話を終えたタイミングで、アリーシャがアリアに話しかけてくる。

 その瞳はアリアの胸に抱っこされるタマに固定されている。


「あ、紹介がまだでした。この子はタマ。わたしの家族であり、騎士(ナイト)様でもあるエレメンタルキャットです! とても頭が良くて、そして強いんですよ♡ 一緒に冒険者活動をしてくれているんです」


 アリーシャに問われると、アリアは自慢げにタマを紹介する。

 タマは「にゃ〜ん(よろしく頼む、剣聖アリーシャ嬢よ)!」と鳴き声を上げる。


「エレメンタルキャット……? ふ〜ん……面白い状況になってますね、ふふっ」


 アリアの返答に、アリーシャが意味ありげな微笑を浮かべる。

 全てを見透かすようなアイスブルーの瞳に、タマは言い得ぬ感覚を抱くのだった。

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