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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第三章

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76話 引越し祝い

「ふぅ……これで引っ越し完了ですね♪」


 数日後――


 手に入れた物件の寝室で、アリアが腕で額の汗を拭う。


 物件の賃貸契約を成約させると、アリアたちは早速家具の購入に移った。

 そして、ベッドや物入れなど生活に必要な用具が、今日全て運び込まれたのだ。


「あはは! 宿屋のベッドよりふかふかだわ!」

「ぴょんぴょんするの楽しいです〜!


 運び込まれたダブルベッドの上で、リリとフェリが跳ねまわって遊んでいる。


 ベッドはダブルベッドを二つ用意した。

 材質も少々お高いものを購入したので、二人ともご満悦だ。


「ふぁ……久しぶりにタマを抱っこできたのだ……嬉しいのだ!」


 もう一つのベッドの上で、ステラが恍惚とした表情を浮かべながら、その豊満な胸の中にタマを抱っこしている。


 ステラは体をドラゴニュート化させることで、都市の家具店からダブルベッドを二つともこの家に運び込んだ。


 そのご褒美――というか、働きを労うために、アリアはタマを抱っこする権利をステラに与えたのだ。


 ――おいステラ、我が輩の頭をあまり撫でるな。

 ――イヤなのだ! タマを抱っこできるチャンスは滅多にないのだ! 心ゆくまでナデナデするのだ!


 あまりにステラが頭を撫でるものだから、タマはやめるように念話を飛ばすのだが、ステラはより一層彼の頭を撫でるのだった。


 それだけではない。


 抱きしめる力をさらに強め、タマの顔をむにゅん! と胸の中に埋めてしまう。


(むぅ、まさかステラにこのようなことをされる日が来ようとは……人生というものは何が起きるか分からんな)


 かつて、タマとステラは命の奪い合いを繰り広げた。

 それがまさか、このような関係になるとは思いもしなかった。


 タマはステラの胸の谷間から、感慨深げに彼女の顔を見つめるのだった。


(む、またタマとステラちゃんが無言で見つめ合っています。いったいアレは何なのでしょうか……?)


 何となく良い雰囲気のタマとステラの様子に、アリアは少し頬を膨らませてムッとする。 


「すみませ〜ん! お届けものです!」

「あ、はーい! 今行きますっ!」


 そんな時であった。


 玄関の方から呼び声がする。

 アリアは返事をすると一階へと降りて来客を迎える。

 現れたのは商業区にある服飾店の女店主だった。


「わざわざお届けしていただいてありがとうございます!」

「なーに、アリアちゃんのためだったらこれくらいして当然さ! 何せアリアちゃんはこの都市……いや、この国の英雄だからね! それに今回の注文はなかなか楽しめたからね」

「英雄だなんて……でも、そう言ってもらえると嬉しいです♪」

「謙遜しちゃって、やっぱりアリアちゃんは可愛いね。それじゃあ私は店に戻るけど、何か不備があったら言ってちょうだいな、すぐに調整するからさ」

「はい、ありがとうございますっ」


 女店主から、アリアは箱を受け取る。

 彼女を見送ると、笑顔を浮かべながら二階へと上がっていく。


「リリちゃん、フェリちゃん、この間頼んでいたものが出来上がりましたよ!」

「ほんと!? 見せて見せて!」

「わ〜! 楽しみです〜!」


 アリアに声をかけられた二人がパッと表情を輝かせて彼女のもとに駆け寄る。

 アリアは二人の前に箱を置くと、中身を取り出して見せる。


「へ〜! 思ったよりも凝ってるのね!」

「肌触りもサラサラで気持ちいです〜!」

「ふふっ、二人とっても可愛いです♡」


 箱の中身はリリとフェリ用の衣服だった。


 この物件を成約させた日、アリアはリリとフェリがずっと全裸で過ごしているのを気にして、二人用の服を仕立てに行ったのだ。


 サイズなどを測って特注で作らせた服がようやく今日届いたのである。


 女店主が楽しめたと言ったのは二人の服の製作のことだったのだ。


 リリは淡いピンクのワンピース。

 フェリは淡い緑のワンピースだ。


 サイズもぴったりのようだし、アリア言う通り二人とも非常に似合っていて何とも可愛らしい。


 ちなみに、リリのものは羽を外に出せるように背中を大きく露出させるタイプになっている。


 服と同じく下着もオーダーメイドで用意した。

 二人とも元気に動き回るものだから、服と同じ色のショーツが見え隠れしてしまう。


 妖精マニアやロリコンからしたら堪らない光景であろう。

 今まで堂々と全裸で過ごしていたはずなのに、パンチラの方がいやらしく見えてしまうのは何故だろうか。


「そうです! せっかく二人が可愛い格好をしているのですから、タマもおめかししてあげましょう!」

「にゃっ(ま、まさかご主人)!?」


 アリアの思いつきに、タマはギクッとした様子で身構える。


「む、どうしたのだタマ。何を怯えているのだ?」


 胸の中で強張るタマに、ステラが問いかける。


 タマの予想が当たっているのであれば逃げるべきだ。

 だがそれをするとアリアはきっと悲しんでしまうであろう。

 男としての尊厳、騎士として主人を悲しませてはならいという思い。


 二つの感情の中でタマは揺れ動く。


「えーっと……確かこの辺に――ありました!」


 新たに購入したクローゼットの中から、アリアがとある物を取り出す。


(あぁ……やはりそれなのか……)


 それを見て、タマはガクッとうな垂れる。


 アリアが取り出したもの。

 それは少し前に、彼女が特注で作らせたタマ専用のドレスだった。


 淡い青と純白を基調としたメス猫用のフリルが可愛らしいドレス……。

 誇り高き騎士が着させられるにはあまりに屈辱的だ。


 だが――


「や〜ん! タマってば、なんて可愛いの!」

「まるで猫のお姫様みたいです〜!」


 結局、アリアが悲しむ顔を見るのが嫌で、タマはドレスを着させられてしまった。

 あまりの愛らしさに、リリとフェリが興奮した声を上げる。


「な!? 何なのだ、この可愛さは! 今のタマを見ていると、何だかお腹の下あたりがキュンキュンしてくるのだ!」


 タマのドレス姿を見て、ステラも違う意味で大興奮だ。

 下腹部を両手で押さえて、太ももをモジモジと擦り合わせている。


「はぁ……タマったら、なんて可愛いの……♡」


 アリアもアリアで、頬をほんのりピンクに染めながら、人差し指を咥えて悩ましげな表情を浮かべている。

 そして美しいアイスブルーの瞳の中には興奮の証である、小さなピンクのハートが……。


(ご、ご主人と二人きりでなくて良かった……)


 下手をすれば襲われていたかもしれないことを想像し、タマはホッと息を吐くのであった。


「んにゃ〜、みんないるかにゃ?」


 美少女四人がタマの愛らしさに悶えている最中であった。


 一階の玄関からそんな声が聞こえてくる。


「ヴァルカンさん! どうしたのですか? すごい荷物を持って……」


 今度の来客はヴァルカンだった。

 何や背中や両手にたくさんの荷物を持っている。


「今日はアリアちゃんたちの引っ越し記念日にゃん。せっかくにゃから、今日は店を早仕舞いしてお祝いに来たにゃん!」


そう言って、ヴァルカンは荷物をダイニングテーブルの上に広げる。


「わ! これはホバール海老! こっちは霜降りの牛肉です! それにこれは……!」


 ヴァルカンが持ってきたのは高級食材の数々だった。

 アリアたちの引っ越し記念に、お祝いをしようと色々準備をしてきてくれたらしい。


「肉! 美味そうな肉の匂いがするのだ!」


 上質な肉の匂いを嗅ぎつけ、ステラが二階からダダダッと、駆け下りてくる。


「甘い匂い! これはケーキの匂いね!」

「食欲をそそられてしまいます〜!」


 リリとフェリは甘い匂いにつられてきたようだ。

 ヴァルカンは迷宮都市で有名なスイーツ店のホールケーキも買ってきてくれていたのである。


「こんなに美味しそうなものをたくさん……ありがとうございます、ヴァルカンさん!」

「仲間のお祝いならこれくらいして当然にゃん♪ アリアちゃんたちは引っ越しで疲れてるにゃろうからゆっくりしてるにゃん!」

「いえいえ、わたしもお手伝いします! こう見えてお料理は得意なんですよ?」

「それじゃあ、二人で料理するにゃん!」


 アリアとヴァルカンが仲睦まじく料理の準備に取り掛かる。

 その様子をステラ、リリ、フェリの三人がわくわくとした様子で見ている。


 面倒見の良いお姉さん二人に、料理を楽しみに待つ小さな子ども三人……そんな風に見えてしまい、タマは心の中で苦笑するのだった。


「よし、これで完成にゃん!」

「待ってました!」

「わ〜美味しそうです〜!」

「何という良い匂い! 早く食べるのだ!」


 リリにフェリ、それにステラは待ちきれないといった様子だ。

 三人とも口元からヨダレが垂れている。


 出来上がったのはステーキにホバール海老のグリル、それにサラダにスープ、デザート。


 アリアとヴァルカン用にアルコールも数種並んでいる。

 ステラ、リリ、フェリには果実水を。

 タマには高級ミルクが用意された。


「それじゃあ、引越しを祝して……乾杯にゃん!」

「「「乾杯!」」」


 ヴァルカンの音頭で、皆が一斉にグラスを掲げる。


 子どもようにゴクゴクと果実水を飲みステラとリリ、フェリは何とも愛らしい。

 その横ではアリアとヴァルカンが少し度数が高めの蜂蜜酒を呷り、「ふぅっ」と、色っぽい吐息を漏らす。

 タマはアリアの席の前でミルクをペロペロと味わっている。


「……っ! こ、この肉、美味しすぎるのだ!」


 果実水を飲み干したステラが早速ステーキを頬張ると感動で目を見開く。


「そういえば、ステラちゃんは霜降り肉を食べるのは初めてでしたね、とっても美味しいでしょ?」

「アリア、これは霜降り肉というのだな……覚えておくのだ!」


 レアに焼き上げられた霜降りステーキの味は芳醇だ。

 味付けもシンプルに塩と胡椒のみだというのに、何とも美味だ。


「はい。タマも、あ〜んです♡」

「にゃ〜!」


 タマもアリアからステーキをもらい、かぶりつく。

 噛んだ瞬間に肉汁が溢れ、至福に満たされる。


「すごっ! 海老って初めて食べたけどこんなに美味しいのね!」

「バターソースとの相性が抜群です〜!」


 リリとフェリは、この都市名産のホバール海老のグリルに夢中だ。

 二人ともずっと森林型の迷宮で暮らしていたため、海産物を口にするのは初めてだったのだ。


 ホバール海老は海老の中でも特に歯ごたえが良く、旨味も強いことで知られる高級食材だ。

 初めて食べた海産物がこれであれば、夢中になるのも無理はない。


「にゃ〜! アリアちゃんが料理が得意だっていうのは本当だったにゃ! スープの味付けも最高にゃん!」

「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいです♪」


 ヴァルカンはアリアが手がけた海鮮たっぷりのスープを絶賛する。

 他の料理の味付けが濃いため、スープ自体の味付けは薄めだ。

 しかし、そのおかげで海鮮の旨味を感じることができる絶妙な味付けになっているのだ。


(ふむ、これならギルドや宿屋の料理にも引けを取らぬ――いや、それ以上に美味だ!)


 タマも小皿に取り分けてもらったスープを舐めながら、アリアの料理の腕に感心するのだった。


 この後も料理やデザートを楽しみながら、皆でワイワイと盛り上がる五人と一匹。

 楽しい時間は、あっという間に過ぎていくのだった。 


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