110話 みんなで模擬戦
翌朝――
「ふふっ、おはようございます、タマ」
「にゃ〜ん!」
アリアとレオナの胸の中で目覚めたタマが、元気よく鳴いて返事をする。
「あらあら、タマちゃんとアリアは本当に仲良しなのね」
レオナも起きていたようだ。
互いの頬をスリスリと擦り合わせて、スキンシップをとるタマとアリアを見て、微笑を浮かべている。
「おはようございます、お母さま。起こしちゃいましたか?」
「大丈夫よアリア、それよりも二人の仲がいい姿が見れて、ママはほっこりよ♪」
そんな感じの会話を交わしながら、アリアたちは微笑ましい早朝のひと時を過ごすのだった。
◆
「みなさん、よかったら騎士団に見学に来ませんか?」
朝食の席で、レオナが言う。
「いいですね。一緒に戦う仲間です、この目で確かめたいと思ってました」
最初に反応を示したのはアリーシャだった。
さすが世界で三本の指に入る強者、戦闘に関する話となれば、すぐにその必要性を理解するのであろう。
「我も行きたいのだ! ついでに強いやつがいれば模擬戦もしたいのだ!」
次に食いついたのはステラだ。
その瞳は闘志でメラメラと燃えている。
最近はおとなしく、そして少女らしく振舞うようになってきた彼女だが、やはりもとはドラゴン。
戦ごととなれば、血が騒ぐ……といったところなのだろう。
「にゃ〜ん!」
「ふふっ、タマも行きたいようですね。リリちゃんとフェリちゃんもウズウズしてるようですし、みんなで行きましょう」
興味津々な様子のタマ。
互いに視線を合わせ、頷き合うリリとフェリを見て、アリアは気づいたようだ。
朝食を食べ終わり、出かける支度を終えると、皆で騎士団の兵舎へと向かう。
◆
「剣聖様! それにそのお連れの皆もよく来てくれました!」
興奮した様子で、一人の女性騎士が皆を迎える。
そんな彼女が、アリアを見つけるとニッコリと笑いかける。
昔からの知り合いなのだろう。
そして皆に向き直ると、自己紹介を始める。
「私の名は〝エイラ〟! この騎士団のアマゾネス部隊を率いる部隊長だ。よろしく頼む!」
ハキハキとした、口調で話す部隊長――エイラ。
銀の髪をショートカットにした、ダークエルフだ。
背中に大剣を背負っており、腹筋がハッキリと割れている。
どう見てもパワーファイターである。
「ほう……なかなか面白そうなやつがいるじゃないか」
そう言って、エイラがステラの方を見て、ニヤリ……と笑う。
見ればステラも同じような表情を浮かべている。
同じパワーファイター同士、似たような性格をしている……といったところだろうか。
そして、アリアとアリーシャを除いた皆が自己紹介を終えると、やはりと言うべきか、ステラとエイラが模擬戦をするという展開になった。
◆
場所を移し、騎士団の兵舎の庭で――
「それじゃあ、いくのだ!」
「おう! どこからでもかかってきな!」
互いに声を掛け合ったところで、ステラがカラドボルグとクラウソラスを手に、エイラに向かって突っ込んでいく。
ステラのカラドボルグによるチャージアタック。
それをエイラは大剣で受け止めた。
盾と剣がぶつかり合い、激しい音を鳴らす。
「これらならどうなのだ!」
ステラがカラドボルグをうまく滑らせ、そのまま回転し、クラウソラスによる一文字斬りを放った。
「おっと! ただのパワータイプかと思ったら、しっかりとした剣技を放ってくるじゃないか!」
楽しげに笑いながら、ステラの剣撃をバックステップで避けるエイラ。
かと思えば、その場から一気に飛び出し、大剣のリーチを活かした突きを放ってくる。
「クラウソラス!」
クラウソラスを突き出し、ステラが叫ぶ。
するとクラウソラスの切っ先から、先ほどカラドボルグで受けた衝撃波が放たれた。
「ぐぅぅぅぅぅぅッ!?」
突如発生した衝撃波を受け、後方へと吹き飛ばされるエイラ。
しかし、その途中で地面に剣を突き刺し、壁に叩きつけられるのを回避する。
「な、なかなかのダメージだ……。スキルか? だが、次はそうはいかないぞ!」
一瞬だけツラそうな表情を浮かべるも、再び剣を構え直すと、再び突っ込んでくるエイラ。
「ぐはははは! 倒し甲斐があるのだ……!」
相手がタフであればあるほど、戦いは楽しい!
力と力のぶつかり合いに、ステラは歓喜する。
「アリーシャ様……!」
「ふふっ、その様子だと、アリアちゃんも戦いたくなってきてしまったみたいですね。いいでしょう、久しぶりにわたしと模擬戦です♪」
そう言いながら、剣聖アリーシャは、前と同じようにスカートの中から木刀を取り出す。
やはりアリアに対して真剣を出すにはまだ早いと感じているようだ。
だが、アリア自身もそれは承知の上だ。
むしろ、自分も戦いたいという理由だけで、アリーシャが模擬戦に応じてくれるなんて、嬉しい限りである。
(ご主人よ! 召喚獣たちとの戦いで得た戦闘技術を、剣聖アリーシャに見せつけてやれ!)
アリーシャと対峙するアリアを見つめながら、タマは心の中でエールを送る。
リリとフェリも近くにいたアマゾネス隊の隊員に、それぞれ模擬戦を申し込み始めるのだった。




