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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第二章

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55話 共闘に目覚めるドラゴン娘

「タマぁ……」

「にゃあ(どうしたのだ、ご主人……っ)!?」


 念話を終えたところで、アリアが背後から静かに声をかけてくる。


 どうかしたのかと、振り返ったところでタマは驚愕する。なぜなら、アリアのアイスブルーの瞳に小さなピンクのハートが浮かんでいたからだ。

 おまけに頬は紅潮し、太ももを悩ましくモジモジと擦り合わせている。そう、〝エロフモード〟に突入してしまったのだ。


(な、なぜだ!? どこにご主人を発情させる要素があったというのだ!?)


 タマはただパーティである皆の安全を確保するためにスキルを行使していただけだ。だというのに、なぜアリアは発情しているのか……。


 そんなことを疑問に思っていると――


「あぁ……タマったら、なんてスキルを持っているのぉ? 触手だなんて、卑猥過ぎます……! さぁ、その可愛い茶トラの触手でわたしをメチャクチャ(・・・・・・)にしてくださいっ♡」


 アリアはそんな言葉を紡ぎながら……カチャッ――と、ビキニアーマーを外し始めてしまう。


(な――っ!? ご主人、なんてところで興奮している!? レベルが高すぎるぞ!! ……む? ちょっと待て、そもそもご主人はこういった類のものは苦手ではなかったか……?)


 以前、ローパーの触手に苦戦し、粘液をかけられた時にアリアは激高した。タマはてっきり、アリアがそういった卑猥な存在が嫌いなのだと思っていたのだが……それは違った。

 確かに、ローパーなどというわけのわからない卑猥モンスターの触手に陵辱されるのは彼女の望むところではない。

 しかし、愛らしいタマの放つ触手であれば受け入れることは可能……否、むしろ進んで犯されたいとすら思っている。


「はぁっはぁっ♡」

「に゛、にゃあ……っ」


 ビキニアーマーを半脱ぎ状態で迫るアリア。

 狼狽の声を漏らしながら後ずさるタマ。

 主人と騎士の一進一退は果てしなく続くと思われたが……。


 結局、タマの貞操は、「迷宮内でなに発情してるニャン!」と、止めに入ったヴァルカンの手によって守られるのだった。


 だが……。


「そうか! 子を成すためにそんな戯れの儀式もあるのだな!!」


 ……と、ステラが爛々とした目でその光景を見つめていたりするのだから、タマの貞操がより危ういものと化してしまうのだった。





『ピキィィィィ!』

『ピキピキッ!!』


 アリアのエロフモードが収まった後、一行はさらに三層目の奥へと歩を進めていた。

 そんな一行の前にまたもやローパー現れる。今度は二体、先ほどの個体と同じく見目麗しい乙女三人の姿を見て、興奮した声を上げている。


「ふんっ出たな卑猥モンスターめ! さっきは不覚をとったが、今度はそうはいかんのだ!!」


 ――その意気だステラ、援護はしてやるから思いきりやってこい!


 気張ったセリフを吐くステラに、タマが励ましの念話を送る。ステラは一瞬だけ頬を染めると、ダンッ! とローパーに向かって飛び出した。


 バシュッ!!


 ローパーの触手が勢いよく伸びてくる。

 先ほどの個体と同じくステラを捕らえ、孕ませるつもりだ。


 だが、ステラは立ち止まらない。

 自分を倒した強き者――タマに守ってもらえるという安心感が、彼女の恐怖心を断ち切ったからだ。


 現に、タマは既に動き出していた。

 ステラが飛び出すと同時に、彼もアリアたちの前に躍り出た。


 ヴァルカンはタマが援護に回るつもりなのだと理解し、その場で待機。

 アリアも同じ対応を取るが……頬はピンクに染まり、心なしか息が荒い。

 恐らく、「はぁん……っ、またタマの触手捌きが見れます♡」と、いったところだろうか。


 そんなアリアの反応を見ていたタマは、触手を使えば彼女がまたエロフモードに突入してしまうことは予想済みだ。

 なので別のスキルを使用し、ステラを援護することとする。


「にゃんっ!」


 鋭くも、なんとも愛らしい声で鳴き声を上げるタマ。

 それと同時に、右の前脚を大きく上から下へと振り抜いた。

 するとどうだろうか……。


 斬――ッ!!


 直後にそんな風切り音が鳴り響いた。


『ピギャァァァァァッ!?』


 そしてローパーの絶叫が空間に木霊する。

 見ればステラへと伸ばしていた複数の触手がバラバラに千切れ飛んでいくではないか。


「ニャ……っ!? なんニャあれは!」

「タマ……まだスキルを隠していたのですか!?」


 突如として千切れ飛ぶローパーの触手の数々。

 それを目の当たりにし、ヴァルカンとアリアが驚愕で大きく目を見開く。


 タマが発動したのは、ひと月前、新たに手に入れた喰奪スキル、《ドラゴンクロー》だ。

 マナで形成された巨大な剛爪が、ローパーの触手を斬り裂いたのだ。

 駆けるステラに当てず、触手のみを斬り裂いたあたり、タマのスキルの使用技術の高さが窺える。


『ピキッ!?』


 仲間の触手がやられ、自分も触手を伸ばしかけていたもう一体のローパーの動きが止まる。


 今だ!


 それを見て、ステラはさらに加速する。

 触手をやられ悶絶するローパーに、メガシールドによる強烈なチャージアタックを浴びせる。


 その反動で、ローパーの体から白濁色の血液が飛び散り、ステラの顔にぶっかかり(・・・・・)、アレな状態が出来上がってしまうが、当のステラは気にした様子はない。

 むしろ血を浴びたことで興奮したのか、壮絶な笑みを浮かべると、隣のもう一体のローパーの心臓部へとグレートソードを叩き込んだ。

 血を浴びて闘争心を滾らせるあたりは、元ドラゴンの性というやつであろう。


「どうですかステラちゃん、タマと一緒に戦う気分は?」

「楽しいのだ! 他者と協力して戦うなど初めての経験だが、こんなにもいいものだとは思わなかったのだ!!」


 ローパーを片付けた後、体が白い液塗れになってしまったステラに、アリアがタオルを差し出しながら問いかける。


 答えるステラの表情は言葉通り「爽快!」といった感じだ。

 戦闘で頬を赤く染め、息を荒くしながら顔についた白い液を拭う姿は、なんとも……いや、やめておこう。


 それはさておき。


 迷宮で孤高の絶対強者として君臨していたステラにとって、共闘というのはなんとも新鮮な感覚であった。

 ましてや、その相手が心惹かれるオス――タマであれば、そんな反応も当然かもしれない。


「それをチームワークって呼ぶニャン。ステラちゃんには、これから私たちとも一緒に戦ってもらって、最高のチームを目指してもらうニャン!」

「おお! タマとだけではなく、そなたたちとも一緒に戦うのか! 楽しみなのだ!」

「ふふっ、ステラちゃんが素直な子でよかったですっ。これならいいチームになれそうですね、ヴァルカンさん?」

「ニャ〜! ドラゴニュートのステラちゃんと連携が組めれば怖いものなしニャン!」


 アリアたちとも共闘すると聞き、ステラはまたもや興奮した様子を見せる。どうやら、共闘というものに楽しさを見出したようだ。

 そんなステラの様子に、アリアとヴァルカンはひと安心すると同時に、彼女が連携に加わることにより戦いの幅が広がるだろうと、期待に胸を膨らませる。


 そんな中……。


(むぅ、そう上手くいけばいいのだが……)


 タマは一匹、不安そうな表情を浮かべていた。無邪気に見えるが、ステラは元モンスター。今のように、タマが一方的にサポートする分には問題無いが、相互的な連携となると果たして……そんな不安を抱えているのだ。


 そしてその不安は、この後すぐに現実のものとなる。


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