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そして、それから

 


 あの告白の翌日、クライドは騎士団に無事入隊。

 その実力や人柄の良さからあっという間にトントン拍子で出世していき、今や一つの部隊の隊長だ。


 大勢の部下に慕われて、仲間と毎日切磋琢磨しながら、充実した日々を送っている。




 長く一緒に暮らしているおかげで女性の扱いにも慣れてきたようで。

 かといって遊び回ってる訳でもないけど……なんとなく雰囲気に余裕が出てきた。


 自分で言うのもなんだけど、それはもう涙ぐましい努力の賜物……

 何も知らない彼に、気づかいや振る舞い方などを何度も何度も辛抱強く伝え続けてきて……やっと今。

 なかなか骨が折れる作業だった。思い出すとちょっとうるっとくる。




 でも逆に、そのせいでちょっと問題もあって。


 とにかく周りの女性からの誘いが多い。結婚してから逆に増えてしまった。

 とはいえ、当の本人も立場上邪険に扱う訳にもいかずなかなか困ってるみたい。


 堂々と家のポストにラブレターらしいものが入っていた時は、思わずその場で卒倒しそうになった。


 ちゃんと毎日指輪はしてるけど、どうにも彼女達の目には見えていないようで。

 『恋は盲目』?まぁ、そりゃそうなんだろうけど……


 既婚者が魅力的に見えるのはいつの時代、どの世界でもよくある話らしい。




 あれから10年以上経って、顔やルックスだって年相応といった感じ。

 別に全然若い子にキャーキャー言われるようなもんじゃない。


 持ち前の(?)無精髭や汚い格好だって、気を使わなくなった今じゃすっかり元通り。

 また昔のように布が裂けたり穴が空いたりしたのをそのまま平気で着ようとするから、気が抜けない。


 年を経てシャープだった顔はいかつくなり、皺も増えた。

 ハリが無くなり弛んできた目元、艶が無くなり色褪せてきた髪。

 ……まぁそう言う私ももうおばさん、人の事ばかり言えないけど。




 引き締まった体は今もなんとか健在だ。

 騎士という体を使う仕事のおかげで、中年太りはまだなんとか回避しているけど……


 次の昇級で事務仕事がメインになってしまうと聞いていて、内心ドキドキしている。

 もちろん若い時とは違う意味の動悸。


 代謝は落ちてきてるはずなのに、今も相変わらず若い頃のようによく食べ、よく飲んで……なもんだから。


 ビール腹のおじさんはちょっと勘弁……




 もうあの頃の豪快さや勢いは落ち着いて、すっかり大人しくなってしまったクライド。


 でもそれはそれで、昔とはまた違った成熟した色気があって。

 今や恋心は家族としての愛情に変わってしまったけど、未だにふとした時にときめいてしまう。


 私の心はまだ彼に恋し続けているようで。


 それは決して刺激的な弾けるような恋ではないけど。

 胸の奥がじわじわとゆっくり熱を持って……ああ、やっぱり素敵な人だなぁってじんわり噛み締めている。




 ちなみに、私の方はというと。


 今もあの店で働いている。

 あの店、といっても昔いたところは本店になっていて、今の私は新しくできた『城下町支店』の方で仕事をしている。


 売上が順調で店の規模が大きくなり……本店にはヴィルヘルムさんと娘たちが、ここ支店にはレベッカさんと私が取り仕切っている。

 店員もあれから大幅に増えて、昔と違ってかなり賑やかな雰囲気になった。


 私はそこでベテラン店員として新人達の指導やレベッカさんのサポートとかをしながら、毎日なんだかんだやっている。


 今や国王になられたレオナルド様。

 来店からもう何十年も経つのに、この店をまだ覚えていただいていて。


 あの日のメロンがとてもおいしかったようで定期的に購入されるようになり、いつの間にか定期的に季節の果物を宮廷に献上するようになった。


 ちなみに昨日がちょうどその日で、カゴいっぱいに色んな種類のリンゴや梨、柿を詰めて宮廷に送った。

 今回のは特に甘味が強く味も濃厚、きっと喜んでくれるだろう。


 彼の子供達もここの物だと聞くと喜んで食べてくれると聞いているから、おそらく将来のリピーターになってくれるだろう。この先もしばらく安泰だ。




 そんなこんなで収入も安定してきてだいぶ貯金もできた。だから、今は城下町に一軒家を建ててそこで私達は暮らしている。


 共働きで旦那は騎士団長……さぞかし優雅な暮らしだろうと思われがちだけど。


 ……けど、実際余裕なんて全然なく。むしろ火の車だった。




 その原因は子供。


 まずは一人産んでそれから様子見ようとしてたのに……なんと、いっぺんに二人増えてしまった。


 男の子と女の子の双子。


 完全に予想外だった。

 突然の事に家計も育児もてんてこ舞いだけど、でも結果オーライ。嬉しい誤算だった。




 そして今、二人とも学生。

 帝国初等学校……前の世界で言うところの小学校の、二年生。


 食べ盛りで、食べても食べてもすぐお腹が減ってしまう。

 小さい体で大人並み……いや、それ以上によく食べる。

 まだ発育途中のお腹に、よくそんなに入るなと感心するレベル。

 

 旦那も息子も食欲旺盛、娘まで男二人に負けない勢いでこれまたよく食べる……

 エンゲル係数なんて、とてもじゃないけど怖くて考えられない。


 抑えてはいるけどお酒代もそこそこ、加えて学費も段々増えていくしで、毎日汗水たらして稼いだお金がすごい勢いで消えていく。

 貴族の家ならこんなことないんだろうけど、騎士とはいえあくまで一般家庭であるこの家には余裕なんてほとんどなかった。


 でも、子供は問答無用で可愛くて。それが救いだった。




 二人とも性格が正反対なのがまた面白くもあって。


 兄、メイナードは大人しく人見知りな性格。

 くせっ毛でふわふわの金髪に青い目。ルックスは父親似。


 それに加えて、一体誰に似たのか……独特なとろんとした眠そうな目つきがまたなんとも味があって。

 将来結構モテそうな気がする……親バカ?


 今は彼の中で化石がブームのようで、そういう時だけすごい早口で知識をべらべらと喋る。

 まるで推しを語っているかのような勢い……母親、つまり私譲りのちょっとオタクっぽいところもあるみたいで。


 なんだかちょっと複雑な気持ち。

 そこまで熱心に興味を持ってくれるのは嬉しいけど……う〜ん。


 大きくなったら考古学者になるんだ!なんて言っているけど、どうなることやら……




 妹、クレイアは正反対のおてんば娘。活発で運動神経のよさは父親譲り。

 彼女もまた金髪だけど、私に似て目が茶色い。


 さらさらと手触りのいい髪にまん丸でくりくりの瞳はまるで西洋人形のようで、色々服を買っては着せ替え人形状態だ。

 何着せても似合うんだからしょうがない。親バカって言われてもやめない。


 学校でよくいじめられそうになる兄を助けに行ってあげているらしい。頼もしい子だ。

 将来は女性騎士として名を挙げたいんだとか。

 今は木でできたおもちゃの剣を振り回してよく遊んでいる。


 帝国騎士団なんて今も変わらず狭き門だけど、彼女ならなんとなくあっさり突破してくれそうで……父娘(おやこ)二人揃うかと思うとちょっと楽しみ。

 これまた親バカかもしれないけど。




 家計は常にギリギリ、子供達にはなんだかんだで振り回され、年々衰えていく体力。


 しんどい事、つらい事、多いけど……それでも。


 旦那、クライドからは未だに変わらずあの時のままの勢いで溺愛されていて。

 そして、そんな私達の要素を詰め込んだ可愛い子供がいて。


 いつも楽しい事ばかりじゃないし、つらく大変な事も多いけど……それ以上のものを彼らは返してくれる。




 色鮮やかな日々。

 とても幸せな毎日だ。


 溢れんばかりの幸福、両手でめいっぱい掬っても抱えきれないくらいの。


 いつだったか彼が言ってたように、私もきっと『世界一』なんだろう。

 『世界一の幸せな女』だ。






  ◇  ◇  ◇  ◇



 運命の相手とは、お互いに会うべくして出会った人。


 恋は結婚がゴール、でも愛は結婚してからも続いていく。

 恋人から夫婦になっても同じ気持ちのままいられるような、死ぬまで一緒に過ごせる人……それこそが運命の相手。


 この人に会うために転生してきたんだ、と今になって本当に思える……そんな人。




『乙女ゲームの世界に転生したのに、運命の相手は汚いモブでした』?


 いいえ。


『乙女ゲームの世界に転生した私の運命の相手は……汚いモブの皮をかぶった、最高の人でした』。



これで完結です。おつきあいありがとうございました。

もしよろしければ、評価やいいねお願いします!



以下、でっかい独り言。お暇があればどうぞ……


腕っ節とか物理的に強いけど、精神的になんだか頼りない男性が好きです。

それでいて女慣れしてなくて分かってなくて、見た目も野暮ったくて、スパダリの真逆を行くようなのだとなお良し。


普段は駄目人間、でもいざってときは体張って守ってくれる……っていうギャップ。良い……!!


そしてそれが好きな人とか恋人の存在によって発奮して変わっていくの、めっちゃ良くないですか……?!


私は好きです。というか大好きです!!大好物!!(?)


最初からイケメンで、何でもできて、女慣れしていて……というのもいいけど、パッとしなくてもさっとしてる方がもっと好き!


同士はきっといる……はず!多分!(笑)


長々わ〜わ〜騒いですみません。それでは本当にこの辺で終わります。

お読み頂きありがとうございました!

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