目が点
声が出ない
試合が終わり、途中まで虹恋ちゃんと共に帰っていて、手を振ってまた明日会おうねと話していた。そして、杏菜が家に入ろうと振り返ると虹恋ちゃんがいた。
あれ、虹恋ちゃんどうしたの?何か忘れた物あった?そう聞いて焦る杏菜。
「杏菜ちゃん、虹恋ちゃんいつでも家に遊びに来ていいよって言ってたでしょ。読心術で。ダメならこのまま引き返すけど……」
振り返ったらそこにいる虹恋ちゃん。昨日お泊まりしたから帰ってと言えるほど肝が据わってはいない。どう考えてもこのまま帰らしたら杏菜が悪くなる。
虹恋ちゃんをよく見るとユニフォーム姿でもなければさっきまで担いでいたリュックサックもない。
単純に杏菜の足が遅くて虹恋ちゃんの足が速いとかそういうレベルではない。着替えをお泊まりする前に予め用意して、いつでも杏菜の家に行けるようにと準備をしていたのかと色々な推測をしていた。
虹恋ちゃんを家に上げる杏菜。
すると杏菜ママに叱られた。
「ちょっと、今日も虹恋ちゃん前もって言ってくれないと困るでしょ。どうして練習が終わったら呼ぶって言ってくれないの」
ここだけ切り取って見たらそう言われても仕方ないと感じている杏菜。虹恋ちゃんこういう時こそ読心術でも何でもいいから言ってくれと願っていたが何の言葉も出てこない。
虹恋ちゃんが家に上がると、杏菜ママが今から買い物行ってくるけど何を食べたい?そう尋ねられた虹恋ちゃん。
すると杏菜ママが拍子抜けした。
「今日、食べさせてもらったお昼ご飯とっても美味しかったです。よければまた同じ料理を食べさせてもらえると嬉しいです。すみません、家に上がらせてもらっているのに」
晩御飯は食べるとして、もう1日泊まるのかな?別に杏菜としては構わないし狭いベッドで寝てもらう形になるがそれでとよければという気持ちでいた。
杏菜ママが買い物から帰って来て、お昼ご飯の残りでもないのに同じ物が食卓に並ぶ。虹恋ちゃんのリクエストとはいえど、ホントによかったのと聞き直す杏菜ママ。
「虹恋、またこれが食べたかったんです。今日の練習試合は前にいたリトルのチームとやって男の子が何人もお弁当のトレードを持ちかけられるくらい人気でまた食べたいなとおもったのでとても有難い気持ちです」
照れる杏菜ママ。こんな姿始めてみるなと横目で見ていると杏菜パパが試合はどうだったか聞いた。
「パパ、虹恋ちゃんはホントにスゴい。1試合目にバッターとしてサイクルヒットだけでなくピッチャーとしても3者連続3球三振だっけ?イマキュレートイニングって言うのをやって。それだけでなく、第2試合では3ランホームラン、2ランホームランに満塁ホームラン、ソロホームランというまさかのサイクルホームラン打って驚いた」
杏菜パパが口を開く。
「虹恋ちゃん、謙虚だし礼儀正しいのにリトルリーグとはいえど、打っても投げてもスゴいことしてるのに驕らず物腰が低いって人として尊敬するよ。よければいつでも遊びに来てくれてもいいし、いつでもお泊まりしていいよ」
すると横にいる杏菜ママが口を開いて、買い物から家の掃除に洗濯物、シーツとかの天日干しとか全てやってるの誰だと思ってる?そう言うとぐうの音も出ない杏菜パパ。
虹恋ちゃんがクスッと笑ってくれたお陰で何とか場がもったと言っても過言ではなかった。




