表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

聖夜の茶番劇(西麻布のイタリアン編)

(舞台は西麻布の隠れ家イタリアン。照明は限界まで落とされ、テーブルには細いキャンドルが一本。「私」が、テーブルの下でスマホを高速連打している。)


「……ねえ、聞いて。今この瞬間、私の目の前で展開されてる『地獄のプレゼン大会』の進捗を。


お店は完璧。ナプキンは凶器みたいに硬いし、ワイングラスは消えてなくなりそうなほど薄い。

運ばれてきた『真鯛のカルパッチョ』はハーブの面積が広すぎて、もはや盆栽食べてる気分。


(スマホをテーブルの下で操作する)


【実況ログ】 

『見て、この完璧な一皿。でも、目の前の男が語ってる「Web3.0による地方創生」っていう起業の夢、ぶっちゃけこの冷めたパスタより中身ないんだけど。「すごいね〜」ってBotモードで返信してる私、マジでアカデミー主演女優賞もんでしょ?』


(顔を上げ、彼に向かって甘い声で)

『……えっ、本当に? 〇〇くんの視点、マジで解像度高すぎて尊敬する……。』


(再びスマホに目を落とし、猛烈な勢いで毒を吐く)


『追加注文、白トリュフのリゾット。香りは最高だけど、この男の語彙力は最低。さっきから「シナジー」と「コミット」しか言ってない。あんたの脳内、ビジネス用語の福袋かよ。 写真は撮れた。キャンドルの光を反射させて、彼のエルメスのカフスを映り込ませる。はい、勝ち。これで明日の承認欲求は確保したわ。』


(大きく溜息をつき、客席に向かって)


目的は達成した。この空気をデジタルデータに変換して世間に放流した。私の仕事は終わり。 あーもぉー、早く帰りたい。帰りたい帰りたい帰りたい!


この窮屈なスカート脱ぎ捨てて、ヨレヨレのスウェットに着替えたい。 高級ワインじゃなくて、コンビニのレモンサワー飲みながら、ネトフリで殺人事件のドキュメンタリーが見たい。 この自称・起業家の熱い夢語りより、死体の方がよっぽど雄弁で、私の心を癒してくれるわ。


(再び彼に向かって、最高の笑顔で) 『……えー、もっと聞かせて? 次のフェーズの資金調達の話。』


(客席を振り返り、冷徹な瞳で)


……ねえ、これが「幸せのど真ん中」の正体だよ。 美味しいはずの料理が砂の味しかしないのは、私たちの会話がただの「虚栄心の等価交換」だから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ