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三秒殺しの日常  作者: 縁碕 りんご
CASE1:KOKORO
22/104

誰ですかこの人

 「千華、出てくれる~?」

 「は~い」

 ガラガラと引き戸を開けると。


 そこには外人がいました。


 「ハーイ!」といきなり抱きしめられそうになったのでその手を全力で抑え込み、(そういえばハグの習慣があるのか…)


 『どちら様ですか?』

 反射的に英語で問いかけてしまう。でもその人は、欧米系とかの白人ではなくて、南米のあったかいところから来ました、みたいな。

 …これはお約束なのか定番なのか知らないが、やっぱりイケメン、そしてかなり温厚そうだ。

 「ホームステイですねっ」

 流暢な日本語で返された。

 「…清羅学園アカデミーの?」

 「イェス」

 「…なんでここ?貴方、間違えてませんか?」

 「ううん、絶対間違ってない。紙にしっかり書いてあるもの。ホストファミリーはSawahara-Householdって。なんなら大声で君の出席番号と座席の場所を読みあげても…」

 「わかったぜひあがってよ。荷物は玄関に置いて」

 前言撤回。


 いきなり強引な奴がきた。しかもテスト前日に!


 ***


 翌日。


 「………」

 ご愁傷さま、と言わんばかりに咲真が私の頭をがしがし掻きまわしてくる。あの赤メッシュ男、生徒会室に居たら絶対ぶっ殺してやる。何が哀しくて私の家に留学生を引き受けなくちゃならないんだ。恨みをこめて、本当に来るべき留学生におまけで着いてきたみたいな感じの温厚な外人を見上げる。

 「双子だったもの、しょうがない」なんて本人は平然と抜かしてやがるけどな!

 

 話は昨日のテスト前日に遡る。


 私が住んでいる市営住宅は、マンションみたいなところだ。周囲には老人が多く住んでいるけど、この人達は悪い人達じゃない。幸い、隣にヤクザが住んでました、なんて笑えないブラックジョークもなく、平和に暮らしてきた。

 「「わかったぜひあがってよ。荷物は玄関に置いて…家は汚いけど我慢して!」

 不可解さに苛立ち、またハイテンションになって、とりあえず彼を居間に通す。エプロン姿で出てきた兄さんも、これまた唖然とした様子で私をじっと見てくる。無理もない!

 「兄さん。ご飯三人分ね」

 「千華!さっき結婚はしないって…!」

 「んなわけあるか!」

 ぷるぷると可愛らしく肩を震わせお客さんの前で暴走しようとする兄さんの頭をはたく。本当はここにいるオトコを二人とも叩いてやりたいんだけど。

 「兄さん、私も初耳なんだけど、こちらは留学生の…」名前を知らないことに気付いた。

 「アラステア・エルシュタインです」と私の視線に気づいた彼が温厚に微笑んで私の言葉を引き取った。ひきとった、か…できればぜひ、おひきとり願いたいんだけど。でも話を訊かないことには追い返すわけにもいかない。

 「もしかして、黒錐の紹介で?」

 「一週間前に留学試験を受けて、転入を許可してもらった」と、日本語ぺらぺらで答えてくれる。そうか。


 私が平和だと感じていた一週間の間に、あの赤メッシュ男の企みは進んでいたわけだ。


 「でも…私は、留学生は黒錐の家に来る、としか訊いてないんだ」

 「片割れの方がそちらに行った」何だか文学小説か、国語の教科書の文章を読み上げているみたいな、変な日本語なことに今さら気がついた。

 

 …は?


 片割れ?

 「片割れって、どういうこと?」

 「twinsって英語で何と言うんだろう…?」逆に質問されても困る。双子に決まっているだろぉが!!


 「えっ、つまり…“双子”で一緒に日本に来て、その片割れは黒錐のところに行ったってこと…?」

 「そう!twinsって「フタゴ」って言うんだね、やっと思い出した!」

 私が指摘する前に思い出せ!!絶対明日赤メッシュ男に真実を拷問にかけてでも訊きださないと。

 「本当は一人しか許されなかった。僕らはずっと一緒だったから、だから無理を言って二人で来た。琴峰の兄を担当することにした」

 「琴峰の兄…?どういうこと…?」

 「ただでは日本でいさせてもらえない。日本に来る条件として、琴峰子規のボディーガードを引き受けたんだ…」

 「なら、そっちに住み込まないとといけないんじゃないの?」

 「一人足りなかった。黒錐の家は、たくさんの人が食客として出入りしている。金の力で消されそうになった人達を、黒錐は匿っているからね」

 う…随分なめらかに私が知ってはいけなさそうなことを教えてくれる。つまり彼はあの六本木ヒルズみたいな高級マンションの部屋数からあぶれたんだ。もともとボディーガードなんて名ばかりと言っていい。赤メッシュ…何だかお人よしすぎないか?

 

 「つまり…」

 今まで蚊帳の外に置かれていた兄さんが、ほんわかした笑顔で口をはさんだ。

 「新たな家族が、一人増えたってことだね♪」

 違うよ兄さん。


 新たな学校生活の火種が増えたんだよ!絶対私の学校生活、何かが間違ってる。私は草になりたかったのに、こんなやたら眩しく輝くイケメンが私に付き纏う…考えただけで先が思いやられる。私は、メス豚達の暗殺リスト第一位に名前が載ってしまうかもしれない。

 …ま、殺られはしないけど。


 


 「…そして現在に至る」

 咲真が無言でアラステアを見つめる。否。まずい!殺人オーラを放とうとしている!

 「はい咲真くん、ちゃんと人と仲良くできるようにしようね、さっきちゃんと自己紹介したでしょう?あんたが事情があって、会話ができないことはちゃんと話したし、いちいちその怪我について質問しないようにちゃんとアラステアに注意したじゃん。だから仲良くしようねそれができないならちょっと一発殴られろ」

 と言いながら、何とか二人(片方はただ困ったように笑っていただけだけど)の間に割って入る。

 

 もう電車に乗った段階で、私のドタバタ学園ライフは始まっているようです…


 今日はこいつら無視してテスト受けようかな…

 

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