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124話 三つの首を持つSランクモンスター

「高速機動する、四つの小型の大砲のようなものを操るスキル……あんなものは初めて見ました……」


「タマ、あなたはまだ固有スキルを隠し持っていたのですか?」


 敵を殲滅し終わったところで、シエルが改めて驚きの声を漏らし、アリアがタマに問いかける。


 そんなアリアに、タマは「にゃ〜ん?」と首を傾げ、いつものようにとぼけてみせる。


「グフフフ……どうだアリア、我とタマのコンビネーションはスゴいだろう?」


 クラウソラスに付いた血を払いながら、自慢げに言うステラ。

 アリアは「むっ!」とした表情で、ほっぺを少し膨らませる。


(あ、この流れは……)


 このままでは、またもやアリアとステラによるタマ争奪戦が始まってしまう……。


 それを察知したタマは、こっそりと二人のそばから離れると、フェリの胸にぴょんっ! と跳躍した。


「タマちゃんすごかったです〜!」


 跳躍したタマをそのまま抱きしめ、彼の頭を撫でるフェリ。

 そんなフェリに、リリが「あ〜! フェリだけズルイわよ〜!」と言って、タマの背中にダイブしてモフモフし始める。


 無邪気なリリとフェリの様子に、アリアとステラは――


「む、むぅ……仕方ありません」


「今日の勝負は持ち越しなのだ……」


 ――と、毒気を抜かれるのだった。


「敵も殲滅できたことだし、ここらで少し休憩しようか」


 周囲の安全を確認し、セドリックがそんな提案をしてくる。


 一刻も早く魔王ベルフェゴールの元にたどり着きたいところではあるが、疲労が原因で敗北しては元も子もない。


 アリアたちは大人しく、セドリックの提案を受け入れる。


 ◆


「えへへ〜、タマちゃん可愛いの〜」


 うっとりとした表情を浮かべながら、タマを抱きしめるマイ。


 小さな女の子の相手をするのも、騎士の務めと言い聞かせ、タマは大人しく彼女の胸に抱かれている。


「つ、次は私が抱っこしたいのですが……」


 そわそわした様子で、マイに話しかけるシエル。


 どうやら、港町ペクラで、タマを抱っこして散歩した際に、彼の抱き心地が病みつきになってしまったようだ。


「なんだか不思議な光景ですね……」


「大魔導士の娘と、現役の勇者、そんな二人が猫ちゃんに夢中になってるにゃん」


 マイとシエルの姿を眺めながら、アリアとヴァルカンがそんなやり取りを交わす。


 未来からきたというマイ、そして一見クールな見た目のシエル。


 二人の、魔導士の娘、そして現役勇者というステータスも手伝って、アリアたちは当初距離を感じていたのだが、こうして見ると二人ともただの可憐な少女だ。


 そんな二人に、今ではどこか親しみやすさを感じてきている。


 タマを通じ、短い時間ではあるが様々なやり取りを交わすと、一行は次の階層へと向かう。


 ◆


「あと二つ階層を越えれば、ベルフェゴールの元にたどり着くのですが……これは厄介ですね……」


 階段を降り、次なる階層へとたどり着いたところで、シエルは溜息を吐く。


「まさか、アレは〝ギュドラ〟……ですか?」


 シエルと同じ方向を眺め、声を漏らすアリア。


 彼女――否、皆の視線は一箇所に集まっている。


 そしてその瞳には、三つの頭を持つ大蛇の姿が映し出されている。


 その名はギュドラ――


 この世界に何種類か存在する、Sランクモンスターのうちの一つだ。


「まさか魔王と戦う前に、あんなモンスターが現れるなんてね……。これもベルフェゴールの存在が影響しているのかな?」


「恐らくそうだと思います。魔王の放つエネルギーは、迷宮の動きを活発化させることがありますからね」


 セドリックの言葉に、頷きながら応えるシエル。


 どうやらここの迷宮でも、迷宮都市でヴァサーゴが復活した時と同じ現象が起きているようだ。


 四魔族のヴァサーゴが復活した時は、せいぜいトロールが出現する程度だったが、魔王ともなればSランクモンスターであるギュドラを生み出してしまうほどに、迷宮に与える影響は絶大なようだ。


「よし、ここは僕に任せてもらおうか。シエルさんやマイちゃん、それにアリアさんにタマちゃんを、こんなところで消耗させるわけにはいかないからね、みんな、先に行っててくれ」


 腰から剣を引き抜きながら、セドリックが言葉を紡ぐ。

 どうやら一人で、ギュドラの相手をするつもりらしい。


「そんなの無茶にゃん! ……って言いたいとこだけど、セドリック様なら大丈夫にゃね……」


 少し笑みを浮かべながら、そんなことを言うヴァルカン。


 普通であれば反対するところだが、セドリックは四魔族が呼び出した召喚獣を相手取れるほどの凄腕だ。ここは任せて問題ないだろう。


「おじさまが強いのはわかってるけど、くれぐれも気をつけてなの!」


 心配そうな表情で、セドリックの腕に抱きつくマイ。


 そんなマイの頭を撫でながら――


「大丈夫だよ、マイちゃん。さぁ、ここは任せて先へ……」


 ――と、優しい声で言葉をかける。


『シュルルル……ッ!』


 どうやら、敵――ギュドラがこちらに存在に気づいたようだ。

 三つの口から蛇独特の声を漏らし、猛スピードで這い進んでくる。


「さぁ、みんな行ってくれ!」


 剣を構え、セドリックがギュドラに向かって駆け出す。


「セドリック様、御武運を!」


 アリアはそう言い残すと、ギュドラから距離を取りつつ、皆と次なる階層を目指すのであった――

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