第5話 異界の定義 ——神代重工内部文書(非公開)
≪神代重工株式会社 研究開発部 第四課 内部通達文書≫
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≪神代重工 研究開発部 第四課 — 内部通達 / 文書番号:RD-4-0089≫
| 項目 | 内容 |
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| 文書区分 | 社外秘・取扱注意 |
| 目的 | 研究員間の認識統一。「異界」という用語の定義を以下に確定し、以後の研究文書においてはこの定義に従うこと。 |
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以下、「異界」の定義を四つの軸から規定する。
≪定義本文 / 起草:神代朔也 / 参照:瀬戸宗一、羽鳥陽子(協力)≫
| 軸 | 定義 |
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| 第一軸:空間の重なり | 異界は「別の場所」ではなく、現世と同じ座標に「重なって存在する」空間である。物理的な距離を持たない。境界が薄れた場所では両者が干渉しあう。 |
| 第二軸:時間の偏差 | 現世と異界では時間の流れ方が異なる。異界内では時間が「滞留」する傾向がある。長期滞在者ほど現世への帰還が困難になるのは、この時間偏差による。 |
| 第三軸:意識の境界 | 異界への干渉は、物理的な移動を伴わない場合がある。意識の一部が異界に「流れ込む」状態——これを「境界体質」と呼ぶ。当該状態の進行段階をΔs値で管理する。 |
| 第四軸:神話的構造の残滓 | 異界には「神話的パターン」が圧縮保存されている形跡がある。これは異界が単なる物理現象ではなく、人類の集合的記憶が堆積した「バックアップ層」である可能性を示唆する。 |
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> 結論:異界とは場所ではなく、状態である。
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> 現世の「安定」は、異界との適切な境界関係によって保たれている。
> 境界が消えれば現世は「状態」を保てなくなる——世界は形を失う。
> 境界が固定されれば異界は「状態」を保てなくなる——バックアップ機能が失われる。
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> 鏡は、その境界の「状態」を可視化する装置である。
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> ★ 陽子による余白への書き込み(原本に鉛筆で)
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> 「バックアップ層」という言い方は正確ではない。
> 異界は、世界が「揺らぎながらも壊れない」ための余白だ。
> 余白がなければ、書き直せない。
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> 朔也さんは、余白を「整理すべき余分」と見なした。
> だから間違えた。




