7話 仲間二名追加
クレシェンド広場。
中央に大きな噴水と女神の像が飾られた、プレリュードの住人達憩いの場である。
ALOのゲーム内では、プレリュードに《テレポート》するときの着地場所だった為、常に多くのプレイヤーが居た記憶がある。ある者は待ち合わせの場所に、ある者は露天を開く場所に、昼夜問わず多くのプレイヤーが訪れる場所の1つだった。
しかし、今は《テレポート》を発動させる事が出来なくなっているため、プレイヤー達がこの場所に集まることは少ない。その代わり、ゲームより多くのNPC(住人)が集まっているようだ。
キリエとシュウは、噴水の前で待ち合わせの人物達を待っていた。
数分前シュウが、また何事か空中を弄り独り言を呟きだしたかと思うと、『噴水の前に1時だな、解った』、と呟き唐突にこの場所にキリエを連れて来たのだ。
仲間を呼ぶ…と、言ってたが、キリエは連絡にもっと時間が掛かると思っていた。最悪、蜘蛛退治は明日になるなと覚悟していたのだ。
本当にどうやって連絡をとったのだろう?
謎である。
そして、約束の時刻の10分前。
その男が広場に現れた。
禍々しい漆黒の鎧に身を包み、大剣を背中に装備した人間(?)…
なに、コイツ…絶対にお近づきになりたく無いんですけど…
邪悪なオーラを垂れ流し、まるで地獄からの使者のようなその化け物は、しかし、残念ながら、徐々にこちらに向かって来る…
え…、なんでこっちに来るのよ!!
とうとう、ワタシ達の前まで来たその人間。
近くで見ると、その邪悪なオーラに気圧されそうになる。ワタシは無意識にシュウの後ろに隠れていた。
ヤバい、コイツ、絶対に化け物だ…
しかし、その鎧が発した声には聞き覚えがあった…
「おおお、麗しの大天使・キリエちゃん…今日も、お美しいかぎりです。
…おい、《シュウ》テメェー、何一人で抜け駆けしてキリエちゃんとお近づきになってんだよ!!」
あ!! コイツ、アイツだ…酒場に転移した転移者の中でワタシのことを『天使』とか言ってたヤツ。
わーーーー、外見が凄い事になってる……、顔は覚えてないけど、こんな鎧は着てなかったもんなー
「《黒鉄》さん、ちゃんと経緯はお伝えした筈ですよ?
俺は抜け駆けなんてしてません」
「ちっ、…まぁ、いいだろう、天使の為なら俺は力を貸すまで…
ねぇ、キリエちゃん♪」
え、なに、どうしたの?
つーか、ワタシのこと《天使》とか言うな〜〜〜〜
ワタシが敵意の籠った視線をソイツに向けると、ソイツは何を勘違いしたのか…
「はっ!!! 俺とした事が、キリエちゃんにに俺の名前をお伝えする事をわすれていた!!」
なんか、一人で騒ぎだすと、ワタシの前に膝を付き、いきなり手を取って来た。
なに、コイツ…
「キリエちゃん、俺の名前は《黒鉄》、天使を守る為に天界より使わされた漆黒の戦士です」
「はぁ?…」
「そして、《キリエファンクラブ》の副会長も勤めさせてもらっております、どうか、お見知りお…」
「ちょっと、待って」
なに、キリエファンクラブって?
絶対に碌な団体じゃないよね?
「ふむ、なにか問題でも?」
「キリエファンクラブって、なによ!!」
シュウは苦笑いを浮かべ成り行きを見守っていた。
なんとなく、奇妙な光景ではあるが微笑ましいな…
ん、もう一人の仲間が来たようだ…
ゆっくりと歩いて来る長身の女性。
「やぁー、みんな来てたんだぁ、はやいね」
「《ケイさん》もお久しぶりです」
「む? キリエちゃん、キリエファンクラブの崇高なる目的に付いてはまた後日…おい、《村人K》!!
キリエたんを待たせるとは何事だ!!!」
「ちょ…『たん』は止めて、『たん』は!!!」
ワタシが黒鉄に抗議すると、《ケイ》とか《村人K》とか呼ばれた女性が優しげに笑った。
長い茶色掛かった髪をポニテールにした長身の女性…身につける装備は、黒鉄やシュウに比べて非常に軽装だ。武器も腰に差した短剣しか見当たらないが、シュウは何も無い場所から武器を出すし、この人も何か武器を出すのかもしれない…
「やぁ、キリエちゃん初めまして(?)〜。
お姉さんの名前は《村人K》。気軽に《ケイさん》と呼んでくれていいよぉ〜。
えーと、ああ、後ねぇ一応キリエファンクラブ遊撃部隊隊長やってるんだぁ。
ヨロシクね♪」
《ヨロシクねぇ♪》の所で抱きつかれた。
何この人、初対面で抱きつかれた!!!
しかも、なに、この肉厚…く、苦しい…息が、息が止まる…
つーか、名前が《村人K》なの!?
「その辺りにしておけ、村人。
さもなくば、俺の剣の錆にしてくれるぞ!!」
黒鉄が大剣に手を掛ける。
そこで、いつの間にかワタシを襲っていた肉厚は消え去り、ケイはゆらりとシュウの横に移動する。
「ちぇー、お姉さんもうちょっと遊びたかったのに〜」
「はぁ? うっせぇーよ、《状態異常の申し子》がなに可愛子ぶってんだよ!!」
「あははは、お姉さんそんなにコワく無いよー?」
「二人とも、そろそろ止めてください。
キリエちゃんが困っているじゃ無いですか」
悪戯っぽく笑う長身の美女…
禍々しい鎧を身に纏った巨漢…
いまいち、何考えてるのか解らない青年…
ああ、ヤバい…コイツ等に任せて本当に大丈夫なのだろうか?
キリエの受難は続く。




