表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

139/206

138話 空の旅

 渓谷に沿って進むこと数時間――


「皆、気をつけてください!」


 ――天を指差し、シエルが警戒の声を上げる。


 空を見上げるアリアたち。

 巨大な鳥のようなモンスターが三体飛んでいるではないか。


「シエル様、アレはなんですか!」


「アリア、アレは〝プテラ〟という翼竜型の肉食モンスターです!」


 アリアの質問にシエルが答えたタイミングで、モンスター……プテラのたちが急降下してくる。


 どうやらアリアたちを喰らうつもりのようだ。


 恐竜たちから飛び降りて、アリアたちは武器を構える。


 急降下した勢いを活かし、鋭い鉤爪による攻撃を仕掛けるプテラたち。

 アリアたちはそれぞれステップすることで、それを躱してみせる。


 攻撃を躱されたと見るや否や、プテラたちは再び上空に舞い戻ってしまう。


「……シエル様、あのプテラというモンスターをテイムすることは可能でしょうか?」


「……? 可能ですが、テイムしてもあまりメリットはありませんよ? 空を飛ぶ生物なので乗ることはできませんし……」


 アリアの質問に、不思議そうな表情で答えるシエル。


 テイムしたとしても、風の抵抗や上空での気温などの問題があるので、乗って移動することなどはできないのだ。

 しかし、シエルは言葉の途中でアリアが言わんとしていることに気づいたようだ。


「いいでしょう。プテラをテイムすることにします。皆、トドメは刺さないでください」


「それならマイに任せてほしいの!」


 シエルの指示に、マイが挙手する。


 そのタイミングで、プテラたちが再び急降下して攻撃を仕掛けてくる。


「食らっちゃえなの! 《黒ノ魔弾》っ!」


 プテラたちに向け、闇魔法スキルを放つ。

 複数の漆黒の魔弾が、プテラたちに襲いかかる。


『ガギャ……ッ!?』


 魔弾に打ちのめされ、バランスを崩すプテラたち。


 それだけではない。

 闇魔法スキルの特性により、生命力を何割か奪われ、翼を動かす力をなくして地面へと落ちていく。


「よくやりました、マイ!」


 称賛の言葉を送るシエル。

 そのままプテラたちに近づくと、《セルシウスブレイド》の切っ先を突きつけた。


『グガ……』


 もはや飛ぶ力も残っていない。

 絶望的な状況に、プテラたちは諦めたかのように脱力する。


 そんなプテラたちに、シエルは胸元から取り出したポーションを振りかける。

 すると以前に別の恐竜をテイムしたときのように、プテラたちが恭順の意思を示すかのように、シエルに頭を差し出したではないか。


「テイム成功のようですね。タマ、お願いします!」


「にゃん(了解だ、ご主人)!」


 アリアに鳴いて応えると、タマは固有スキル《獅子王ノ加護》を発動する。

 皆の体が、黄金色の輝きに包まれる。


「なるほど、そういうことにゃね!」


 ヴァルカンもアリアの考えに合点がいったようだ。


 タマの《獅子王ノ加護》には、あらゆる耐性を上げる効果がある。

 それを利用すれば、プテラに乗っても、風や温度による影響を和らげることができると踏んだのだ。


「プテラに乗るのは初めてですが……やってみましょう」


 そう言って、プテラの背中に乗り上がろうとするシエル。

 その意思を汲んだのか、プテラはそれを受け入れるように姿勢を低くする。


「楽しそうなのだ!」


 ワクワクした様子で、シエルの後ろに乗り込むステラ。

 皆も他のプテラの背中に乗り込んでいく。


 そして――


「ぐははははははは! 気持ちいいのだー!」


「空を飛ぶなんて初めてです〜!」


 ――天高く飛び上がり、そのあまりの心地よさに声を上げるステラとフェリ。


 他の皆も、爽快……! といった表情をしている。


 アリアに関してはヴァサーゴ戦で、ベヒーモス第三形態となったタマに乗ったこともあるが、あの時は戦いに夢中で飛行を楽しむ余裕などなかった。なので、今回の空中飛行は楽しくてたまらない様子だ。


「ふぅ……やっと気分が戻ってきたよ」


 プテラの上で、マイを前に乗せてセドリックが苦笑する。

 どうやら早朝にシエルの肌を見てしまったことをまだ引きずっていたようだ。


 空中移動して少し経ったところで、目的地であるホロの里が見えてきた。

 そばには湖があり、たくさんの石造りの建物、その中には大きな屋敷のようなものも確認できる。もはや里というより、一つの大きな都市である。


「皆、そろそろ着陸しましょう」


 そう言って、身を屈めるシエル。

 その動きに連動し、プテラがゆっくり降下を始める。

 初めて乗るモンスターでも、乗りこなしてしまうあたりは、さすが勇者というべきか……。


 アリアたちもそれに倣い、プテラを降下させてゆく。

 里から少し離れた場所に、皆は無事に着陸する。


「楽しかったのだ!」


「今度からプテラに乗れば、移動も楽ちんにゃね!」


 楽しげな表情を浮かべながら、やり取りを交わすステラとヴァルカン。


 プテラで移動している間、落ちないようにアリアの胸の谷間に挟まっていたタマも、地面へと着地する。


「さぁ、里の中に入りましょう。まずは〝族長〟のもとへ行き、事情を説明します」


 そう言って、アークボールの中にプテラたちをしまうと、里の方へと歩き出すシエル。


 皆もそのあとを、歩き出すのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ