155話 王都到着
機関車に揺られることしばらく……
『――まもなくリュウドウへと到着します。お忘れ物などないよう、ご注意ください』
車内に、丁寧なアナウンスが流れる。
「うわ〜!」
「おっきな都市です〜!」
リリとフェリが窓から顔を出し、前方を眺めながらキャッキャッと声を漏らす。
広大な、そして迷宮都市リューイン以上に高い外壁に囲まれた都市が見えてきた。
機関車が近づくと巨大な門が開き、迎え入れる。
「これは……風情のある都市ですね……」
「にゃ〜ん」
機関車から降りたところで、思わず息を漏らすアリア。
そしてそれに応えるように可愛らしい鳴き声を上げるタマ。
ガンリュウと同じく木造の瓦屋根の建物が立ち並び、緑の木々が美しく調和されている。
そして都市の中央には同じく、和を感じさせる巨大な城が聳え立っている。
「さて、まずは宿を確保しようか」
「綺麗な宿屋が空いているといいわねん♪」
景色を眺め、堪能しながら、セドリックとアーナルドがやり取りを交わす。
駅員の鬼人族に宿屋街の場所、そしておすすめの宿屋の情報を仕入れると、一行は宿屋へと向かう。
(ふむ、やはり鬼人族以外も多く歩いているな)
アリアの胸にポヨンポヨンと揺られながら、辺りを見渡すタマ。
浴衣を着た鬼人族以外にも、人族、エルフ族、獣人族など様々な種族が歩いている。
盛夏祭が近いため、裕福な層が観光に訪れているのであろう。
そして、同じく盛夏祭に向け、通りによっては屋台やステージのようなものの準備が始まっているのが見受けられる。
歩くことしばらく――
他愛のない話をしているうちに、目的の宿屋街へと辿り着いた。
駅で鬼人族に教えてもらったいくつかのおすすめの宿のうち、一番大きな宿屋へとアリアたちは足を運んでみる。
「ようこそ、おいでくださいました。お客様」
中に入ると、丁寧な口調の鬼人族の娘に迎えられる。
浴衣と似ているが、少し凝った作りをしている服を着ている。
受付へと案内される間、アリアが興味津々といった様子で見ていると、アーナルドがこっそり――
「アリアちゃん、あれは着物っていう名前の服なのよん」
――と、鬼人族の着ているものの名を教えてくれるのだった。
「着物……とっても可愛いですね♡」
「にゃ〜ん(うむ、ご主人が着ても似合うと思うぞ)!」
着物の名を知り、さらに興味を示すアリアに、タマはそんなふうに鳴いて応えてみせる。
宿屋のロビーは襖などがありつつも、ソファーやテーブルなどが置いてあり、うまく調和している、和洋折衷といったところだ。
部屋も無事に確保できたところで、さっそく部屋へと向かう。
アリア、タマ、ステラ、リリ、フェリ、ヴァルカンの六人は大部屋へ。
セドリックとアーナルドはもちろん二人部屋だ。
「ぐはははははは〜!」
「わ〜い!」
「広いお部屋です〜!」
部屋に入ったところで、ステラにリリ、フェリが興奮した声を上げる。
ロビーと同じように、こちらも和洋折衷な造りをした部屋となっていた。
窓を開ければ小洒落たテラスがあり、最上階ということもあり、都市の風景を楽しむことができる。
そしてベッドルームにはこれまた小洒落たベッドが用意されており、さっそくステラがダイブ。リリとフェリはピョンピョンと飛び跳ねている。
そんな三人を微笑ましく眺めながら、アリアとヴァルカンは荷物を整理し、出かける準備を始める。さっそくみんなで、この国の料理を堪能するつもりなのだ。
「アリア、我もタマを抱っこしたいのだ!」
「ステラちゃん、そうですね……ここに来るまで、リリちゃんとフェリちゃんの面倒をよく見てくれましたし、ご褒美にいいでしょう♪」
「やったなのだ!」
アリアからタマの抱っこ権を獲得し、大はしゃぎするステラ。
長い船旅の間、彼女は自分もはしゃぎつつも、それ以上にはしゃぐリリとフェリの面倒を見ていたのだ。
どうやら一緒に過ごすうちに、彼女たちの姉のよう存在へと成長していたようだ。
(む……まぁ、ご主人がそう言うなら仕方あるまい)
出会った頃と違い、タマもステラに対して警戒感はない。
アリアが許可するのであれば、ステラに抱っこされるのも拒否することはしないのだ。
ステラが腕を広げると、タマは軽やかなステップで彼女の胸へと跳躍する。
ドラゴン娘はそれを優しく受け止め、幸せそうな表情でタマを抱きしめる。
「わ〜い! 私も〜!」
楽しげな声で、ステラの胸とタマの間にダイブするリリ。
「む〜、私も抱っこしたいです〜」
フェリは少しむくれた表情を浮かべるも、アリアにあとで抱っこさせてあげると言われ、すぐに機嫌を取り戻すのであった。