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131話 夜闇の密会


◇◇◇◇◇



陽が落ち、

暗くなった空には星々が賑わいを始める…


…たが、

この場所には星々の光は届かないようだ。


靄のような暗い湿った空気が辺りに纏わりつき

闇が完全に支配する空間…


ダルムのスラム街を抜けた更に先…


人々が恐れ、忌避する廃墟…

夜よりも暗い闇の中に、

か弱い蝋燭の火だけが、

心細く…または不気味に揺れていた。


そんな仄かな光りが映し出すのは、女のしなやかな身体だった。レースの頭巾を目深に被った姿の女は、

蝋燭を横切り、主の元へゆっくりと歩いていく。


そして跪き、徐に主の手に口付けを落とす。



「申し訳ありません…あの悪魔を逃してしまいました…」



頭巾の女は震える声を絞り出し、主に詫びる。



「ふん…あの悪魔を匿っている冒険者らがいる…という報告だったな?

…あの小悪魔め、情を誘い、人間に取り入ったか…」


「女冒険者は腕が立ち…難儀してしまいました」


「まぁいい。

あんな低級小悪魔程度…逃げたとしても長くは生きられまい」



口を縫い付け、生きる為の糧を摂る事を禁じたのだ。


元々…主が複数召喚した悪魔共は、ごく短期間のみの用途として召し出した。

いわば使い捨ての悪魔共だった。


主にとって、命令に背き逃げ出したのは癪だったが…

どのみちすぐに、死ぬ事にはなるだろう。



「それよりも…お前が手こずる冒険者の方が

気にかかるな…」



数日前…

ダルム荒野で、主の右腕だった部下が何者かによって消滅した。


部下は主に次ぐ実力者だった。

並の冒険者では到底敵わない筈だったのだが…



杞憂かもしれぬが…万一、部下を倒した者が…この女の言っている冒険者と繋がりがあったとしたら…捨て置きはできぬ。


例え無関係だったとしても…

実力のある冒険者は早めに芽を摘んでおくのが得策だろう。



主と呼ばれる者は、頭巾の女の顎を持ち上げ、

新たな命令を下す。



「その冒険者なる者達を…この廃墟へ招待しろ…なぁに、手段は選ばぬ。

…できるな?」


「…はい」



否とは言わせぬ命令だった。

頭巾の女に拒否権は無い…

だが、それ以上に頭巾の女は、この主に心酔していた。


蝋燭の灯りが主の姿を仄かに映す。


白磁の陶器のように白い肌、頭巾の女よりも更に豊満な胸、赤く扇状的な唇…

主と呼ばれる者は、妖艶な美女だった。


だが…身体に特筆すべき点は他にもある。


その灰色の艶やかな髪…その頭部には、鋭利で禍々しい角が生えていた。


更に白く形の良い尻の付け根には、爬虫類のそれのような尻尾が太く揺れていた。


美しい容姿だが、


女主は人間では無かった。


その紫に妖しく揺れる瞳が如実に語る…


魔界の者だと…


頭巾の女はそれでも構わなかった。


女主の瞳に魅せられる…

その形の良い指が、頭巾の女の体に触れていく。



「話しは終わりだ」



女主は、頭巾の女の腰に手を回し引き寄せる。

形の良い唇を指で弄びながら、女主は頭巾の女に顔を近づけていく。



「主…様…」



頭巾の女は堕ちていく…蕩けるように深淵へ。



◇◇◇◇◇


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