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Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます  作者: 銀翼のぞみ
第六章

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207話 誘惑と美味

 などと慄いていたら列が動き始めたぞ!

 どうやらあまりに待機列が膨らんできたので早めに販売を開始するようだ。


「おー! いよいよシーサイドバイソンの肉が食べられるのだな!」


 よかった。

 誘惑の真似事をしていたステラの脳内が完全に肉へと切り替わったようだ。


「む〜……まぁいいでしょう、今後も隙を見てはご主人様を誘惑させていただきます」


 このダークエルフ娘は何を恐ろしいことを言っているのだろうか。


 それよりも……

 ふむ、いい香りだ。

 肉が焼ける匂い、それにタレやスパイスの香りが混じっており実に食欲をそそる。


 さらに列が進んだところで何やら店員が出てきたな。

 どうやら注文数を聞いているようだ。


 ステラがご主人たちの分も含めた数を伝える。

 よしよし、無事に買うことができそうだ。


 ……などと思っていると、どうやら今列に接続した者たちの分で販売終了だそうな。


「あ、危なかったのだ! 早めに出てきて正解だったのだ……!」


 ――よかったな、ステラ。無事にお目当てのものが食えるぞ。

 ――タマがついてきてくれたおかげなのだ! 我一人だったら迷子になって間に合わなかった可能性もあるのだ!

 ――ほう、自然に感謝を伝えられるようになってきたではないか。えらいぞ、ステラ。

 ――っ! タマの方から褒めてもらえたのだ! で、でも当たり前のことを言っただけだからなんだか照れるのだ。


 なんと……

 感謝を伝えるのは当たり前、そして照れる……か。

 本当に人として成長したのだな、ステラよ。


 最近はこいつが成長していくのを見ると心から嬉しく思う。

 殺し合いをした仲だというのに、不思議なものだ。


「ご主人様? なんだか私の存在を忘れていませんか……?」


 む? シャロが不満げな表情を浮かべておる。

 さすがはエルフ族、ご主人と同じく勘が鋭い。


「ふふんっ!」


 何やらステラが誇らしげな笑みを浮かべておるな。


 あまり挑発的なことは控えろよ?

 この娘……シャロはご主人よりも勘が鋭い気がする。

 何かのきっかけに我輩たちが念話をできることや、モンスターであることがバレては大変だからな。


 ……バレるといえば、剣聖アリーシャには正体がバレていたな。

 恐らく彼女を通して大魔導士殿にも我輩のことは筒抜けになっているはず。

 だというのにバトルデバイス贈り物をしてくれるとは、ますます謎な存在だな。


 お、順番が回ってきたな。

 値段を聞き「それなら人数分を足すと〜……」と頑張って計算しておる。

 店主も忙しいだろうに、それでもステラが頑張って硬貨を数えるのを笑顔で見守っていてくれている。


 よし、無事に買うことができた。

 串焼き肉の店主よ、感謝するぞ。


「にゃん!」


 これはほんの気持ちだ。

 こっそり《収納》スキルを発動し硬貨を咥える。

 それを店主の前にひょいとおろしそのまま立ち去る。


「え? おい猫ちゃん! これ――」

「大丈夫です。ご主人様からのほんの気持ちです」


 む? 店主に言葉にシャロが微笑を浮かべながら返答しておる。


「ふふっ、ご主人様は本当にお優しいのですね。ますます大事なところが疼い……好きになってしまいます」


 ふむ……

 どうやら我輩がこっそりチップを渡したことに気づかれていたようだ。


 というか今何を言いかけた?

 いや、気づかないふりをした方が賢明か……


 シャロの発言に若干疲れていると、向こうの方にご主人たちの姿が。

 実に良きタイミングである。


「どうやら無事に買えたようですね、ステラちゃん」

「タマとシャロがついてきてくれたおかげなのだ! さっそくみんなで食べるのだ!」

「ふふっ、それはよかったです。ヴァルカンさんが席を確保してくれていますからそこでゆっくり食べましょう」


 さっそく席へと移動。

 どうやらヴァルカン嬢は席だけでなく飲み物も確保してくれていたようだ。


「ぐふふ! それではいただきますなのだ!」


 勢いよく肉にかぶりつくステラ。

 その瞬間、目を大きく開き表情を輝かせている。


「美味いのだ! こんなに厚い肉なのにこんなに柔らかいのはびっくりなのだ!」

「ほんとね! 全然筋を感じないわ!」

「味付けも最高ですぅ〜!」


 ステラに続きリリとフェリも幸せそうな表情を。


「ご主人様、ぜひご堪能ください……あ〜ん♡」

「あ、ダメですよ。シャロさん? タマにあ〜んしてあげるのは飼い主であるわたしの特権です。はい、タマ……あ〜んです♡」


 何やらシャロと張り合うご主人。

 迷うべくもなく我輩はご主人が差し出した串焼き肉をガブリ! と。


 ほう、やはりシーサイドバイソンの肉は美味いな!


 サシが多く入っているというのに柔らかな食感。

 そして絶妙にスパイスなどをブレンドされたタレの味に炭火焼きの風味が合わさり絶品に仕上がっておる。


 もはや屋台のクオリティではないな。

 チップを渡したのが惜しくない出来である。


「む〜……っ」


 シャロがまた何やら不満げな表情を。

 しかし我輩の飼い主であるご主人に盾突く気はないようだ。

 それにご主人の前で我輩を誘惑する気も……


「ふふっ……♡」


 あ、何か企んでおるなこれ……。

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