2話 俺が生み出したのは…
◇◇◇◇◇
そんなこんなで…
どれくらい時が経ったのだろうか?
ついに、その時が来た!
俺が "何か" を生み出す…創造する日が…!
身体が熱く脈打つ。
何かのエネルギーが俺から出ようとしていた。
「ついに、貴方も生み出すのですね!」
周囲の神々も祝福する。
俺は…何の創造主になるんだ?
だが、生み出すと言っても、妊娠出産…というような形ではない。
(当然、誰かと子作りなどしてないし)
神の分身…または、力を放出…
といったイメージだ。
…体の中心が熱くなり、光を宿す。
「いよいよか…」
期待を込めて体から出て来た存在を確認する…
が…
それは…
この純白の天界には相応しくない、
禍々しい暗黒の塊…だった。
「ああ…これは…⁈ 」
神々も驚愕する。
「ついに…来てしまったか」
「正と対なす存在!」
「天の反物質!」
「闇の存在…」
「…魔王だ!!」
は?…魔王?
って、あの?悪役とかの??
はあぁぁぁぁぁーーっ⁈⁈
その禍々しい闇は、やがて人の形に形成され
言葉を発した。
「ああ…やぁっと出て来れたのね!
これで、やっと好き放題暴れられるわ」
…聞き覚えのある声だった。
それは、田依零人として死ぬ直前に聞いた…
あの、耳障りな甲高い声だ。
「なんで…?あの声?…誰なんだ?」
俺の愕然とした呟きに神様は仮説を口にする。
「生み出されたあの闇…魔王は…
貴方の中に眠っていた闇が…人格を持った存在なのかもしれませんね」
「俺の中の闇が…人格を??」
信じられないような話だが…
神がいれば、異世界もある、こんな状況では…
そんな事もまた、起きうるのか…?
前世の俺は…傭兵として様々な罪を犯し…また闇を背負ってきた自覚はある。
それが魔王を生み出してしまったというのか?
そんな、自業自得としか言いようの無い状況に
俺は愕然とし、膝から崩れ落ちた。
戦地では殺戮の魔王と呼ばれ
散々その手を、血で染めていた…
強制的に奴隷傭兵として望まぬ戦場に出ていたとはいえ…だ。
俺の魂は…邪を生むほど汚れているのだ。
その暗黒の塊…魔王は、
神々が築いた世界へ向かっていく…
「世界へ行く気か⁈ダメだ!!
魔王なんて存在したら…世界が壊れてしまう!」
俺は阻止したかった。
下の世界は無垢な、非常に美しい世界だ。
質素に生きる人間達や動物もいる。
これ以上…俺の所為で命を失いさせたくは
無かった!
俺は…変わりたかった!
しかし、
一度生み出された存在を
神自身が消す事はできないルールらしいのだ。
下界…神々が創った世界上の存在として、
自然淘汰する以外には無い…と。
つまり…
神として、生み出した魔王を消せないなら、
神を辞めて下界へ降りれば倒せる?
「…いえ、そう簡単にはいきません。
貴方が生み出した魔王は…
下界へ降りても、貴方が直接その手にかける事はできません」
「魔王もそれは同じで…相互不干渉という
ルールは下界でも施行されます」
「しかも堕天すれば…神としての力は
その大半が無くなります」
神として、下界への干渉はできない。
魔王を直接手に掛ける事はできない…
要は…
他の誰か…
魔王を倒せる存在…協力者を探せという事か?
…なるほど、
やってやろうじゃないか!
下界へ降り、協力してくれる仲間を探し…
魔王を消し去る!
かくして、
中身おっさん女神は、堕天し、地上へ降りる。
己が生み出した魔王…討伐のために!
俺が決意を固めた…そんな時。
魔王が邪悪な闇のオーブから.…人の形へ姿を変えたのを目にする…
そして、
俺はもう一度、膝から崩れ落ちる事になる。
「ちょ…お、おい、待て待て!!
魔王…キサマ!その姿…!?」
魔王のその姿は…
何よりも見慣れた、その姿は…
前世、傭兵だった頃の田依零人…
俺自身の姿そっくりだったのだ!
『あーあ、こんなムサイおっさんより、女の子の姿が良かったわぁ…
まぁ、いいけど!
アンタの体は私が貰う!
せいぜい好きに使わせて貰うわよ?』
魔王は、そんな捨て台詞を残し、
長年鍛え上げた、精悍な俺の体に似つかわしくない、内股気味に尻を振りながら消えていく。
冗談ではない!
(いや、マジで内股はやめてくれ)
俺の元の姿で好き勝手は許さない!
「魔王を倒せば…もしかしたら、
元の体に戻るかもしれませんね?
頑張ってくださいね」
神様が信憑性も無い事を適当に口走り、
ニッコリ微笑む。
まったく、この世界の神様は良い性格だよ!
ボヤきながらも俺は、
赤く発光する下界への入り口…
光の中へ入っていくのだった。
◇◇◇◇◇




