1話 元奴隷傭兵転生する
◇◇◇◇◇
俺は田依零人(49)仕事の依頼中だったが、
…たった今、敵の銃弾を浴び、死んだと思う。
何故こんな事になったのか…
幼い頃、海外旅行中に誘拐され
奴隷兵として売られたのが運のツキだったか…
幸いにも…実力と悪運に恵まれ、
生き残る事ができ…
数年前には、奴隷兵の役目からも
解放されたのだが、結局は裏社会の仕事を
続けていた…
しかし今回の仕事を最後に引退を
予定していたんだ。
「まあ、思えばこんな依頼は罠だったのかもな」
最後の依頼は…やけに珍しい、
人命救助の依頼だった。
守衛救助対象を逃す為、俺は囮となり
敵の発砲する銃弾を受けた。
「体は蜂の巣だ…もう助からないだろう」
思えば、しようも無い人生だった。
自分の本意では無いにせよ…
生死を分けた戦いに明け暮れ、
戦場では、死を呼ぶ最恐の殺戮魔王…
などと呼ばれ恐れられもしたが…
人を信じず孤高を貫き
心を通わす恋人も友も…
信じる仲間すらいない…虚無な人生だった。
「だが…最期に子供達を救えたのは
…上出来だった…かな」
守衛対象の五人の無垢な瞳を思い出し、
俺の意識はそこで途絶えた。
次に目を開けると…
そこは真っ白な世界だった。
「ここは…どこだ?」
俺は意識の覚醒と共に困惑した。
夢でも見ているのか?
それにしては…妙にリアルだ。
俺は死んだ…筈だが…
どう見ても、病院では…無さそうだし。
やはり天国なのか?
「天国…というより、天界ですね」
心の中で考えていた筈の疑問を
何故か誰かが答えていた。
「む⁈誰だ??」
慌てて声の方を振り向けば…
純白のゆったりとした布を
巻き付けた青年が立っていた。
ギリシャ神話に出てくる人物みたいだ…
と、思っている場合ではない。
「貴方は死に、ここにいるのです」
死んだ…
やはりここはあの世か?
「あの世とは少し違いますね」
ん?さっきから…この人物、
俺の思考を読んでないか?
「はい、私は神なので」
神様だったか!それっぽい!
いやいや、関心してる場合じゃない。
今の状況は…
夢なのか、現実なのか…
俺には判断ができない以上…
一旦、受け入れて話してみるしかない。
「じゃあ、俺は天国行き?いや、地獄かな…
それとも…また人間に転生でも
させてくれるのか?」
いっそ、生まれ変わって…
人生やり直したいところだ。
今度こそ普通に生きて、恋人や友達を
作ってみたい…
現実では起き得なかった願望を
期待してみるが…
「いえいえ、貴方は既に転生済みです」
神様から、意外な言葉が返って来た。
既に転生済みって?
ここ、真っ白で何もない空間なんだが?
さっき神様も…
天界だって、言ってたと思うのだが?
俺の頭にハテナ?が立つ。
そんな俺を見て神様はニッコリ笑う…
「この天界が貴方の転生先です!
貴方は神になりました」
とんでも無い話だ!俺が神様だって⁈
改めて自分の姿を見てみる。
目の前の神様と同じ純白の布を纏っていた。
しかも、髪も長くて…銀髪だ!
容姿も変わっているのか…
あれ?
待て待て…
モフって、ちょっ…??
胸元に手を当てたら…何か膨らみが…?
しかも、下半身に付いてるモノが
無い…⁈
待って?!
俺……女になってるのか⁈
「はい、女神に転生したのですね
とても魅力的でお美しいですよ」
目の前の神様は微笑みを絶やさないが
ちょっと?待て?
中身はおっさんのままなんだが??
(角刈りマッチョの汚い無精髭ヅラの)
納得いかない、
というか、困惑しまくってる!
(正直女の子の体なんて触った事もなかった)
そんな俺を他所に、神様はベラベラと
説明を始める。
「この天界の神々には、特別な能力が
あるのです。
神として誕生してから、一度だけ…
世界に何かの創造物を生み出す事が
できるのです」
「おお…神様っぽいな!それで…世界って?」
神様が俺に手招きすると、
前方から赤く光る空間が見えて来た。
「この下に…我々神が一つずつ創造して
出来上がった世界があるのです」
赤い光りの下を覗きこめば…
大地があり、森があり…海があった!
「大地を生んだ神、植物を生んだ神など…
神々で力を合わせて創ったのが、
この世界です」
そして、神様は俺を指差す。
「貴方も…神になったのですから…
いずれ何かを生み出すでしょう」
俺が…生み出す?何をだろう?
少しだけ、ワクワクするかもな。
人間に戻れないのは残念だが…
どうやら、この『世界』ってのは
俺が生きていた世界とは別物らしい。
異世界って、やつだ。
俺は…転生して神となり…
この異世界の創造主になるのか。
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