016◆任務完了
「……ジーナ」
「ウィル様……またお会いできて良かったです……本当に……」
ジーナが涙を浮かべながら俺を見つめる。しばらくそうしてから彼女は涙を拭うと、険しい表情で今度はヒューゴに向き直った。
「ヒューゴ伯……今の話は本当ですか? 貴方がウィル様や他の皆さんを殺めたというのは……」
「……聞かれてしまいましたか。全て事実です」
「何故……何故そのような事を……!」
ジーナに問い詰められ、素直に事実を認めるヒューゴだったが、それ以上の追及については答える気が無いのか無言を貫いた。
「……ウィル様、いったい何があったのか詳しく教えて頂けませんか……?」
ヒューゴから聞き出すのが難しいと思ったのだろう。ジーナが俺に問いかけてきた。
「あぁ……全部話すよ」
俺はここに至るまでの経緯をジーナに話した。魔王討伐後に仲間を人質にとられたこと、その後自分は殺され仲間も殺されてしまったこと、魔王の手で蘇り仲間の復活のために動いていること……。
「……そんな」
俺から事の詳細を聞き、よほどショックだったのかジーナは固まってしまう。
「……ジーナ、俺は今からそこにいる男を殺す。……できれば部屋の外で待っていてくれ。君にそんなところを見せたくない」
「……わかり、ました……」
ジーナは俺の気持ちを汲んでくれたようで、おぼつかない足取りではあるが部屋の外へ向かう。俺はドライに目配せをして、ジーナの様子を見ていてもらうように頼む。
そんな彼女達を見送り書斎に残った俺は、壁を背にうなだれている老騎士に向き直った。
「そうか……魔王は生きていて、その魔王の手で貴殿は蘇り行動を共にしているのか」
「あぁ……お前達に殺されなければ、こんな事にはならなかっただろうがな」
「……そうだな。どうやら私は本当に取り返しのつかない失敗をしてしまったらしい。貴殿と魔王を組ませる事になるとはな……」
ヒューゴは完全に脱力してしまっている。もともと人質をとらなければ勝てない相手と思っていたのだろう。この状況で無駄な抵抗をする気は無いようだった。
今までの事を考えると、もっと痛めつけてやりたい気持ちもあるのだが――。
「人を待たせてる。手早く済まさせてもらうぞ」
ジーナに感謝するんだな。
そう思いながら、俺は一思いにヒューゴの首をはねた。
「すまない、待たせた」
書斎を後にした俺は、廊下にいるジーナとドライに声をかけた。
「ウィル様……」
ジーナはどことなく浮かない表情で俯いている。隣にいるドライも何やら困り顔をしている。
「ドライ様からも色々とお話を聞かせて頂きました。もちろんウィル様のお話も信じています。ですが……魔王の事を本当に信じても良いのでしょうか……?」
当然の疑問だった。彼女がいくら俺の事を信じてくれていたとしても、彼女は一国の王女である。今まで敵だと思っていた魔王の事を簡単に信じる事はできないだろう。
どう説明したものかと悩んでいると、ドライが小声で耳打ちしてきた。
「ウィル殿、今こそノエル様から託された作戦を実行する時でござる」
「えぇ……あれ本当にやるのか……? あまり気が進まないのだが……」
「大丈夫でござる! あの作戦を使えば姫の悩みや不安な心等ひとっとびでござるよ!」
ここまで言われてしまっては仕方ない。意を決して俺はジーナに歩み寄る。
「ウィル様……? ひゃうっ!?」
不安げに俺を見上げるジーナを、俺は優しく抱きしめた。
「うぃうぃうぃ、うぃ、ウィル様!? あ、ああっ、あのっ、あのの、こ、これはっ!?」
「ジーナの気持ちは分かる、でも信じてくれ」
何やら凄い勢いで混乱している彼女からいったん離れ、今度は両肩に手を置いて目を見つめて話す。
「ノエルが……魔王が本気でセシリア王国に侵攻しようとしてたら、わざわざ俺を蘇らせるなんて回りくどい手段はとらなかったと思う。それにあいつは皆を蘇らせると約束してくれた……俺はそれを信じたいんだ」
「……わかりました。ウィル様が信じていらっしゃるなら、私も信じる事にします!」
真っ赤な顔で慌てていたジーナだったが、俺の真剣さが伝わったのか今では迷いが晴れたような穏やかな表情をしている。
「ウィル様……また帰ってきて頂けますか?」
俺とドライの去り際、ジーナにそんな事を聞かれた。
「もちろん。俺は王様にならないといけないらしいからな」
「えっ! あ、あの……ウィル様、王様になるってそれって……」
よく分からないが、また顔が赤くなるジーナ。……この状況で俺達はあまり長居するべきではないだろう。最後にジーナに一声かけて去る事にした。
「……今度会う時は皆を連れて来れるよう頑張るよ! またな、ジーナ!」
「ジーナ姫、ヒューゴの死についての証言、先ほど話した通りよろしく頼んだでござるよ~!」
「うぃ、ウィル様! わ、私お待ちしてます!!」
窓から外へ飛び降りた俺に、ジーナが声をかける。俺は親指を立てる事でそれに返事をした。
そのままヒューゴ邸の敷地から出ようとしたところで、ナギと合流した。
どうやらドライが俺の気づかぬうちに撤退の合図を出していたらしい。
「上手くいったようですね」
「そっちも無事なようで何よりだ」
「えぇ、ウィルさんに教えて頂いたカレンさんの弱点、相当効いてましたよ。おかげでだいぶ楽をさせて頂けました。普段クールそうな人が驚く様というのは中々見物ですね」
意地の悪い笑みを浮かべるナギ、カレンは相変わらずナメクジが苦手だったらしい。
「俺とドライはノエルの元に戻るつもりだが、ナギはどうするんだ?」
「私もアングランまでご一緒しますよ。色々補給がてらトラップの点検もたまにやらないといけないので」
トラップの点検と聞いて、ドライが苦い顔をする。1つ壊してしまった事を思い出したのだろう。
「そういう訳で、いったん隠れ家に戻ったら王都から出ましょう」
「わかった」
その後は俺達は何事も無く王都から脱出し、アングランでナギと別れ、俺とドライはノエルの城まで帰還するのだった。
これにて1章は終りです!
2章の方も執筆してますので、引き続きお読み頂けると幸いです。
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あと1章完結記念に4コマ漫画描いてみました。
話一覧の一番上にページ作ってそこに載せたので
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