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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第三章

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87話 招待状と元気のない猫耳娘

「……どうやら、他にモンスターはいないようですね」


 周囲を見回しながらアリアが言う。

 トロールを倒したあと、この階層をしばらく歩き回ってみたのだが、他のモンスターと遭遇することはなかった。


「アリアちゃん、多分だけど、トロールがこの階層に出現したから、他のモンスターたちが低階層に押し出されてきたんじゃないかにゃ?」

「なるほど、そういうことかもしれませんね。もう少し見回りをしてモンスターに遭遇しなければ、ギルドに戻って報告を上げましょう」


 一行は迷宮の中をしばらく歩く。ヴァルカンの予想通り他のモンスターは、やはりいないようだ。

 討伐調査はここまでとし、アリアたちは都市へ戻るのだった。



「なるほどねん。トロールが出現したことが、今回の迷宮の異変の原因だったのね~」


 ギルドへ戻ってきたアリアたちが報告を上げると、アーナルドが納得といった様子で頷く。


 そして、トロールを倒してしまうとは、さすがはアリアたちのチームだと褒める。

 これにて無事に、クエストは達成とみなされ、アリアたちは報奨金と、迷宮で倒したモンスターの素材の買い取り報酬を受け取るのだった。


「ところで、アリアちゃん。あなたたちに皇城から招待の知らせが届いているわよん」

「…………へ?」

 アーナルドの言葉に、間抜けな声を漏らすアリア。

 今、アナさんは何と言ったのだろう? 皇城からの招待……?


「うふふ、そりゃ、ビックリするわよねん。でも、不思議なことは何もないのよん? アリアちゃんたちはグラッドストーンを救った英雄だもの。恐らく皇帝陛下から感謝の言葉を賜るはずよん」

「な……ッ!?」


 この国、アウシューラ帝国の皇帝からの招待――

 まさか一介の冒険者に過ぎない自分に、そのようなものが……。

 アリアは驚きを露わにする。


「でも、不思議なのよねぇ。グラッドストーンを救ったアリアちゃんとステラちゃんに招待が来るのはわかるんだけど、ヴァルカンちゃんにもお呼びがかかっているのよん」

「え? ヴァルカンさんにもですか? 同じパーティだからでしょうか……?」


 不思議そうな顔をするアーナルドとアリア。


 グラッドストーンの一件には、迷宮都市で留守番をしていたヴァルカンは関わってなかった。

 だというのに、彼女まで名指しで声がかかるとはどういうことだろうか。


 当のヴァルカンは何故か元気なさそうに、そして何かを察したかのように「んにゃぁ……」と声を漏らしていた。



「さて、それでは行きましょうか」


 皇帝から招待であれば、あまり待たせるわけにもいかない。 

 アリアたちは急いで仕度を済ませると、その日のうちに帝都に向かって旅立つことにする。


 帝都クラリアルには、馬車で3日ほどで到着する予定だ。

 馬車はレンタルし、御者は特に雇っていない。

 仲間同士で気楽な旅路を楽しむ予定である。


「わーい! またアリアたちと旅ができるなんて楽しみだわー!」

「帝都の食べ物も楽しみです~!」

「我もたくさん肉を食べるのだ!」


 リリとフェリ、それにステラは旅行気分で大はしゃぎだ。

 恐らく、皇帝に謁見する重要性などは理解してはいないだろう。


 そんな三人を微笑ましく思いつつ、旅を続けること三日間――


 途中で温泉が名物の村に寄ったりしながら、一行は帝都クラリアルへと辿り着くのだった。



「わぁ! ここが帝都なのね!」


「迷宮都市も大きいけど、ここはもっと大きいのです~!」


 帝都の中へ入ったところで、リリとフェリがはしゃぎだす。


 帝都クラリアルは、迷宮都市のように高い壁に囲われた大都市だった。

 しかし、その規模は迷宮都市の比ではない。

 一日で全体を見て回ろうとすれば、馬車での移動が必要となるだろう。


(ふむ。さすが帝都だ。人々の活気がすごいな)


 御者台に座るアリアの肩から、帝都の景色を眺めながらタマは思う。

 整備された石畳がどこまでも続き。どの通りを見ても飲食店や露店商、服飾店や武具店などで賑わっている。

 行き交う種族も、純粋な人族はもちろん、エルフや獣人、ドワーフなど様々だ。


「アリア。アリア! 肉が焼けるいい匂いがするのだ! 何か食べたいのだ!」

「たしかに、いい匂いがしますね……けど、これから皇帝陛下に会うのですから、ごはんはあとにしましょうね、ステラちゃん」

「むぅ……しかたがない、わかったのだ。我は我慢のできるいい女なのだ」


 アリアに窘められると、ステラは大人しく引き下がる。

 以前の彼女であれば駄々をこねていたはずだが……最近、彼女は女性としての自覚が芽生え始めている。

 これもタマに好かれたいという気持ちが為せることだろう。


「んにゃあ……とうとう着いてしまったにゃ……」


 皆が明るい表情をする中、ヴァルカンはただ一人暗い表情をしていた。

 ここのところ、ヴァルカンの表情が優れないことに、アリアは何度も「大丈夫ですか……?」と尋ねたのだが――

 ヴァルカンははぐらかすのみだった。


 そんなヴァルカンを、アリアとタマは心配しつつも、巨大な白亜の城――皇城に向かって馬車を進めるのであった――

なんとコミック版一巻、二回目の重版が決まりました!

これもご愛読くださる皆さまのおかげです。

本当に…本当にありがとうございます。

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