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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第三章

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82話 猫乳はさみとげんこつ

「リリちゃん、フェリちゃん、二人ともすごかったです!」

「ホントにゃ! 二人とも私たちのパーティに欲しかった戦力にゃん!」


 満足げな表情を浮かべるリリとフェリに、アリアとヴァルカンが称賛の言葉を送る。


「ふっふ〜、アリアたちに褒められるのは嬉しいわね」

「アリアさんたちに認めてもらえて嬉しいです〜!」


 褒められたリリとフェリは、頬を染めながら喜びを露わにする。

 今まで彼女たちは命を救われ、その後もアリアたちに世話になりっぱなしだった。

 戦力になることができると分かって嬉しいのだ。


(今のうちなのだ……!)


 アリアとヴァルカンが、リリとフェリに夢中になっているその最中、ステラの瞳がキラリと光る。

 スッと、タマの背後に忍び寄ると、彼を後ろから抱っこする。


「にゃあ〜!?」


 いきなり持ち上げられたタマが、驚いた声を上げる。

 そして何とか抜け出そうと、ステラの胸の中でジタバタと暴れ出す。

 だが、ステラの膂力に子猫程度の筋力しか持たないタマが抗うことは叶わない。


「こらステラちゃん! 何勝手にタマを抱っこしているんですか!」


 タマの鳴き声でアリアが気づく。

 ステラからタマを取り戻そうと、彼女に近づくのだが……。


「うぅ……タマは我のことが嫌いなのか……?」


 弱々しい声で、ステラがそんな言葉を漏らす。

 その表情は今にも泣き出しそうだ。


(む、むぅ……乙女に涙を流させるわけには……)


 高潔な騎士であるタマは女性の涙に弱い。


「に、にゃ〜……」


 と、力なく鳴いてステラの胸の中に収まるのだった。

 大人しくなった彼を見て、ステラはニヤリと笑う。


「タ、タマ!? むぅ〜! タマの優しさにつけ込むなんて……許しませんよ、ステラちゃん!」


 タマの様子を見て、そしてステラがニヤついたのを見て、ステラが泣きそうな演技をしていたのだとアリアは気づく。

 そして愛しい騎士(ペット)であるタマが騙されたことに怒りを覚え、ステラへとズンズンと接近する。


 むにゅんっっ!


 ステラの胸の中に収まるタマ。

 そんな彼に向かって、アリアも自分の特大バストを押し付ける。


 単純に取り返すだけならステラから手で奪い取れば良いだけなのだが、アリアはタマの意思で自分の方に来させるつもりのようだ。

 そうすることで、どちらがタマのパートナーとして相応しいのかハッキリさせるつもりなのだろう。


「にゃあ〜〜〜〜っ!?」


 前から後ろから、とんでもなく柔らかな感触、そして少女たちの放つ甘い香りに挟まれて、タマが狼狽した声を上げる。


(う、後ろには泣き出しそうなステラ! 前にはステラからの抱擁を受け入れたことに対してお冠なご主人! 我が輩はいったいどうすれば良いのだ!?)


 騎士として、乙女を泣かせるわけにはいかない。

 だが騎士として、主人を怒らせるような真似をするのも言語道断。

 タマは自分の騎士道精神の中で葛藤する。


「わ〜い! おっぱいでおしくらまんじゅうよ!」


 アリアとステラの双丘の間で揉みくちゃにされるタマを見て、面白そうだと思ったのか、リリがその中に混ざって一緒に揉みくちゃにされて遊び出す。


「あ〜! ずるいです〜! 私もおっぱいに混ざりたいです〜!」


 楽しそうにするリリを見て、フェリも「自分も自分も」と、アリアとステラの周りでピョンピョン跳ね回る。


「ステラちゃん、タマを抱っこするのはわたしが許可した時だけと約束したはずです!」

「ふんっ、そんなのアリアが勝手に決めただけなのだ! 我はこの間もタマを抱っこして夜の散歩をしたのだ! タマも抵抗しなかったのだ!」

「な、何ですって!?」


 問い詰めるアリアに対し、衝撃の事実を口にするステラ。

 アリアは、ショック! といった様子で目を見開く。

 そして、ジ〜……と冷たい視線でタマを見つめる。


(ち、違うのだご主人! ステラはあの時も泣き出しそうな顔をしていて……くっ! 喋れない自分が恨めしいぞ!)


 言い訳すらできないことに悔しげに心の中で呪詛を吐くタマ。

 だが、何とか首を横に振り、身振り手振りでアリアへと心の内を伝えようとする。


「まぁ……タマに限ってステラちゃんの色気に惑わされることはないでしょう。どうせ今みたいに泣きマネでもされたというところでしょうか?」


 タマの様子を見て、アリアはそんなところだろうと理解する。


「ギクッ! なのだ」


 アリアの言葉を聞き、ステラがそんな言葉を口にする。


(なっ!? ステラめ、アレは泣きマネだったのか!?)


 ステラの動揺した様子に、やっとタマもそのことに気づく。


「うわぁ〜ん! 私を無視しないでほしいのです〜!」


 そんな中、無視される結果となったフェリが本気で涙目になる。


「あわわわ! フェリ、泣いちゃダメよ〜!」


 自分の親友が泣き出してしまいそうなことに気づいたリリが、慌ててフェリを慰めようとアリアとステラの胸の中から飛び出す。


 猫がエルフ娘とドラゴン娘の間で揉みくちゃにされ、ピクシー娘がぐずり出したドライアド娘をあやし始める……なんとも混沌とした状況だ。


 そんな時だった――


「んにゃ〜〜〜〜! 迷宮の中だっていうのに、ふざけるのも大概にするにゃんッッ!」


 冷静に周りからモンスターがこないか警戒していたヴァルカンが、とうとう怒りの声を上げるのだった。



「ふぇ〜……ヴァルカンさんに怒られました……」

「な、何でこんなことになったのだ……」


 迷宮の中を、泣き言を漏らし歩くアリアとステラ。

 二人の瞳には薄っすら涙が浮かび、頭の上には大きなタンコブができている。

 あまりにおふざけが過ぎたので、ヴァルカンにげんこつを食らったのだ。


 普段は温厚なヴァルカンに本気で怒られたのがショックで、アリアもステラも、今にも泣きだそうだ。

 まぁ、危険な迷宮で言い争いをしていたのだ、自業自得である。


「ふぁ〜〜……タマちゃん可愛いのぉ♡」


 そんなアリアたちの後ろに続くフェリが恍惚とした表情で甘い声を漏らす。

 その胸の中にはタマは小さく収まっている。

 そしてタマと一緒にリリも収まり、「タマをモフモフしながら抱っこされるの最高だわ〜」と呟く。


「にゃ〜タマちゃんの安心した顔、萌えちゃうにゃん♡ フェリちゃん、次は私に抱っこさせてほしいにゃ!」

「もちろんです〜、ヴァルカンさん〜!」


 アリアとステラの〝猫乳はさみ〟から解放され安心しきったタマの表情を見て、ヴァルカンが自分にも抱っこさせてほしいと言う。


 だが、さすがヴァルカンだ。

 タマに見惚れつつも、周囲への警戒は怠っていない。

 戦果の違いでアリアよりもランクは低いが、歴の長い冒険者だけあってその辺がしっかりしている。


「「むぅ〜〜……」」


 タマを取り合っていたアリアとステラは、二人揃って嫉妬の声を漏らすのだった。

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