第二の事件のエピローグ
――私、アリシア・ウォルバートンがライラ・ローランドと組んで2つ目の事件。
――事件は大きく前進をしたが、同時に大いなる悩みをもたらした事件だった。
と、書いたところで私はペンを置いて大きくため息をついた。
昨日は悩みとなる事が多すぎた。
だって、考えても見て欲しい。
ライラの告白から始まり、レイノルズ君の誘拐。そして因縁のソフィア・コルチャークと再開し、ソレを探すために市街を走り回り、そして市街地を爆破して周り――ライラ曰くその行為を『テロ』と言うらしい――、異界の技術の塊を手にしているのである。
「半年で起こりうる出来事がわずか1日に凝縮されたと言っても過言じゃないでしょ……」
思い返すだけで胃もたれが思想な濃密具合だ。
ちなみにレイノルズ君を救出した後。学務に概要を話して、私は学校を休んだ。
元騎士団という肩書がある以上、真面目に学校に行くべきだとは思う。
けど、どうせ学校に行ってもあのままじゃ教室で痴態を晒すだけだろうと判断し、睡眠をとった。
多分、あの時の私なら水の上で寝ろと言われても寝れたと思う。
「で、今に至っているんだよね」
そんなわけで久々にしっかりと睡眠をとったはいいけど、ちょっと寝すぎた。
起きたら深夜の4時だった。
私が最後に時計を見たのが昼の11時頃だから、15時間以上寝ている計算だ。
相当な睡眠をとった以上、寝直すなど不可能に近い。
だから、こうして日記を付けているものの、書けないことが多すぎて悩んでいる。というわけだ。
「やめましょ、日記を書くのに悩むなんて馬鹿らしい」
そうして私は『色々とあった。後日整理して書く』と書きなぐり、日記帳を閉じた。
考えても無駄な事は仕方がない。
「それに、考えても袋小路。本でも読んで忘れるしかないかな」
と、図書室で借りてきた流行りの恋愛小説を手に取ろうとした時。パサリと床に何かが落ちた。
「そう言えば返却を忘れていたわね」
ソレは昨日付けていた騎士団の腕章だった。
騎士団の紋章と、警邏隊の紋章が描かれ、かつては誇らしげに付けていた苦々しい思い出の品だ。
「騎士団……か。入らなければ――」
――良かったのに。
と、言いかけたが、首を振って思い直した。
多分、入っていなければ私は今頃もっとひどいことになっている。
そもそも私が騎士団に入った理由は簡単で、領地運営と海外貿易で失敗したヴォルバートン家が財政的に厳しいからだ。
こういう場合、普通は誰かの所に嫁ぐか、修道院に行く。
当初父は修道院に私を入れようとしたが、あそこは剣も魔法も馬もない萎びた場所で、入ったら出ることの出来ない監獄だ。
あんまりに納得できない処遇に、私は「そんな環境に入るぐらいなら死ぬ」と大いに反対した。
結果、修道院送りは回避できたのだけど……男爵家という爵位が低く、傾いている家の娘を欲しがる貴族は皆無。
唯一名乗りを出たのが私の体目当ての成金の商人のボンクラのみ、といえばこの絶望的な状況が分かると思う。
それでも修道院に行くよりはマシと、私は絶望しながら自分の運命を受け入れようとした時。
私を哀れんだのか、父の知り合いであるコルチャーク家の娘、ソフィア・コルチャークが私を騎士団に誘ってくれたのだ。
私はわらにすがる思いで私は騎士団の入団試験を受けた結果。
合格。
天才騎士団員が見込んだという下駄もあったのだろうが、騎士団の試験を奇跡的にパスし、14歳にして騎士団の制服に身を通すことになったのだ。
そして、彼女を先輩と慕って私は騎士団としての任務に励むのだけど……
知っての通り、ソフィア・コルチャークは突然、騎士団を裏切った。
北部に出張中に突如、騎士団員20名を殺害し逃走したというのだ。
当初はなにかの間違いではないか?と噂されたし、私も誰かのひがみかと思っていた。
そして、そんなことがあるわけがないと思っていた。
騎士団の内部で手配書が出回り始めたにも関わらず、その事実が信じられなかった私は騎士団の規則を破り、単身彼女を探し出し、戻るように説得したけど……彼女は。
「貴方にはわからないわ」
そんな無情な言葉と共に、いきなり切りかかってきたのだ。
まさか斬りかかられるなんて思ってもいなかった私は反応が遅れ、気がつけば病院のベッドの上にいた。
しかも、あと少し外れてたら即死という重症で一ヶ月も意識が戻らなかったという過去がある。
だから、ライラがソフィアの説得に成功したといった時。私はその情報がにわかには信じられなかった。
彼には言えないが、ソフィアの説得成功を信じて疑わないライラの代わりに、彼女が裏切った時のプランAからDまでまで計画をしたほどだ。
「けど、ソフィアはレイノルズ君と藤木田の資料を明け渡してきた」
正直なところ信じられなかったが、事実は変わらない。
ライラは異界の叡智を餌にソフィアとの交渉を成功させた。
現に今、ライラが異界の物といった『ノートパソコン』が手元にある。
ライラがやっていたように、おもむろにソレを開くと、絵画のように美しい緻密な絵――ライラが暮らしていた街――が表示された。
パソコンに表示されている絵は、天にも到達しそうな大規模構造物が立ち並び、夜にも関わらず白い光を放っている。その明るさは朝日のように眩しい。
ライラがかつて暮らしていた世界は、私が暮らす世界より相当進んでいるようだった。
「異界の叡智に惹かれない者は居ない……か」
パソコンを前にライラの言葉がフラッシュバックする。
彼の世界の事を殆ど知らない私ですら、彼の済んでいた世界に興味を持ち、知りたいと思うのだ。
「きっとソフィアは私達の前に現れるわね」
私は言い聞かせるようにいい、新たな一日をはじめる決意を新たにした。
そしてその2週間後。
異界の叡智に魅せられた者との再開し、私と彼の物語はさらなる展開を見せるのだが……
それはまた違う機会に話そうと思う。
これにて2章完結です。
閑話を挟んで3章に突入します。
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